いまどきのオトナたちへ〜「T字路」小泉今日子&中井貴一

 昨年の「あまちゃん効果」で大復活を遂げたキョンキョンの新曲は、話題のドラマ「続・最後から二番目の恋」主題歌にして、共演者の中井貴一さんとのデュエット。これがとても痛快な仕上がりで。
 作詞・作曲はクレイジーケンバンド横山剣さん。昭和歌謡を意識した曲調はビッグバンド・テイストで、煌びやかかつジャジーキョンキョンとしては87年のシングル「怪盗ルビイ快盗ルビイ (MEG-CD)
のゴージャス・サウンドに近い雰囲気で、そう言えばあの曲も大瀧詠一さんとのデュエット・バージョンがあったわね、なんてことも思い出す。
 そう、今回はおそらく、アイドル全盛期にしてキョンキョン自身が歌手としてメインストリームで活躍していた80年代へのオマージュ。相手の中井さんも80年代には今も語り継がれるあの名作ドラマ「ふぞろいの林檎たち」で主役を張っていましたしね。
 そして、詞もまたGOOD。

大人げないまま こんな大人になりました
将来のちょっと先の T字路に立っています
アナタはこれからどこへ?
君こそどちらまで?
おんなじ方面なら お供します 途中まで
     (詞:横山 剣)

 この「途中まで」というところがミソね。ここには、我々の親の世代に感じられたような、大人であることの自覚や、気負いがあまり感じられなくて、伝わってくるものは何だか「なりゆきでここまできた」というよう軽いノリ。「お供します 途中まで」というフレーズには、戦前・戦中派までは日本人のアイデンティティとして確実に継承されてきたに違いない「死がふたりを分かつまで」というような、宿命を全うしようとする強烈な意志のようなものは微塵も感じられなくて(笑)、“これからも成り行きで行きましょうよ”という、なんとも肩の力が抜けた爽快さがあって、この辺がやっぱり、80年代のバブル狂騒期に青年時代を過ごした人間ならではの感覚なのかもな、なんて思った。
 俺自身、このブログでも50歳間近な自分が、全くオトナになりきれてないことを繰り返し白状してきた(そうすることで、同情を買おうとしてきた 苦笑)わけだけど、ケンさん(54歳)、貴一さん(53歳)、キョンキョン(48歳)という、hiroc-fontanaとほぼ世代が近い3人がコラボしたこの曲には、我々のような“いまどきのオトナたち”の時代感覚がとてもよく表れているような気がして、とても共感できたのよね。
 そして、嬉しいのはこの初回盤のジャケット。

最初見たときは、え?アナログのドーナツ盤?と、思わず驚いてしまう嬉しい仕様。わたせせいぞうさんのイラストも、俺が大学時代にたまり場の喫茶店で回し読みしていた、懐かしの漫画雑誌「コミックモーニング」連載の「ハートカクテル」を彷彿とさせて、こちらも“ど真ん中”という感じ。
 それにしても、キョンキョン小泉今日子という人の相変わらずのこの鮮度は何なんでしょ。やさぐれた二重アゴのオバサン役(失礼!)が板についてきたこのごろとはいえ、いまだ、かつてのCM女王としてのイコンとしての“キョンキョン”が、イメージとして消えていないのよね。そこが凄いところ(まあ、彼女は芸能界のドン率いる「バー●ング・プロダクション」の中心的タレントですしね・・・フフ)。
 そう言えば、時たま懐メロ番組でお見かけする石野真子さんとか、聖子さんに先立って「SONGS」に出演された菊池桃子さんとか、全盛期の歌唱力はイマイチの印象だったアイドル歌手たちが意外にいまも変わらない歌声(むしろ昔より上達していたり(笑))をキープしていて、むしろパワー唱法の聖子さんや明菜さんより劣化していない気がするのは、彼女たちが省エネボーカルだったことに起因しているような気もするのね。時代はやはり省エネ!ね。とにかく。“省エネ”シンガーの代表格たる小泉さん、この新曲でのニュアンスたっぷりなボーカルの瑞々しさには、脱帽です。「怪盗ルビイ」の頃と(声を聴く限りでは)殆ど変わっていない!ヘビースモーカーだとか、「コイズミ会」なる飲み会を毎晩のように開いて肌はガサガザだとか、いろんな噂が飛び交っているキョンキョンだけれど、それを全否定しているご本人の言葉(ジミに暮らしてます!)を思わず信じたくなっちゃう(微笑)。
 それから付け足しですけど、初回盤に付いているDVD、モボ・モガに扮した小泉さんと中井さんが素敵なダンスで魅せてくれるのだけど、中井さんのどこか“はんなりとした”ダンスがナニゲに色っぽくて、ゲイ的には“正体見たり!”的な感じで面白かったですわ。ははは。