ディス・イズ・歌謡曲!小柳ルミ子

 最近ちょっとね、どんどん時代を遡ってる感じな「70年代アイドル」カテゴリーですけど(笑)。
 今回はなんとルミ子さん。まずはこちらをご覧になって!もう、hiroc-fontana垂涎、大好きな2曲のメドレーだす。

 どうよ、このルミ子さんの堂々たる歌いっぷり。アタシ歌うわよ!聴きなさいよ!みたいなね。そのライオンのような髪型も、すべてのパーツが自己主張しているそのお顔も、ファルセット&ビブラートがフルスロットルなそのお声も、とにかくゴージャス、油が乗り切った感じよね。
 さて、「桜前線」は76年1月、「思い出にだかれて」は翌77年1月の発売。両方とも春ウタで、この動画はおそらく1977年当時のものだと思う。ルミ子本人のゴージャスさと裏腹に、実にほのぼの春爛漫、といった趣のこの2曲、ルミ子さんのヒット曲の中ではとてもジミな部類で、セールス的にも恵まれなかった作品なのだけど、いつ聞いてもしみじみとしちゃう「イイ歌」なのよね〜。そう思いませんか?特に今年みたいに、人々の心の中にまで北風がピューピュー吹いているような冬にこそ、こんな心温まる歌を皆さんに届けたいな、なんて思ったりしてね・・・。
 ところでこの2曲を今の若い世代に聴かせたら「演歌っすよね、これ?」とか言うかしらね。「桜前線」の作曲者、徳久広司さんといえばドラマ「寺内貫太郎一家」の挿入歌「北へ帰ろう」というド演歌でデビューした人だから、確かにそうなんだけどね。でもこの曲に関してはどちらかと言えば、吉田拓郎の「フォーク演歌」に近い味わいなのかな?どこかルミ子版「襟裳岬」といった風情よね。
 続く「思い出にだかれて」の作曲、佐瀬寿一(じゅいち)さんは百恵さんの「パールカラーにゆれて」だとかキャンディーズ「暑中お見舞い申し上げます」とか、それに極めつけはあの「およげ!たいやきくん」の作者でもあって。つまりは当時の歌謡曲のメインストリームにいた人なのだけど、こちらの曲調もポップスというよりはフォークぽくて、フォークを通り過ぎて何となく演歌に近づいちゃってるという・・・。
 でもね、これは俺の世代からすると決して演歌なんかじゃない。この、微妙なライン。ポップスでもフォークでも、もちろん演歌でも、ない。メジャーでもマイナーでも、ない。そんな曲をコブシを回さずに朗々と歌い上げる、ゴージャスな歌手。テレビでは清楚な美人歌手として「瀬戸の花嫁」を歌いながら、当時からディスコで踊りまくっていたという逸話が残るルミ子さん。そう、彼女だからこそなせる業なのだ。ディス・イズ・歌謡曲(笑)!このメドレーを聴いて、ルミ子さんこそ、近頃とんとお目にかかれなくなった「歌謡曲歌手」の鑑だ、そう確信した俺なのである。
 ところで昨年、フォーク演歌の「吾亦紅」をヒットさせた杉本真人さん、あの人が作曲した「お久しぶりね」をルミ子さんは82年のヒットさせたのよね。ベスト アルバム「お久しぶりね」はすっかり熟女化したルミ子さまにはぴったりな、少し下世話な感じのメロディーと歌詞が絶妙な、これぞ歌謡曲の典型のような作品でしたけど、そろそろルミ子たんも歌の世界に戻っていらして、また杉本さんあたりと組んでくれないかしら。ルミ子さんならきっと、今話題の秋元○子さんなんかよりも遥かに濃密な「オトナの歌謡曲」の世界を再現してくれるはず、と思うのだけど。