キャンディーズ「アン・ドゥ・トロワ」〜そしてわが愛しの1977年
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「アン・ドゥ・トロワ」は1977年9月21日発売、作詞:喜多條忠、作曲:吉田拓郎、編曲:馬飼野康二の超豪華メンバーによるキャンディーズ15枚目のシングル。キャンディーズと吉田拓郎のコラボでは同年春に大ヒットした「やさしい悪魔」に続いて2作目となるが、どことなくソウル・フレイバー漂う「やさしい悪魔」から一転、この「アン・ドゥ・トロワ」は秋らしいしっとりとしたミディアムバラードになっている。拓郎特有の「泣き節」がメンバー3人の美しいハーモニーによって見事に引き立ち、キャンディーズファンの中でも人気の高い名曲だ。同年7月の衝撃の解散発表後に最初にリリースされたシングルということもあって(実際、ラストシングルとして用意されたとのハナシもある)、そのしっとりとしたサウンドから醸し出される切なさは格別だった。オリコン売上げは28万枚を超え、キャンディーズのシングル売上げでは歴代6位の堂々たる成績を収めた。
さて、ハナシはここから少し変わるのだけど。
「アン・ドゥ・トロワ」は29万枚の大ヒットだったのだけど、この曲がオリコンの何位だっかのか?というと・・・最高位は7位どまり!なのね。つまり、順調にトップテン入りしたものの、あまりトップテン上位には食い込めなかった曲なのだ。いったいなぜ?
その理由を考えるとき、この曲が発売された「1977年の秋」というのを考えないといけないと思うのだ。
1977年の秋。この年の秋に発売された曲を思いつく限り挙げてみると、以下の通りになる。
9月。
ピンク・レディー「ウォンテッド」
岩崎宏美「思秋期」
太田裕美「九月の雨」
沢田研二「憎みきれないろくでなし」
郷ひろみ「お化けのロック/帰郷」
中島みゆき「わかれうた」
そして、キャンディーズ「アン・ドゥ・トロワ」。
10月。
山口百恵「秋桜」
野口五郎「風の駅」
11月。
桜田淳子「しあわせ芝居」
原田真二「てぃーんず・ぶるーす」
世良正則&ツイスト「あんたのバラード」
そうなのだ。あなたがもし70年代アイドル・歌謡曲ファンだったら、きっとたまらないラインナップが並んでいるのではないかな?
つまり、当時のトップアイドル達が一斉に大収穫期を迎え、のちにそれぞれの代表曲と呼ばれる名曲がチャートを彩ったのが、この1977年の秋だったのだ。そのうえ、松崎しげる「愛のメモリー」や河島英五「酒と泪と男と女」、高田みづえ「硝子坂」、狩人「コスモス街道」、石川さゆり「津軽海峡冬景色」など、知る人ぞ知る昭和の名曲が同時期にチャートを賑わせていたのがこの時代。
キャンディーズがいくら涙チョチョギレ(古い表現でごめんなさいねっ)の名曲をリリースして、それが大ヒットしても、最高位は7位で終わってしまったという現象。それはつまり、それほどにヒットチャートが充実していた時代、その表れだったのだ。
1977年、hiroc-fontanaは中1。ちょうど人生の最初の変わり目で多感な時期を迎えていた頃。当時、これら名曲たちがめまぐるしく入れ変わるチャートを固唾を呑んで見守っていたものだ。それはとても幸せな時間だったと思うし、今思い出してもこんな名曲たちをリアルタイムでごっそり“ヒット曲”として聴けた時代というのは、本当に「幸せな時代」だったと思わずにおれないのだ(ちょっと思い入れが強すぎかもしれないけどね・・・苦笑)。