太田裕美コンサート2017(京都編)


 先週4月26日に東京フォーラムで開催されたユーミンのコンサートは、いわば最先端の技術とクリエイターたちのアイデアが結集した、エンターテインメントの最高峰だった。
 その素敵な余韻に浸りながらも、帰路でワタシが思いを馳せていたのは、同じ週の週末に京都で開かれる、太田さんのコンサートのことだったのよね。選曲と、歌声と、ほのぼのとしたトークだけで聴かせる、まごころこもった、コンサートのこと。
 デビュー以来一貫して続けてきたそんな太田さんのまごころ溢れるステージが、最高のエンタテインメントであったユーミンのステージを観たすぐそのあとに、強烈に懐かしくなって。特に今回は何より、かつて若いひとときをそこで過ごし、ワタシの一部を確実に作ってくれた大切な場所である京都への旅行のメインイベントに、そんな太田さんのコンサートを持ってこられた悦びに、胸躍らさずにはおれなかった俺なのです。
 旧譜復刻の名企画・CD選書シリーズ太田裕美/短編集12ページの詩集ELEGANCEで高校時代以来の太田さんに再会して、アルバムを聴き漁ったのが、当時勤めていた京都の会社の独身寮で。テレビから流れるJRのCMで太田さんの懐かしい声(「メタモルフォーゼください」)に再会したのも京都だった。俺にとっての京都は、太田さんとの思い出とも深くリンクしている場所でもあって。
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 そして週末。京都には前日金曜の夜遅くに入って、コンサート当日、9時半にホテルを出発、17時半スタートの太田さんのコンサート前に、久々の京都ぶらり旅を決め込んだ俺。
 京都駅前はもちろん、どこを歩いてももはや“観光都市”として完璧に整えられた京都は、私が暮らしていた25年前とはずいぶんと様変わりしていたけれど、新緑の季節の京都は(途中は俺の京都旅には恒例の“にわか暴風雨”も あったけど・・・)本当にどこもキラキラと輝いていて、やはり素敵な場所でした。


朝からのぶらぶら歩きでさすがに足が棒のようになったので、開演1時間前には東山に到着。しばし会場近くの喫茶店(マスターの話では、なんと、かつてジョン・レノン&オノヨーコが訪れたことがあるそうな)で時間を潰したあと、まずは目と鼻の先の平安神宮に参拝してから、会場へ。ここでも会場前にはいかにも裕美ファンらしい、スクエアな感じの壮年男性で既に長蛇の列。そこに全く違和感なく溶け込む中年ゲイの私。ふふふ。
 初めてのロームシアター京都は、いかにも京都らしい品格を感じるシックな作りで、同じく素敵なシアターである渋谷のさくらホールといい、会場選びにも太田さんならではセンスが感じられて、何だか嬉しくなる。

そして、17時半ほぼきっかりに開演。春らしい花柄のドレスで登場した太田さんは、髪をややショートにカットされて、とても爽やかな印象で、その輝くオーラに圧倒される。
 オープニングは、オルゴールBGMのイントロから続いての「上弦の月」。
♪悲しいことも 嬉しいことも すべて包んで 満月に
 歌詞がズンズン響いてきて、1曲めから既に涙で太田さんのお顔が滲んでしまってよく見えない俺。(いけない、いけない。)
 今回も歌声はもちろん、トークも冴え渡っていた太田さん。素晴らしいセットリストと、曲間の温かく楽しいトークは、以下の通り。(記憶頼りなので、曲順違いや抜け、トークも思いっきりhiroc-fontanaの意訳でございますので、これは違う!があったら何卒お許しくださいませ。)

(ギターを手に)
1.First Quarter〜上弦の月(20周年記念『太田裕美の軌跡』ボーナストラック・1999年)
2.四季絵巻(10thSG「恋人たちの100の偽り」B面・1977年)
〜京都でのコンサートはもう4年目。初回の春コンではこんなに続けて呼んで頂けると思っていなかったので、気合いを入れて春らしい選曲を沢山入れてしまいました。まだ歌っていなかった春の曲はあるかな、と探して、今回はこの曲を選びました。
3.花吹雪(7th『背中あわせのランデブー』・1978年)
4.ONE MORE CHANCE(同上)
〜いま歌った2曲、女の人にとっては本当に切ない歌詞ですね。ところで先週放送された名盤ドキュメント、見て頂けましたか?(会場、盛大な拍手。)あら、全員?(笑)平日のBS放送だったのでいったい誰が見るの?と思ったのに(笑)予想以上の反響で、ツイッターでもたくさんの反応があって、ア●ゾンのJpopチャートで5位になったという連絡を頂いたりしました。そのアルバムからの曲を歌います。
(ピアノ弾き語り)
5.袋小路(3rd『心が風邪をひいた日』・1975年)
6.わかれ道(同上)
 ※ウィスパーヴォイスが最高。
7.青春のしおり(同上)
8.金平糖(SG(みんなのうた)2011年)
 ※ワンコーラス目をアカペラで。胸に響く熱唱。
9.雨だれ(1stSG 1975年)
10.青空の翳り(14thSG 1979年)
〜名盤ドキュメント放送と同時期に、私のアルバムの音楽配信が始まって、専用サイトも出来たんです。でも、一番新しいアルバム『tutumikko』だけがリストから外れてしまって、なんで?って。そこから1曲歌います。
(ハンドマイク)
11.人魚(『tutumikko』2014年)
12.失恋魔術師(11thSG 1978年)
 ※アルバムバージョンアレンジ。振り付けがコナレてきた。艶めかしい!
13.南風〜SOUTH WIND(17thSG 1980年)
 ※Let’s Shine!で会場も降り付け一体化。
14.木綿のハンカチーフ(4thSG 1975年)
〜もう終わりと思った?まだだよ〜。(笑)北朝鮮がミサイル発射したとか、物騒なこと、イヤなことも多い世の中。武器なんて作ったら使いたくなっちゃいますよね?やっぱり。男の人は特に。そんなことはいい加減やめにして、いつもお互いに思いやりを持って、笑顔で楽しく声をかけ合いながら平和に生きていけたらいいですよね、なんて当たり前のことを最近本当に思うんです。そんな人だった、大瀧詠一さんの曲を歌います。
15.恋のハーフムーン(20thSG 1980年)
16.ひぐらし(3rd『心が風邪をひいた日』・1975年)
 ※途中、歌詞に合わせて「京都〜!」と叫ぶ太田さん。最後は椅子から立ち上がってピアノを連打!
(アンコール)※白いワンピースで登場。観客はスタンディングで手拍子。
17.さらばシベリア鉄道(19thSG 1980年)
18.葉桜のハイウェイ(『I Do,You Do』1983年)
 ※アレンジはアナザー・バージョン。
(EG&B&Per:岩井眞一、AG:西海孝、Pf&Key:大古富士子)

 「ONE MORE CHANCE」!「わかれ道」!アドリブで歌い出しのメロディとリズムをわざと少し崩して聴かせてくれた「金平糖」・・・。とにかく、すばらしかった!太田さん、歌が年々うまくなって、おまけに舞台上での振り付けもどんどん進化して、シンプルなステージなのに、それを感じさせないほど、回を追うごとに内容が膨らんで充実してきているのがスゴイ。もうオン歳●●なのに、この人は、どんどんパワーを増している感じ。まさに、妖怪ダ〜(って太田さんが自ら言いそう・・・苦笑)。
 俺は勝手に、今回のコンサートのテーマはオープニング曲「上弦の月」の世界だったのかもな、なんて思っているのね。舞台上でも語っていらっしゃったけれど、歳を重ねて初めて分かること、言えることも本当に多くて(「名盤ドキュメント」でもご本人が初めて知るエピソードが満載だったように)、今がとても幸せだと言いきれることは本当に素晴らしいことなのだ、と。そんな太田さんの内面の充実ぶりが、発売から40年を経た今年になって3rdアルバムが番組で特集されたり、ハイレゾSACDで旧譜が次々と復刻されたり、そしてコンサートを開けばチケットがすぐに完売したりと、素敵な「今日」を呼び込んでいるのだろうな、なんてね。
 悲しいことも。嬉しいことも。色々な経験をみんな心の栄養にして、満月のように丸く心を研ぎ澄ませた太田さんと、同じ時間と空間を共有できて、ワタシも本当にシアワセでした。
 俺にとってこのツアー、毎年の定番になりそう(笑)。