チャゲアス。〜90年代の遺産〜

 CHAGE and ASKA、無期限活動停止宣言から3年。
 ソロ活動を充実させるための活動停止とは言いながら、その後はほとんど表舞台から遠ざかっている印象の二人。(実際にはそれぞれ地道にコンサート活動をしたりアルバムをコンスタントに発表しているようだけど。。)
 優れたメロディメーカーとして、かつリードボーカリストとして、常に華やかな存在感を示してきた飛鳥涼。一方のチャゲは、どちらかといえばキャラ先行型。正直ハッキリした音楽性は見えて来なくて、たまに彼のソロがアルバム曲に入っていても、気合いの空回りした長渕剛のようにしか聴こえてこなかったりして、ちょっとイタかったり。。。デュオと言っても、多くの人の印象は限りなく“アスカのソロ・プロジェクト”に近いイメージだったのではないのかな?なんて思う。巷で色々と囁かれていた活動停止の理由は、その辺りも関係していたのは確かよね。
 でもチャゲアスASKAしかり、サザンの桑田さんしかり、ほとんど中心人物ばかりが脚光を浴びているようなバンドがいざ活動停止に至って、当然のごとくその中心人物がソロになって活動をし始めても、途端にかつて(バンド時代)の輝きを失ってしまうように思えるのは何故かしらね。古くはビートルズがその好例ね。
 やっぱり、たとえグループの中で才能が突出していたとしても、それ以外の仲間との協働作業の中でのアドバイスやチェックの眼が入るのとそうでないのとでは、その作品仕上がり(耀き)に少なからず影響があるのかな、なんてことも思うのよね。本人の気合いの入り方の違い、みたいなね。
 さて、そんなCHAGEASKAの懐かしいCDを引っ張り出して久しぶりに聴いた。VERY BEST ROLL OVER 20TH
 欧米でも認められた(「The World Music Awards '93」受賞など)という、ASKAの紡ぐ洗練された甘いメロディーは、唯一無二のものだな〜、と改めて感じさせられた。彼らはデビュー当時「フォーク演歌」と呼ばれていた時期もあったけれど、そんなルーツを持つASKAが創り出すメロディーは独特の湿度感があって、ある部分叙情的でもあり、乾ききったアメリカン・ポップスとは一線を画しているのだけれど、それでも職業作家として光GENJI中森明菜らにたくさんの曲を提供していく過程で培われていったであろう独特の「スケールの大きさ」があって、そこがまさにワールドワイドで認められる部分なのだと思うのね。(一方で、歌詞の方はあまりに抽象的・イメージ先行で、意味がよくわからなかったりするのだけどね(笑)。)
 「LOVE SONG」「WALK」「SAY YES」と続いたブレイク期のバラードをいま聴いてみると、メロディー的にはスマートで洋楽的でありながら、それでもどこか郷愁を感じさせる不思議な魅力に満ち溢れていて、いまだにあっという間にその世界に引き込まれてしまう強さがある。
 その後の名曲群も「no no darlin'」 「YAH YAH YAH」 「Sons and Daughters」 「You are free」 「HEART」(←これがイチバン好き) 「On Your Mark」 「めぐり逢い」 「river」と、後期に行くほどに曲もどんどん洗練されて、ポップスやバラードからアッパーな曲まで、様々な曲想でオンリーワンなその世界が展開されていく。
 これらの懐かしい曲を聴き直して、自分にとっては“暗黒時代”だった90年代の初頭、そういえば彼らの音楽に随分救われてきたよな〜、ということを改めて思い出して、思わず涙が出そうになった。
 しかしそれらの名曲たちも、今となれば90年代のJ-popメガヒットたちの中に、ただ何となく埋もれつつある、というのが何とも哀しいかぎりで。
 そろそろしっかりと、彼らの足跡が見直されてもいい時期なのかな、なんて思っているこのごろ。