『_genic』namie amuro

_genic (CD+Blu-ray Disc)

_genic (CD+Blu-ray Disc)

♪ヨカッた ヨカッた ヨカッた(”You got the”のリフレインがそう聴こえる〜by「Golden Touch」)
ということで (笑)アムロちゃんの新譜『_genic』を何度か聴き返すうちに(やっとこなれてきた)そう思ったのだ。
 ヨカッた、というのは、このアルバムの内容も勿論だけど、やっぱり今回も完成度が高いアルバムを彼女が作ってくれていて「ホッとした」ということなのね。というのは、最初このアルバムを聴いたときの「アレ?」とどこか拍子抜けの印象が強かったから…。
 ところどころサウンドにトガッた部分は感じるものの、全体に既視感が強く漂っていて、これは今までのアムロちゃんの新譜にはあまり無かったこと。“クラシカルなダンスビートやR&Bグルーヴなど80’s−90’sリバイバル”というキャッチコピーはわかるものの、それも何処か、言い訳のように聞こえてしまってね。
 あら、アムロちゃん、現状維持どころかこれはいよいよ後退かも知れない…。
そんな風に思えた。最初は!
 でも諦めずに何度か繰り返し聴いて(苦笑)、多分6回目くらいのリピートだったと思う。いつものように通勤電車の中のヘッドフォンステレオでプレイしたときに突然、耳栓がポンッと外れたみたいに、すべての曲が物凄く新鮮に聴こえてきて「うわっカッコいい!」と思わず小躍り(笑)。
 そう、今回のアルバムはなかなか手強いシロモノ。
 最初はこれまでの“安室奈美恵の軌跡をなぞった”アルバムのように思わせながら、曲の並びから1曲ごとの一瞬一瞬のサウンドメイクに至るまで、ことごとく計算されて作り込まれた、これまでになく完成度の高いアルバムなのだと思う。だから、インパクト重視の聴き方ではなかなか良さが解らないのかも。
 それにもはや、早口で流ちょうな英語の発音もほぼ完成していて、無理やりに日本語に訳して歌う必要もなくなっているように思える。それで分かったのは、もしかするとこれまでの安室奈美恵自身はずっと、完璧に洋楽に肩を並べる作品を作りたかっただけなのかも知れない、ということ。これまでの彼女の魅力のひとつであった、R&B曲の日本語訳詞を無理やり早口で歌うことで生まれる独特のグルーブは、あくまでも発展途上で偶然生まれたラッキーな副産物に過ぎなかったのかも、とね。
 スタッフのクレジットを見ると、とにかくアチラの方の名前がずら〜と並んでいて目が眩みます(字がちっちゃくって、老眼が始まったワタクシメには辛いのです。笑)。メンツもスゴイらしくて(洋楽にはめっきり弱くなっているワタクシメ、よく判りませんが。涙)、もはや邦楽・洋楽という垣根はとっくに無くなってます、安室ちゃんに関しては。おまけに1曲ごとにプロデューサーが変わっていたり、Avexがクレジットされている曲も半数ぐらいで(PVがついているのはすべてAvexがらみの曲なのね)、大勢の精鋭スタッフが集結して彼女の作品を作り上げていることがわかるのね。今のミュージックシーンで、それだけでもスゴイこと。
 PVでも色々なシカケがあってワイドショーでも話題になっていたけど(俺は「Birthday」で安室ちゃんがほとんど歌わずに踊っているだけ、というのがすごく新鮮に見えた)、サウンド面でも聴けば聴くほどに、ハッとするようなフレーズがあちこちに発見できて、ハマるのよね。例えばオープニングナンバー「Photogenic」の冒頭のキレキレのギター・カッティングとか、途中、ブンブンブンブンと下降していくシンセベースとか。「Birthday」のイントロのドラムもカッコイイし、アムロちゃんの珍しくエキセントリックなラップ、途中でインサートされるブレイクなんかも好き。全体的にはEDMをベースとしたダンスミュージックが並んでいる中、終始煌びやかなブラス音がはじける「Golden Touch」、レトロなキャバレー風の「It」、初音ミクとのコラボ曲「B Who I Want 2 B」の歪んだコンピュータ・サウンドや、アメリカン・フォーク「Anything」といった曲が異彩を放っていて、飽きさせない曲並びになっているのもポイント。俺としてはオーソドックスなダンス・チューン「Fashionista」のコーラス「ピ・ピ・ピ」あたりに一番ゾクゾクしたかな(笑)。
 日本語訳歌詞カードがついて、体裁的にはいよいよ「洋楽アルバム」と肩を並べるようになった本アルバム、オジサンとしては青年期に世界の最先端の音を知るために繰り返し聴いてハマった“勉強アルバム”と同じような印象で、やっぱり完全に洋楽ですわ。