映画は変わった。『アリス・イン・ワンダーランド〜時間の旅〜』


 お久し振りです。
 アリスといえば、思い起こされるのは聖子さん「時間の国のアリス」だけど、リリースは、なんと32年前!!きゃあ!そんな昔なのね。そうそう、聖子さんがYOSHIKIと組んだ新曲、まだフルバージョンは未聴だけれど、なかなか良さそうな感じよね。メロディーがとても耳に残る作品。発売は未定のようだけど、いまから楽しみですわ。
 
 さて“映画の”アリスは6年ぶり。今回は、聖子さんではなく、こちらが本題でした(汗)。
 前作も大好きだったけど、今回も楽しませてもらいましたわ。前作のレビューでも書いたとおり、やっぱりワタシはこういう夢の世界(ただしそれは「悪夢」!のほう (笑))にどっぷり浸かれる作品が大好きで、その意味ではティム・バートン作品の、怖くて気持ち悪くて、そしてどこか可笑しい作風にいつもノックアウトされちゃうのよね。今回も突然動き出すチェスのコマたちはブキミカワイかったし、ヘレナ・ボナム=カーター演じる赤の女王は終始グロテスク全開だったし、ベジタブルだまし絵の家来たちのフォルムなんかも素晴らしかった。

 でもこの続編、ティム・バートンが監督からプロデュース側に回っている分、いくぶんか彼のテイストは薄められてしまっているのよね(監督はジェームス・ボビン)。「ナイトメア」系から少しだけ「ファンタジー」寄りという感じね。決して悪くはないのだけれど、例えば前作ではそれぞれ善悪など気にせず動き回ってアリスの冒険をかき回すキャラ達が魅力だったのだけど、今回は完全に皆がアリスの味方か敵か、という勧善懲悪の構図が根底にあって、キャラとかストーリーとか、色々な意味で単純化し過ぎたのかもね。そこが残念。
 ジョニデのマッドハッターは本来、名前の通りハチャメチャなキャラのはずなのに、ナイーブで心優しい部分が強調されて、どこかチョコ工場のチャーリーとカブるし。あのアン・ハサウェイ演じる白の女王も、すっとぼけたフシギお嬢様キャラが光っていた前作に比べると、今回は単なるアリスのお友達の設定で、魅力半減。。。もったいないわ。
 とはいえ、本作のキイパーソン“タイム”という魅力的な新キャラ登場もあり、前作から比べても格段に進歩したCGのお蔭で(おまけにすっかり定着した3Dのお蔭もありで)画面の隅々まで目を凝らしつつ、この世のものではない夢の世界を存分に楽しんだワタシ。イヤなことはすべて忘れて、カタルシス〜〜でしたわ。
 見終えて思ったのよね、映画は変わったな〜と。
 明らかにCGの発達と関係はしているのだろうけど、映像ありき、話題性ありき、そして子供にもわかる、子供に悪影響を与える要素を極力抑えた、シンプルなストーリー、そんな映画が増えたな〜、と。予告編がディズニー系列の作品ばかりだったので尚更そう思えたのかもしれないけどね。
 まるで戦前・戦中にMGMがゴージャスにお金をかけまくって送り出した、(でもストーリーは至ってシンプル・・陳腐な・・・)数知れないミュージカル映画のようで。娯楽として人々の心を昂揚させるけれど、後には何も残らないような、ね。もともと映画は作られては消費されるものには違いないけれど、それが少しずつ加速しているのかもな、なんて。
 時代がかつての戦前・戦中の雰囲気に近づいているからそうなっているのか、単に映画ビジネスを成立させるための必然の方向でしかないのか、そこはよくわからないのだけれど。
 でも結局のところ、映画が変わったように思えるのは、単に年齢を重ねて自分自身の感性が変わっただけなのかもしれないけどね(苦笑)。

「アリス・イン・ワンダーランド〜時間の旅〜」公式HP