『Nice Middle』小泉今日子

Nice Middle(初回限定盤)(DVD付)

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 なんだかジミ〜に発売された感じのキョンキョンのニュー・アルバム。5年ぶりだそうです。
 すっかり女優としての活動が定着している彼女だけれども、将来は作家活動をメインにしたい、なんていう話もあるようで、これから音楽(ウタ)は、趣味の範囲で楽しんでいきたい、という心境なのかな?
 でもこんな感じで肩の力を抜いて好きな音楽に取り組んだ結果、たま〜にでも内容的にイイ物を届けてくれるのであればファンとしてはそれでもいいのかも、なんて思ってしまう。キョンちゃんには大アマな俺です。
 前作『厚木I.C』はネオアコ、オーガニック系のどちらかというと大人しい作品集だったけれど、今回の『Nice Middle』はハウス、オルタナ系ロック、レゲエ調、フォーク、ブギウギ、そして王道ポップスと盛りだくさんで、まさしく80年代後半から90年代前半にかけてのアイドル全盛時代のキョン2アルバムの現代版のようなつくりになっている。(テイストとしては90年発表のアルバム『N。17』にイチバン近いかな?と思っていたら、藤原ヒロシとかASAーCHANGとか、アララ組んでるヒトたちが本作とほとんど一緒だったのね!)そして今回のキョンキョン、ナニゲに歌唱力がアップしていて、少しハスキーでウィスパー気味の彼女のスベスベした歌声が好きな俺としては、歌唱力に安定感が加わったことで、聴いていて心地良さが一層増した感じ。それにしても40歳を越えて、その声のなんとキュートで若々しいこと!
 80年代アイドルとしては、セイコ・明菜に続く第三の地位にいた彼女。90年代前半まではヒット歌手としてむしろ「二人の女王」を凌駕する勢いをキープしていたような気もするのだけど、ここ最近は女優としての名声が高まれば高まるほどに、歌手としての彼女の存在感がそれによって駆逐されていってしまう感じがするのが、歌手・キョンキョンのファンとしては少し寂しかったりする。まあ、そのあたりはかつての桜田ジュンコさんやいしだあゆみさんと同じなのかもしれないね。ある程度の年齢になれば、女優で認められた方が「箔がつく」のは確かだしね。
 ただ、過去の栄光にしがみついてハリボテのようなアイドルポップスにひたすら固執するセイコたんや、単に「売れるから」というだけで安易にカバーアルバムを出し続ける明菜、両者の近年の歌手活動には「かつてのトップスターが現役を続けているという価値」を差し引いてしまえば、あとにはほとんど評価すべきものは残らないような気もしてくる。そこからするとキョンキョンのこの新作は、たとえほとんど話題にも上らなくても、本人がいま本当にやりたくてやった音楽というのがひしひしと伝わってくるし、かつてのようにトンガってなくてもお世辞ぬきに新鮮に聴こえて、ここ数年の聖子・明菜の新作を聴くよりも遥かに楽しめたのは確かなのだ。
 ところで今年の流行語は「アラフォー」に決まったそうだけど、まさに最近の彼女はアラフォーの星、みたいに見えなくもないよね。(ただ『Nice Middle』というタイトルだけはあまりに直球すぎてちょっとイタダケナイけどね。)何より、藤原ヒロシやASAーCHANGといったかつてから組んでいたメンバーから、TOKYO No1 SOUL SET、果てはあのリリー・フランキーまで、おそらく彼女の人脈からキョンちゃんの例の「あそぼーぜイ」みたいな掛け声のもとに彼女とヤリたい(注:演りたい、ね)ミュージシャンたちが自然発生的に集まって、キョンキョンを材料にして好きな音楽を愉しんで演っている、そんな絵が浮かんでくるのがいい。そこでhiroc-fontana前言撤回。おそらく『Nice Middle』というのは、彼女自身のことではなくて、そんなアラフォーの仲間達への褒め言葉としてつけたタイトルなのかな、という気がしてくるのね。
 いい仲間たちに囲まれて自分の趣味で音楽が出来る。そんなところも、イイ歳のとり方してるよねキョンキョン、と言いたくなってくる。ホント。