ドーナツ盤ポップスの権化〜ピンク・レディー

 ピンク・レディーの全シングル盤AB面をコンプリートしたベスト盤がようやく出たのよね。ピンク・レディーは70年代歌謡ポップスのテキスト的存在でありながら、楽曲そのものよりも奇抜なフリつけ(ダンス)やセールス面での記録ばかりが取り沙汰されて、その音楽的評価はいまだに驚くほど低いままだし、ビクターっていうアイドル系楽曲の復刻にはやたら腰の重い(笑)レコード会社所属だったこともあって、彼女たちを音楽面で総括するという意味では、なかなか満足のいくアイテムは無かったらしいのよね。
 なんたって、彼女たちの全盛期の77年から79年あたりは、超過密スケジュールで寝るヒマも無くて、ケイちゃんなんかは当時のことをほとんど覚えていない、というのは有名な話だったりするのよね。それで、そのしわ寄せが結局はスタジオでのレコーディングにもいっちゃったわけで、結果、全盛期のピンク・レディーが残したアルバムはほとんどが「ライブ・アルバム」「ベスト(編集)アルバム」であって、スタジオできっちりと録音した「オリジナル・アルバム」というのがほとんど残されていなかったりするのだ。
 その意味で、貴重なスタジオ録音であるシングルAB面をすべて収録したこのベスト盤は、PLの音楽的成果を見直すための究極の1枚!と言えるのでは?なんて思う。
 ほんとにね、これを通して聴くと、全盛期の勢いに溢れた魅力的な楽曲群(B面も含めてね)はもちろんのこと、シングルの売上げがジリ貧になった80年代の曲(当然B面も含めてね)がことのほか良い出来だったりして、エラソーに言わせてもらえば、売れなくってもいいから、解散前に1枚でもいいから彼女達の実力に見合った、彼女たちが心から歌いたい曲を集めたスタジオ録音の「オリジナル・アルバム」を作らせてあげたかったよなあ〜、なんて思ってしまう。ホント、解散前の彼女たちの実力(とスケジュール)を考えれば、素晴らしいアルバムが出来たに違いないのに、当時のPLスタッフは貴重なチャンスをドブに捨ててしまったよな〜(涙)。
 さて、最後にこのベストに収録のカップリング曲のなかで、特にhiroc-fontanaお気に入りのオススメ曲を紹介しときましょう。

  • 乾杯お嬢さん」(「ペッパー警部」B面・76年)。ドンドコドンドコと熱いバスドラに乗って、スピード感溢れる1曲。最初はこちらがA面候補だったとか。ふたりの掛け合いコーラスも素敵です。
  • パパイヤ軍団」(「渚のシンドバッド」B面・77年)。「私たち食べごろよ〜枝からポトンと落ちそうよ」というお色気ソング。ケイの声だとイヤらしくなり過ぎで、それにミーの声が絶妙にミックスされることで初めて“健康的お色気”路線が出来上がる。これもPLマジック。
  • レディーX」(「UFO」B面・77年)。アップテンポのジャングル・ビートに乗せて最後まで荒削りなユニゾンで押し通すパワー・ソング。歌って踊る、ピンク・レディーの魅力を凝縮したような傑作。
  • キャッチ・リップ」(「モンスター」B面・78年)。軽い味わいの歌謡ポップスで、どことなくキャンディーズが歌いそうな感じ。たしかCMソングでしたっけこれ?可愛いPLもいいです。
  • スーパーモンキー孫悟空」(「透明人間」B面・78年)。メロディーといい、曲構成といい、A面「透明人間」にそっくりで当時子供たちの話題になりました。この曲がTV人形劇の主題歌として浸透していたお陰で、やや地味目な「透明人間」がどうにか1位に届いた、という説も。
  • 愛しのニューオリンズ」(「DO YOUR BEST」B面・79年)。この頃から人気は急カーブで下降線に。でもそれに反比例して、作品は充実していきます。カントリー調のバラードで、ふたりそれぞれの味わいのあるソロが聴ける。
  • ザ・忠臣蔵'80」(「世界英雄史」B面・80年)。♪チュウシン、グラグラ〜。このバカバカしいサビ(笑)。でもこれこそPLの真骨頂!なカンジ。それにしてもこのカップリング、いま流行の歴史ブーム(レキジョ)を30年先取りしてます(笑)。作曲は両面とも川口真さん。
  • BY MYSELF」(「うたかた」B面・80年)。ゆったりしたテンポのオールディーズ風ポップス。肩の力の抜けたふたりのボーカルがしっとりとオトナっぽく、息の合ったハーモニーも心地よい佳曲。こちらも川口さんの作品。
  • カトレアのコサージ」(「リメンバー(フェーム)」B面・80年)。いよいよ解散カウントダウンの頃。A面は外国曲カバーだったけど、こちらはしっとりとしたマイナー歌謡。曲の半分は二人の美しいハーモニーで構成されていて、デュオとしてのPLの実力と魅力に脱帽の一曲。作曲はA面のアレンジをした梅垣達志。
  • AMENIC逆回転のシネマ)」(「LAST PRETENDER」B面・81年)。哀しいかな、PL至上最も売れなかったシングル。けれども、PL至上最も実験的な(モモエでいえば「ロックンロール・ウィドウ」的)作品。オリエンタル・テクノといった感じの曲調は今聴いても新鮮で、ちょっとパフィーの影がちらつく。機械処理したミーとケイの声が「宇宙から来た二人」を遅ればせながら演出。詞:糸井重里、曲:梅林茂。

 そういえばかなり前に一度、ピンク・レディー関連エントリーあげていましたね。こちらもよろしかったどうぞ。