小泉今日子「見逃してくれよ!」

 今回は、と〜っても、バブリーな1曲。
「とかく人生やったもん勝ちよ!気持ちいいことやったもん勝ちよ!」と終始ノー天気にはじけるキョンキョン。そう、バブル時代の女性たちはそんな風にやたらとパワフルでした。向かうところ敵なし!みたいな。
 アノ頃、ワンレン・ボディコンで肩で風を切って町を闊歩していた女性たちは、どこへ行ったのかしら。
 まさか、フツーの主婦に収まった挙句、ダンナの稼ぎじゃ生活もできなくて、スーパーでレジ打って、その腹いせにモンスターペアレントに変貌して学校のセンセをいじめてる、隣のオバサンがまさか、あのワンレン・ボディコン女たちの成れの果てだなんて・・・そんなことないわよね・・・・。
 バブル華やかなりしアノ頃、俺はあるオフィスで働いていたのね。今よりは遥かにのんびりとした時代だったけれど、それでも男性社員たちはやっぱりそれなりに出世欲にギラギラしていたような気がする。その一方で、俺の周りにいた女性社員たちといえば、雇用機会均等法が導入されて間もなかったあのころはまだ、何ともオキラクに会社生活を謳歌していたものだ。コネで上場企業に就職して、親元で「上げ膳据え膳」の暮らしをしながら給料のほとんどを自分の小遣いに回して、アフターファイブや週末はディスコだ海外旅行だと、遊び回る女たち・・・。ちなみに、この歌の冒頭で出てくる「会議室でお弁当食べても〜」というのは、OLがお昼どき、仲良しグループで職場の会議室を占拠して、弁当食べたりタバコをプカプカふかしたりしながら、上司やお局の悪口なんかをだべり合う時間のことを言っているのね。お昼前になると、各グループ間でまるで陣取り合戦の様相になる。お昼にお客さんが来て間違えてドアを開けちゃったりすると、ここは本当にオフィス?と目を疑うような光景が広がっていたりもするわけで。(うわ、何だかイロイロ思い出してきちゃったわ。)
 そんなOLたちのワガママが、そのまま歌になったような「見逃してくれよ!」はバブル真っ只中の1990年3月発売。カップスープのCMソングとして、見事チャート1位にもなりました。作曲はイカ天バンド(うわ!これもバブルっぽい)、フライングキッズのメンバーだった加藤英彦。語り歌のような、コミックソングのような、それでいて鼻歌でも歌いたくなるような軽快なメロディーがしっかり耳に残る、なんとも不思議な歌であります。
 カラオケ続けて5曲歌っても・パパが寝てからラブコールしても・一生のお願い100回しても・朝まであんなにスゴイことしても・・・「いいじゃん!」て。ブレーキ利かないワタシをゆるして・・・「見逃してくれよ!」て。何ともフザケた、勝手極まりない歌なのに、かわいいキョンキョンにあっけらかんと歌われると、何となく許す気になっちゃう。
 それが、イケナイ。実はこれは、ホント〜に罪深いウタなのかもしれないのだ。
 たしかにね、コンパで一気ができなかろうが、グループ交際を抜け駆けしようが、警察に捕まるような犯罪じゃなし、それを「見逃してくれよ!」というだけなら、目くじら立てる必要はないのかもしれない。
 でもね。バブルのあの頃から、大人たちはお金儲け以外のことにはみんな何となく無頓着になってしまって、若い子の多少の身勝手さや非常識な態度にも「大したことじゃないし(このコ、カワイイし)、ま、いっか。」みたいな、彼ら(オトコ・オンナ問わず)への「甘やかし」が蔓延していったように思うのよね。その結果、あれから20年近く経った今、利己主義、非常識、無責任が横行するいやーな世の中になってしまったのかもなあ、なんて思うのね。
 そんな、当時のイケイケドンドンの風潮を煽ってるみたいだものね、このウタ。だから、罪深いな〜って。まあ、考えすぎだろうけど。。。

 ガマンをするのはソンだわ
 アタマばっかしでっかくなるわよ
 勝手気ままにやってやろうじゃんか
 おいしいことやってやろうじゃんか
 ハメをはずしてやってやろうじゃんか
 なるようになるわ (詞:活発委員会)

 バブルのあの頃だったら、本当に「なるようになる。」と思えたのだろうけど、今の世の中じゃ、こんなこと言ったらただの「やけっぱち」にしか思えないもんね。時代は変わったわ。。。アーメン。