秀樹バラードにカンゲキ!「遙かなる恋人へ」西城秀樹

hiroc-fontana2009-11-04

 ひっさしぶりに男性アイドルをチョイス。今までこのブログで新御三家ゴローヒロミもすでに取り上げたのだけど、いよいよヒデキの出番です。
 新御三家の中では、ヒデキは「ワイルド&セクシー部門担当」というカンジで、熱唱型の曲を得意としてたわけよね。汗に濡れた長髪を振り乱して歌うその姿が、セクシー、というわけね。でも、子供だった俺には色黒・長髪のヒデキは暑苦しいキャラにしか思えなかったし(松崎しげると同系統ね、笑)、どこがセクシーなのか、結局わからなかったのよね。(競泳大会で見せるブーメランパンツも抵抗あったし、“ハア〜”と鼻腔ひろげて歌うところも、ちょっとイヤだったし。。。)そう、今思うと何だかね、子供の俺にとってヒデキはただの「おじさんキャラ」だったのかもね。
 その一方で「若き獅子たち」や「ラスト・シーン」や、「ブルースカイ・ブルー」とか、毎年秋ごろにリリースするバラードで見せる、タキシードなんかをビシッと着て柔らかな声で歌うヒデキは全然カッコよく思えて、そんなヒデキは結構好きだったのよね。
 「遙かなる恋人へ」は1978年11月25日発売、ヒデキ27枚目のシングル。hiroc-fontanaは、この曲こそヒデキバラードの最高峰だと、思ってます。まさに秋にぴったりな、爽やかな佳曲。作詞:竜真知子、作編曲:馬飼野康二。ただこの曲、壮大なバラード「ブルースカイ・ブルー」と、代表曲「ヤング・マン(YMCA)」のリリースに挟まれて、全盛期にも関わらず秀樹の曲の中ではかなり地味な成績に終わったのよね。ちなみにオリコン最高位は8位で、売上げは19万枚。やっぱりレコード大賞候補曲にもなった派手なバラード「ブルースカイ・ブルー」から連続して同傾向のバラード曲をリリースしてしまったのは、いい曲をいたずらに埋もれさせてしまった気がして、ちょっと勿体なかったな〜なんて思う。(ちなみに76年にも「若き獅子たち」と「ラスト・シーン」がバラードの連続リリースで、名曲「ラスト・シーン」がイマイチ売れなかった、という同じような結果を招いていたのよね。)

 ちなみにこの「遥かなる恋人へ」は、あの「木綿のハンカチーフ」のアンサー・ソングという噂がある。歌詞を見てみましょう。2コーラス目。

都会に向けて 旅立ったあの日
あなたは目を伏せ 涙かくした
つらい気持ちを わかっていながら
優しい言葉も言えずに別れた


瞳とじれば 今よみがえる イン・マイ・ハート
あなたの笑顔だけが 支えと気付いたのさ
めざめる朝の ぬくもりのような
さわやかな まなざしを もう一度


長くきびしい 冬をのり越えて
あなたをこの手で 幸せにしたい (作詞:竜真知子

 なるほど、都会の絵の具に染まった彼が、都会でよっぽど何かイヤな経験でもしたのか(笑)、今更ながら故郷に残した彼女の笑顔のぬくもりに思いを馳せるという設定ね。これは作詞の真知子さんの女性ならではの思いというか、「木綿のハンカチーフ」の結末はこうあってほしい、という願望が見え隠れしているような気がするのだけど、なんだか、アンサーソングとして見てしまうとあまりに男が身勝手すぎるような気がしなくも無いよね。だって、「木綿」のラストではこんなことを言っていたやつが、よ。

恋人よ 君を忘れて 変わってく僕を許して
毎日愉快に過ごす街角 僕は 僕は帰れない
   「木綿のハンカチーフ」作詞:松本隆

いまさら「あなたをこの手で幸せにしたい」ってのは、ちょっといただけないよね。。。なんて。
 まあ、そんなことを考え始めてしまうと台無しだから(笑)、主人公の彼の後悔はホンモノであることを信じて(苦笑)、冬へと向かうこの季節、澄んだ心で、ヒデキの優しく温かな歌声に浸ってみましょう。故郷の彼女が、いまも優しく彼を受け入れてくれることを祈りつつ。