長山洋子「肩幅の未来」

25th ANNIVERSARY 長山洋子アイドル・コンプリートBOX~LEGEND of VENUS~(DVD付)
 長山洋子というと、我々の世代ではなんといっても「ヴィーナス」ね。あとはサザンの「シャボン」とか、なんだかトホホ・・・なカバーが印象に残っている程度で、どうしても同時期に同じような洋楽カバー「ダンシング・ヒーロー」でブレイクしたあっちのヨーコちゃんの陰に隠れて印象が薄いカンジ。今ではすっかりエンカの人になっちゃって、しぶとくも25周年を迎えられたそうな。叙情派歌謡からショウビズ世界に展開したルミ子さんや、アイドル〜ロック〜演歌〜ミュージカルと渡り歩いた美奈子さんをはじめ、ジャンルをまたいで活躍する歌手は少なくないけれど(あ、ラ・ムーのボーカリストになった菊池桃子さんもそうかしら 笑)、ほとんどが半分はこんなのもできます、的な“器用さのアピール”だけだったりするのよね。そこからすると長山洋子さんは、両極端のジャンルできっちり成功したし、最近は三味線の腕前でもプロフェッショナルさを見せ付けてくれて、彼女こそホンモノの「芸能のヒト」と言えるのかもしれないね。(少し、25周年のお祝いをかねてヨイショ。)
 そんな洋子さんのアイドル時代の最後を飾ったシングルが、この「肩幅の未来」。(Wikiによるとその後、ダイアナロスのカバー「If We Hold On Together」を出しているんだって!ちょっとこれ、聴いてみたい。)
 俺は長山洋子さん、当時は全く興味がなかったんですけど(失礼!)この曲のCD、なぜか持っているんです。実はこの曲、作詞・作曲がスゴイんです。作詞:中島みゆき。作曲:筒美京平。超豪華の大先生コンビなのね。この曲は筒美さんの30周年アルバムの一曲としてピックアップされていて、それをhiroc-fontana、持っていたのね。
 「肩幅の未来」は、名曲がギッシリ詰まったその筒美30周年アルバム『HITSTORY』のVol2のDISK4、つまり筒美さん歴史の中でも最も新しい時期の曲をとして収録されている。この曲、アルバムを通して聴く中では、メロディーも普通だし、さほど印象に残る曲ではなかったのだけど、最近長山洋子さんがアニバーサリー関係でメディア露出が多いもんだから、ふと聴きたくなって聴いてみたら、これが結構な名曲だったのね。
 曲は筒美さんお得意の、8部音符が連なるマイナーの歌謡曲メロディーなのだけど(ちょっと岩崎宏美の「女優」に似ているのね)、若さゆえの刹那的な恋愛への憧憬と後悔を、印象的な「肩幅の未来」というキイワードとともに綴ったみゆきさんの詞が素晴らしくて、それを洋子さんが確かな表現力で歌いきっていて、なかなかの聴きものなのね(ちなみに中島さんも自身のアルバム『回帰熱』でカバー)。やっぱりね、もともと民謡で喉を鍛えたという洋子さん、洋楽カバーより何より、その発声法はこういうウエットな世界が一番合っていたのだろうね。
 この曲は1989年7月発売。その後しばらくウタの世界は休んで、1993年に「蜩」(ひぐらし。「鯛」じゃなくてよ)で演歌歌手として再デビューする洋子さんだけど、「肩幅の未来」で見せた、アダルトな純歌謡曲の世界はその前哨戦のようでもあり、歌手の本質に最も適したメロディーを提供する筒美さんの眼は、いつもながらやっぱり凄いとしか言いようがない気がする。
 それと、歌謡曲でありながらセンスのいいアレンジをつけた山川恵津子さんもいい仕事してます。
 ただこの曲、オリコン最高位35位、売上げ1万枚程度とセールス的には淋しいものだったみたい。

 ところで洋子さん、最近、劇ヤセしてなんだか顔が逮捕前の「アノ人」(○○ピー)に似てきたような気がする。大丈夫かしら。。。