セイコ・アルバム探訪20〜『20th Party』

20th Party(紙ジャケット仕様)
 さて、今年のブログ仕事始めは、やっぱり聖子さんでいきます。
 “セイコ・アルバム探訪”をシリーズ化して足掛け早や3年目、20回目となる今回はやっぱりこれかなと。聖子さんデビュー20周年にあたる2000年6月に発売された33rdアルバム『20th Party』。
 この一作前のアルバム永遠の少女が当初は20周年作品のようにマスコミに取り上げられた時期もあったが、『永遠〜』が結果的に松本隆の作詞家生活30周年記念作品の一環として脚光を浴びてしまい、おまけにセールス的にも失敗してしまったことなどから、前作から約半年のサイクルで急遽「本家20周年作品」としてリリースされた感のある本作。
 「松本さんからは“やっぱり、君と僕はね、一緒にやっていかないと駄目なんだよ”な〜んて言われちゃったけど、ワタシはワタシのやり方で、これからもやってくわ。第一、あんなお説教臭い歌詞、歌ってらんないわよ!」と聖子たんが呟いたかは定かではないけれど(笑)。この『20th Party』は前作から一転、真っ赤なジャケットからして聖子たん、ハジけまくりです。「さあ、新しい10年よ!いよいよパーリィーのはじまりよ!」みたいなね。。。やれやれ。
 そして聖子が20周年で新たにパートナーに選んだのが、原田真二さん。かつては彼女にとってのアイドルだった人物ね。このアルバムの面白いところは、その原田氏にプロデュースまで完全に下駄を預けた作品(5曲)と、90年代(そのあとも、だけど。怒)の相棒・リョー小倉と聖子の共同プロデュース作品(5曲)で完全分業体制を採っている点。これは80年代の風立ちぬにおいてアルバムA面をごっそり大瀧詠一氏によるナイアガラ・サウンドで染め上げて以来のことであり、聖子作品としては異色で、その意味では20周年に相応しい聖子なりのチャレンジだったと言えるのかもしれない。また、聖子&小倉作品では作詞に『永遠〜』でコラボした吉法師を起用し、これもセルフ期としては珍しい形。
 まあ、そんな感じで結局はセルフで再出発した20周年作品の本作なのだけど、これが混迷の2000年代セイコを象徴するような作品なのかな〜、とも思うのだ。このあと原田真二とのコラボは4年ほど続くことになるわけだけど、彼の作品とセイコがどうもしっくりいってない感があるのよね。セイコ自身、憧れの真二さんに頼んだは良いけど、本当にこれで良かったのかしら?と自問自答しながら歌っているような、妙なよそよそしさを感じるのね。
 その結果、原田真二とのコラボという新たな試みのはずが、このアルバムの中では「Seiko&Ryo Ogura」作品の方が、パクリ満載ながら(笑)断然聴き易いという、妙な効果を演出してしまっている気もする。
 そして結局は原田真二と別れて2005年の『Fairy』で鳥山雄司とガチで組んだあと、最終的に元の鞘に収まって現在に至る、みたいな、トホホな未来予想図は、この『20th Party』で既に見えていたのか知れない(苦笑)。
 ちなみにオリコンアルバムチャートの最高位は16位、3万枚の売上げ。この成績は、残念ながら『永遠の少女』と大差なかったのでした。。。
 

  • 20th Party(詞:Seiko、曲:Ryo Ogura、編:鳥山雄司

 さあ、パーリィーのはじまりよ!(しつこい?)Miami Sound Machineのヒット“1−2−3”に似てるかもしれないけど構わないわ!これはワタシに欠かせない歌よ!とばかりにその後10年、ライブのとっておきアンコール曲として君臨するパーティー・チューン。シングルチャートでは最高位17位と久々のヒット。歌詞に過去のヒット曲のタイトルやフレーズが登場するのは「微笑がえし」のアイデア拝借。でもこちらの詞(Seiko作)のあまりの意味の無さには、良い意味で脱力します(笑)

  • 感謝しているヨ!(詞:Seiko、曲Ryo、編:鳥山)

 アッパーなポジティブ・チューンが続く。メジャーで親しみやすいメロディー展開の王道セイコ・ポップス。サビはなかなか覚えやすくてまあ、イイ曲かな。

 20周年記念シングル連続リリース2作目は、最高位37位(涙)。矢野アッコちゃんのワンポイントリリーフの経緯はナゾだけれど、原田さん渾身のチャイニーズ・メロディーに浮遊感のある矢野さんの詞、板についてきた聖子さんのファルセット・ボイスが相まって、上海Cityの猥雑で幻惑的な雰囲気がどことなく伝わってくる佳曲に仕上がっていると思います。ワタシはこの曲、好き。

  • 強い向い風の中で(詞曲編:原田)

 こちらは原田真二的に展開したポジティブ・ソングで、アメリカン・ロックに載せた男詞を、聖子さんが男前に歌いこなしてます。アルバム『Forever』といい、こういった乾いたロック調の曲は聖子さんに意外に合っている気がする。

  • RAIN(詞:吉法師、曲:Ryo、編:鳥山)

 吉法師の紡ぐ詞は、松本隆氏のディテールにこだわった詞と比べればあまりにあっさりとしている上に世界観も狭いのだけれど、さりげない中にも切なさは伝わってきて、ある意味2000年代J-popの典型的作風なのかも。その辺りと、スタッフとしての使い易さ(?)が聖子さんがこのヒトを起用した理由かしらね。真相はよくわからないけど。地味ながら良い曲です。

 涙のしずく、じゃありません(笑)。終始、原田さんのブキミな多重コーラスが聖子のボーカルに絡みつくのがちょっと気になるけど、東洋的なメジャー・マイナー・キイが印象的なミディアム・ナンバーで、聖子作品としては毛色の変わった“聴きもの”には違いない作品。(でも「RAIN」」とこの曲が続くと、一見あっさりした「RAIN」の方に軍配が上がっちゃうのよね。)

  • Pretty Baby(詞曲編:原田)

 “Baby”フレーズと言えば聖子たんかと思いきや、これは原田さん作品。モータウン風の曲調で、さらっと聴きたいのに、変に重ったるい原田さんのアレンジがいただけませんわ。勿体ない。“ランチタイムにガーリック禁物”というちょっとヘンテコな詞に思わず吹き出しちゃった私。

  • Unseasonable Shore(詞:吉法師、曲:Ryo、編:鳥山)

 20周年記念シングル連続リリース3作目となったこの曲、最高位35位(またまた涙)。こちらの原曲はNatalie Imbrugia“Torn”(1998)(Cremorn Pointさん、ご指導ありがとうございました 笑)。原曲にどこまでも忠実に爽やかさを表現した、良い曲には違いない。悔しいけど(笑)。

  • A Midsummer Night' Dream(詞:吉法師、曲:Ryo、編:鳥山)

 サビの「♪ ねえ〜」というフレーズが印象的な、ロマンチックな佳曲。ただタイトルが疑問。よくある“真夏の夜の夢”にしたほうが却ってインパクトがあったんじゃないのかしら。

  • 夏物語(詞曲編:原田)

 原田真二との息のあったデュエットでエンディング。アルバム曲のファン投票では上位に入った。デュエットでも甘いバラードではなくロック色の強い仕上がりにしたのが原田さんなりのこだわりかも。
 
今回も長くなってしまいました。最後までお付き合いありがとう。