南沙織『夏の感情』〜みんな許せる、夏の出来事

 8月も終わりですね。まだまだ暑い夏空の日が続いているというのに、8月が終わって9月になるとつい、「夏も終わったのね〜」なんて感傷的な気持ちになってしまうのは、子供の頃に8月とともに夏休みが終わってしまうという落胆を何度も経験してきたトラウマ、
なのかしらね。。。
 さて、去りゆく夏を惜しみつつ、今回は昭和を代表するアイドル・南沙織さんのこの曲を取り上げてみます。
 「夏の感情」。1974年6月21日発売の12枚目のシングル。作詞:有馬三恵子、作編曲:筒美京平
 沖縄出身、南から来たアイドル・沙織さんは、1971年6月のデビュー曲「17才」こそ爽やかなポップスだったけれど、1972年6月発売の4th「純潔」、1973年5月の7th「傷つく世代」と、“夏はロック”とばかりに、夏になるとアップテンポでハードなロック歌謡をリリースしてきたのね。どれも名曲なのだけど、その極めつけがこの「夏の感情」だと思うのね。
 バックにキャラメル・ママをひかえ、よりエッジを効かせたタイトなサウンドに乗せて「♪ おひさま〜のましたでぃー!」と跳ねるように歌う沙織さんがとても印象的でした。俺、この曲がヒットした頃はまだ10才だったのだけど、この、70年代の筒美サウンド特有のグルーヴと、沙織さん独特の陰りあるキャラが醸し出すなんとも言えない“暑苦しさ”が、“楽しい”けれど結局は“おもいっきり退屈な”夏休みに、BGMとしてはぴったりだったような気がするのよね。この曲を聴くと今も、あの頃の夏の甘酸っぱい想い出が無意識に溢れ出てくるの。逆に言えば少年時代の夏休みの思い出には、沙織の歌謡ロックがもれなく付いてくる、そんな感じなのです。
 そして当時は気付かなかったのだけど、この歌詞が実は凄いのです。

 みな許してみたいの すぎた日々の出来事
 みな私のどこかを 通り抜けた人達
 制服着た胸で 愛した人いたけど
 皆小さな事なの 私いつも自由よ
 お陽様の真下で お陽様の真下で
 受け入れてもいい ア・ア・ア・ア
     「夏の感情」 詞:有馬三恵子

 援交願望・・・?みたいな(笑)。でも、それはあくまでも制服に包まれた小さな胸の中での出来事。というわけね。そして最後は「♪ 夏の出来事 みんな許せる」のリフレインでフェイドアウト。この最後のフレーズが、去りゆく夏をすべて美しい思い出に染め上げてくれるような気がするのよね。そんな素晴らしい余韻を残して曲は終わる。
 ちなみにこの曲の最高位は16位。なんと、ベストテンをかすりもしなかったのね。。。売上は11万枚。この時期には沙織さんのアイドル人気もすでに「夏の終わり」を迎えていたようね。