アムロちゃんに見る、正しい復活劇

Queen of Hip-Pop
 安室奈美恵が元気である。近作シングルが2作連続でチャート2位を記録したほか、ニューアルバム「Queen of hip-pop」も好調なすべり出しを見せた。アムロちゃんといえば、コムロ作品での大ブレイク後、ここ数年はもう一つパッとしない印象があったけど、またここにきて急激に復活の兆し。
 今回のアムロちゃんの復活が何とも痛快に感じるのは、そこに事務所やプロダクションのミエミエの戦略が感じられないところだ。(例えば、映画やドラマとのタイアップとか、デビュー何周年アニバーサリーとか、奇をてらったイメチェン策とか。あ、CMタイアップはあったけど・・・。)いわば、その音楽・パフォーマンスが純粋にファンから再評価されて再び脚光を浴びている様相なのである。ここ数年、いわゆるヒット狙いの曲とは一線を画した作品で、本格的R&B路線を追求してきた感のある彼女。以前のように頻繁なテレビ露出はなくなったけれど、それと反比例して格段にカッコよくなっている彼女の歌とダンスを、機会があればまとめて見てみたい。俺もいつからかそう思うようになっていた。そんな、一時アムロちゃんから離れていた薄めのファン達のニーズに上手く応えたのが、DVD「SO CRAZY tour featuring BEST singles 2003-2004」の発売だったように思う。過去の大ヒットから最近のR&Bナンバーまでの生パフォーマンスがほぼ網羅された、ベスト・オブ・ベスト的内容。そして、DVDは予想外(想定内?)のヒットとなり、今回の復活劇のきっかけとなったようである。
 10年ほど前に、CHAGE&ASKAに同じような現象があった。彼らは1978年のデビュー曲「ひとり咲き」がスマッシュヒット、80年には「万里の河」がトップテン入りの大ヒットを記録し、第1黄金期を迎えたが、すぐにフェードアウト。その後暫く低迷期が続いたが、80年代後半「モーニングムーン(86年)」あたりから徐々にトップ20位内に顔を見せるようになり、91年「SAY YES」のメガヒットへとつながっていく。その後はリバイバル作品も含めて大ヒットの連続となり、スーパースターとして上り詰めていく。
 両者に共通するのは、低迷期において着実に実力を蓄え、その後の脱皮につなげたことだ。チャゲアスの場合、年間50を超える全国ツアーを毎年こなしてファンを固める一方、ASKA光GENJI中山美穂をはじめとする他のアーティストに曲を提供することにより、メロディーメイカーとしての認知度を着実に上げていった。一方の安室奈美恵の場合は言うまでも無く先に挙げた、ストイックささえ感じる「黒っぽさ」の飽くなき追求だ。
 残すはアムロちゃんに「SAY YES」並のスパークが訪れるかどうか。
 今、ファンはそういったキッカケをじっと待っているような気がする。