優等生ホームドラマ〜「ハッピーエンドが書けるまで」


 ここのところ忙しくて休日出勤も続いていたから、先週、お休みを頂いて、久しぶりに映画を観てきたのだ。
 俺も人生半ばを通過して感じるのは、いざ映画を観よう!と決めたとして、実際に何を観るのか、セレクトにとても時間がかかるようになってきたのよね。おそらく映画鑑賞の醍醐味は(これは個人的な意見かもしれないけれど)、それを観ることでひと時の異体験や追体験を味わえることにあるわけで、それなりに人生経験を重ねて老い先短く(笑)なったいま、「貴重な時間を使ってまでその映画を観る以上、俺はいま映画を通じてどんな疑似体験をしたいのか」という自問自答に悩むわけね。まあ、好きな監督の新作であったり、評価が飛び抜けて高い作品は内容がどうあれ観にいったりもするし、例えば気分が沈んでいるときは明るく温かい作品、疲れが溜まっていればスカッとしそうなアクティブな映画、といったチョイスは当たり前にしているわけだけど、それでも観るものを選ぶのには年々、時間がかかるようになってきた。
 貴重な人生の時間とお金を費やすからには、それに価する体験が出来るものを選択したい。年齢を重ねるにつれ、それなりにひと通りの人生経験も積んで来たし、ましてや沢山の素晴らしい映画・ダメな映画にも出会って、観る映画を選ぶのもいつの間に厳しいものに変わってきた、そういうことことね。
 前置きが長くなりました…。
 つまりはこの作品、そんな厳しいチェックを潜り抜けて(笑)今回、白羽の矢が立ったわけ。この何ともジミな作品をチョイスしたのは、レビューの評価がとにかく高かったのと、何だか「テーマ」や「コンセプト」とかいったものが表面に出て来ない、おとなし目な作品を観てみたい気分だったから…。やっぱり疲れていたのかもね(笑)。
 主人公はティーンの女の子。彼女、作家の父の影響もあって才気煥発、シニカルさを気取って「セックスに愛は要らない」等と呟きながら色んな意味で(汗)カレッジ生活を謳歌しながらも、一方で若者らしいピュアで揺れ動く心を持て余していたりする。そのアンバランスさがとても巧く表現されていて、五十路オジでさえ思わず「あのころ」を思い出して胸キュン…。それを演じるリリー・コリンズがとても魅力的で、この映画は彼女があって成り立っている感じさえする。コリンズ、というファミリーネームでピンときた妙齢のレディス&ジェントルマンのみなさま、そう、正解です!彼女、80年代を中心にに活躍したミュージシャン、キューピー・・・もとい(笑)、フィル・コリンズさんの娘さんなのね。そう言えば目元にキューピーさんの面影が…。
 ちなみにこちらがお父さん。→ → → →フィル・コリンズ 3(ノー・ジャケット・リクワイアド)
 この作品、ティーンの女の子が主人公の映画という事で正直、見始めはよくある学園恋愛もの?に思えてしまって(観客席もお嬢ちゃんばかりだったしね…)これは失敗だったかしら?とちょっと後悔…しそうになり始めたあたりで一転、リリーちゃんと弟役のナット・ウルフにそれぞれ同時にお互い正反対のタイプの恋人が現れた辺りから俄然、話が面白くなって来るのね。そこからは作家の父親と別れた母親とのオトナの事情が少しずつ明らかになっていく過程を通じて、幾つかの伏線が一本にまとまっていく巧妙なストーリー構成で、知らぬ間に引き込まれてしまった。ホント、喜怒哀楽がバランスよく配置された、久々の優良ホームドラマを観た満足感ね。
 俺としての収穫はリリーの相手役ローガン・ラーマン。彼がかなり良くてね。決して美男子ではないのだけど、性格の良さとウォームハートの持ち主であることがそのルックスから滲み出ていて、決してタイプではないのだけど(笑)、ファンになりそうですわ。。
 ということで、小品ながら、観てヨカッタと久しぶりに思える作品でしたわ。1500円の価値は、あったかも。