『POP CLASSICO』松任谷由実
ユーミンの約2年半ぶりの新作。
やっぱりユーミンは、タダモノではありません。
曲目の詳細については、こちらでご本人が思い入れたっぷりに詳しく語っていまして、もう私が何を付け加えるまでもないでしょう。
でも私、最初にこのアルバムを聴いたときに真っ先に感じたのは、何とも言いようのない「違和感」だったのよね。(その違和感も、繰り返し聴くうちにすっかり消えてしまったわけだけど。。。)
いったい、どこに違和感を覚えたのか。それが、実はこのアルバムを語るうえで重要なファクターなのではないか、今はそう思っているのだ。
私はDVD付の初回盤を購入したのだけど、そのDVDのタイトルは“「ひこうき雲(RE-MIX)/荒井由実×松任谷由実」オリジナル・ミュージックビデオ”。(以下、ネタバレご容赦ください。)その内容は?と言えば、デビュー当時の録音に合わせて、今のユーミン(松任谷由実)が、当時の衣装のままに(カツラまで被って)「ひこうき雲」のミュージック・ビデオを再現する、という内容なのね。
これがね。。。なんとも。。。
まるで、清水ミチコがユーミンのモノマネしてるみたいに見えるのよ(苦笑)!ユーミン、いったいどうしちゃったのよ!と言いたくなるような。。
そのあたりで、最初に俺が感じた「違和感」の正体が、はっきりするのだ。
オープニング曲である「Babies are popstars」。このテクノにも聴こえるある種軽薄な曲調、この曲がアルバムの鍵(キイ)。オールドファンは、まずオープニングを飾るこの曲の“軽さ”にドギモを抜かれてしまう。前作『Road Show』のオープニング曲は哀愁ギターが切ないアダルトなミディアム「ひとつの恋が終わるとき」、前々作『そしてもう一度夢みるだろう』のオープニングが名曲「ベルベット・イースター」を彷彿とさせるブリティッシュ・テイスト溢れるポップス「ピカデリー・サーカス」で、それぞれ従来のファンが泣いて喜ぶ類の“鉄板ユーミン・ソング”だったことを踏まえれば、今回のオープニング曲の軽薄な印象に、思わず“ユーミン、アニバーサリーの勢いを受けて現代のマーケットに媚を売って起死回生を狙ってるのね”、そんな思いを感じざるを得ないのだ。
でもね。そんな考えは、このアルバムを2度3度聴くうちにあっけなく吹き飛んでしまう。
ここからが本題なの。
1曲目で一聴すると軽薄な印象を与えつつ、続く2曲目以降、一転してオールドファンをして感涙を呼び起こすこと必至の、メロディアスかつ抒情的ナンバーがひしめいていることに気づくのだ。
ここ数作を比較しても、おそらくポップスとして極上のクオリティ、おそらく最高傑作かも。
そして翻って1曲目に戻って詞を噛みしめてみると、それはユーミン言うところの
〜前略〜 一見、軽く聞こえるけれど、ヘヴィーなアルバムだっていうことを踏まえて聴いてもらうと、もっと色んなものが見えてくると思います。“メサイヤ(救世主)”を待ってるような……。
という、何かとても重層的意味を含む内容に聴こえてきて、この1曲目こそが、このアルバムの「要」なのかもしれない、なんて思えてくるのです。
私が考えるに、40周年をいとも軽々と超えたユーミンは、タイトル通りきらびやかな“POPさ”で新しい層にアピールしつつ、オールドファンにはその揺るぎない“信仰心”(笑)をバックに、サプライズで突き放しつつも実は、曲順が進むにつれてしっかりと原点回帰した重厚な作品を用意して、その期待に十分に応えようとしているのだと思うのね。
そのあたり、まさに『POP CLASSICO』。
そんな意味で、オールドファンには一見パロディにしか見えない初回盤DVDも、新しいファンには「今のユーミンと40年前のユーミンをつなぐイメージ」として、もしかすると新鮮に映るのかしら?なんて思えたりして。。。
POP CLASSICO(初回生産限定盤)(DVD付)(特典なし)
- アーティスト: 松任谷由実
- 出版社/メーカー: EMI Records Japan
- 発売日: 2013/11/20
- メディア: CD
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