演じられたDIVA・アキナ

フォーク・ソング2 ~歌姫哀翔歌
 昨夜のNHK『SONGS』で、久々のテレビ出演を果たした中森明菜さん。
 セットリストは以下4曲。
 1.悪女(原曲:みゆき)
 2.ダンスはうまく踊れない(原曲:石川セリ
 3.I LOVE YOU(原曲:オザキ)
 4.ベルベット・イースター(原曲:ユーミン
 数あるカバーソングの中から、最新の『フォーク・ソング2』を中心にセレクト。
 正直俺としては、『フォーク・ソング1・2』にしても『ムード歌謡』にしても、CDで聴くと「ちょっとツマンナイな〜」という印象が拭えなかったのだけど、昨日の久々のTV出演でのパフォーマンスを見る限り、やっぱり「動くアキナは凄い(笑)!」と思わされちゃったのね。ボーカルはCDと大して違わないはずなんだけど、彼女が歌う表情、仕草がそれに加わるだけで、全く伝わるものが違ってくるように思えたのだ。
 白いパンタロンスーツで登場したアキナ。セットは、ひな壇のようなシンプルな舞台の上に譜面台と椅子が一脚だけ。背の高い椅子に座り、譜面に目を落としながら歌う彼女だったんだけど(「歌詞くらい覚えろよ」というツッコミは抜きにして)、「悪女」ではヤサグレたオンナのように椅子の上で大また開きのまま歌ったり、「ベルベット・イースター」では膝を抱えるようにしながら空を見上げたりと、まるで一人芝居を見るようで、俺には受話器を手にクダを巻く寂しいオンナ(自称「悪女」)や、初冬の曇り空を見上げる少女が、確かに見えたのよね。これぞ40代のアキナならでは、といった感じの見事なパフォーマンス!
 また、『フォーク・ソング2』に収められている「I LOVE YOU」では、海外のスタジオでのレコーディング風景をそのままオンエア。感情移入しきって歌い終えたあと、感極まって涙を流すアキナは、ちょっとばかり自意識過剰でわざとらしく見えたのだけど、あのあざとささえ見え隠れするわざとらしさ(カメラの向こうにいるファンの目を思い切り意識しつつ、自分の感情の高ぶりを隠さず酔いしれる姿)に一瞬、昭和の女王「ひばりさん」の影が見えたような気がしたのよね。
 何となく感じてはいたのだけど、やっぱりアキナはアキナを演じているのだよね。おそらく。そしてそこにはしたたかな「計算」がある。ステージ上はもちろん、スタッフしかいないレコーディングスタジオでも、アキナは多分どこでも意識してアキナを演じ、パフォーマンスをしているのじゃないかな。
 彼女のCDがつまらなく聴こえるのも、もしかするとそれが原因かと。つまり、「ミュージカルのサントラ盤」を聴いているのと同じなのかもしれないな、ということね。それは音楽性がいくら高くとも、そこにビジュアルが加わることによって初めて完成する総合芸術のようなもの。昨日のテレビを観て、そんな風に思えたのだ。
 まあ、モモエさんとか、ちあきとか、CDだけでも充分完成していながらビジュアルの相乗効果が加わるともっとスゴイ、という人もいるにはいるけどね。。。そこからすればアキナさんもまだまだ、という感じなのかもしれないけどね。だからこそアキナさん、もっともっとステージに立って、これからも芸を磨いていって欲しいな、と思う。