タンゴ・ソングス〜饒舌で芳醇なタンゴ(単語)の世界

後期キャンディーズのアルバム曲に、こんな斬新な曲があります。
まずは聴いてみて下さい。

1978年5月に発売されたキャンディーズのラストアルバム『ファイナル・カーニバル・プラスワン』キャンディーズファイナルカーニバルプラスワンに収録された「インスピレーションゲーム」という曲です。作詞は阿木燿子さん、作曲は穂口雄右さんで、そう、これは「微笑がえし」コンビ。この曲の歌詞がとにかく型破りで、タイトル通りインスピレーションで「ブラック・コーヒー」→「日曜日」→「スポーツ中継」ときて、たぶんそのオトコはぼんやりアメラグのスポーツ中継を見ていて、LAあたりのチームの試合だったのでしょう、イメージは太陽さんさんの砂浜に飛んで、とうとうビキニ姿の金髪娘に行き当たる、という(苦笑)なんとも不思議な歌詞なのです(歌詞はこちら。)。当時は百恵さんを素材に、思う存分に飛ばしていた阿木さん、解散するキャンディーズにもここぞとばかりにスゴイ歌詞をぶつけています。持前のユーモアセンスでそんなブッ飛んだ歌詞をシラッと歌いこなしているキャンディーズも、本当にステキです。
 
そんなわけで今回は、ある意味説明的な歌詞よりもはるかに豊かな世界観を作り上げてしまうような、タンゴ、ならぬ「単語」の羅列で出来上がった曲、その奥深い世界を味わっていただこうという企画です。
 
続いては、この曲。昭和の名曲であり、大歌手、五木さんを一躍スターダムに押し上げた代表曲「よこはま・たそがれ」です。

作詞・山口洋子、作曲・平尾昌晃。歌詞はこちら。この曲の舞台はかつて港の見える丘公園のふもとにあったクラシックホテル“バンドホテル”だったとかいうエピソードも、言葉がそぎ落とされたこの歌詞だからこそ、得も言われぬノスタルジックなイメージを広げてくれる気がしますよね。
 
さて、続いては洋楽です。私の大好きな曲。Billy Joelの「We Didn't Start The Fire」です。これは50年代からこの曲がリリースされた80年代後半までのアメリカの出来事、トピックや時代を代表する人物名をただ羅列した歌詞ながら、途中で差し込まれる「火をつけたのは私たちじゃない」という印象的なフレーズですべてを物語ってしまうという、物凄いパワーのある曲でした。PVも、牧歌的な50年代の家庭の風景から始まり、60年代、70年代と、どんどん映像もスピードアップして、最後には感情の動きが何も感じられないさめざめとした印象(近未来?)で終わる秀逸な内容だと思います。歌詞(訳詞)はこちら

 
単語で出来上がった曲のルーツをたどれば、結局はここに辿り着くのでしょうね。説明するまでもない、スタンダード・ナンバーですね。「My Favorite Things」。不朽の名作「Sound Of Music」より。歌うはジュリー・アンドリュースさん。

歌詞はこちらです。
 
↑の曲を翻訳したような曲を、あの佐良アニキも歌っているんですね。1967年発売のセカンド・シングル「私の好きなもの」です。とはいえ「Sound Of〜」とは別物です。作曲はいずみたくさんで、詞はなんと、永六輔さんです。歌詞はこちら

「三味線の爪弾き」って。永さんらしいといえば、らしいですけどね。
 
饒舌で芳醇な単語(タンゴ)の世界、楽しんで頂けましたか?では、また。