セイコ・アルバム探訪28〜『Dream&Fantasy』
発売より4カ月。遅まきながら、最新作をレビューします。。
まずは、ごめんなさい。このブログのレギュラー読者さんはご存知だと思うのだけど、ワタシ、発売当初からこの作品は「買わない!」と決めていたのよね。。だって、またもやオールセルフで使いまわしタイトルの曲が並んだこのアルバム、今回も"裸の女王様"セイコが"ご趣味"で作ったチープな作品であるのは目に見えていたし、コアなファンからの"お布施"を狙ったセイコたんサイドの安易な商売に乗せられるのはもうコリゴリよ!なんて思ったから。
でも。約束を破って(苦笑)、やっぱり購入してしまいました(ア●ゾンのポイントがたまっちゃったもので・・・そんな苦しい言い訳で許してください 苦笑)。
それにしても、悔しいわ。結局は「やっぱり新しい曲が聴きたい」と、つい買ってしまった自分(スジガネ入りの聖子ファンなのよ。。やっぱり。)の意志の弱さが。
そしてね、もうひとつ悔しいのは・・・
このアルバムが、予想以上に、良かった。
ということ。そう。普通に、何度もリピート出来るのよ、このアルバム。
確かに、ポエマー・セイコの「花びら舞って」「ドレスの裾が翻って」「あなたが大好きで」「永遠さえ感じる」歌詞の薄っぺらさは相変わらずだけどね。それに、80年代を引きずったリョー・オグラのトホホなアレンジも、相変わらず。
ただ、一応コンセプトに沿って外注曲やらもろパクリ曲(笑)やらでバラエティに富んだ曲調で久々にアルバムらしいアルバムだった前作『A Girl In The Wonder Land』と比較しても、作曲面では今作の方が進歩している。耳を惹くメロディーが多い。
聖子さんのボーカルは、中低音部の声の劣化に加え、一段と粘度を増した発音(ex. ♪くぉ〜ぬぉ〜きぃむぉ〜ちぃ〜〜(訳:「この気持ち」)とかね 苦笑)のしつこさは気になる一方、バラードの「Angel」「I reach for you」あたりで聴かせる、聖子史上最高音とも思われるファルセットはたしかに以前より艶めきを増して、ある種「荘厳さ」を湛え始めて来ている気がする。これは確かに聖子さんの新しい境地。年齢相応の枯れた味わいをようやく自分のボーカルの中の"強み"として見出したのかも。「Put Our Hearts Together」の成果がようやくオリジナル作品の中に現れてきている気がする。
まあ、作品としてこれが100点とは口が裂けても言いたくはないけれど(苦笑)、いい意味で久しぶりに期待を裏切ってくれた新作。
それでは曲紹介を。10曲目の外注作品「Reach out〜」を除き、全作詞:Seiko Matsuda、全作曲:Seiko Matsuda&Ryo Ogura。(ったくもう。)
- Dancing Dancing!!(編:小倉&栗尾直樹)
まずは、ノリノリのポップスで幕開け。E・W&Fあたりを狙ったブラス系ディスコ・サウンド。そう言えば前作のオープニングはELOでしたっけ・・・。セイコ&リョーのコンビの音楽性は、80年代で止まってるわ!まあ、ステージでは盛り上がりそうな曲ですけどね。
- I Love You!!〜あなたの微笑みに〜(編:小倉&栗尾&宮野幸子)
先行シングル。こちらは90年代Jpopの香り。米米の「君がいるだけで」風のAメロがそう感じさせるのかも。(訂正。97年の聖子たんのシングル「さよならの瞬間」にサビがそっくりでした・・・。)何の変哲もないメジャーコードのポップスで、こうした曲を歌うと声帯劣化したセイコさんの辛そうな発声が目立つ。ただ、間奏でのバックコーラスとセイコさんのハミングとのからみがなかなか新鮮で、悪くない。
- Love Island(編:小倉&栗尾)
ミディアムテンポのポップス。舞台は南の島。冗長な感じ。(早くもここでスキップする私。苦笑)
- Angel(編:小倉&宮野)
ワルツのバラード。97年のシングル「Angel〜私だけの天使」とは同名異曲。トホホ。でもね、これを先の同名シングルの続編として聴くと、何だか深い意味が漂ってくるから不思議。「♪ I can hear your voice / 聞こえてるわ l can see the light / 信じ続けるわ」「傷つけられて倒れた日も 手をさしのべて支えてくれた」。これって、最近独立した「あの娘」のこと? 美しいファルセットがまるで天に届きそうな名唱。「♪ 心細さに 震える夜」の部分の感情の込め方に久しぶりに天才的表現力を見た感じ。
- My Wedding Day♡ (編:小倉&栗尾)
レゲエ。毛色は変わってますけどね、こちらはブロンディの81年のヒット「The Tide Is High」のもろパクリ。荘厳なバラードから一転、いつものノーテンキセイコ。まあ、幸せいっぱいな感じはいいですけどね。“!!”とか“♡”をタイトルにつけるの、もうやめません?セイコたん。
- Only one for me (編:小倉&宮野)
あら、お次はイントロからまるで、まりやさん「不思議なピーチパイ」(1980)。跳ねるテンポの爽やかなポップス。車のCMソングで流れてますね、これ。セイコさん近作ではこのテのタイプの曲がCMソングに起用されることが多いね。間奏のトロンボーンが新鮮。演奏はジャズトロンボーンの第一人者・中川英二郎さん。
- 私からのさよなら(編:小倉&栗尾&宮野)
タイトルそのまんまの、悲しいバラード。それだけの曲ですが、何か?(でも、セイコファンの友達によれば、こういったシンプルな曲(駄作系?苦笑)こそが、実際に失恋したときには意外と効くのだそう。)
- さよならBaby (編:小倉&栗尾)
「私からのさよなら」→「さよならBaby」。しりとりかっ!サウンドはいきなりスタイル・カウンシル(ご存知ですか?)。懐かしブリティッシュ系オシャレ・ポップス。文句つけながらも、好きですこの曲。
- Believe(編:小倉&宮野)
この曲は冒頭、彼女のアルバム・エンディングにありがちな、フェスティバルソング系の冗長なバラードと思わせられながら、ブリッジ部分でいきなり英語のフレーズが出くるサプライズがあって、思わずハッとさせられる作品。ここでいきなり洋楽的な香りが漂って、うまくエンディング曲につながる感じ。
- I reach for you(詞曲:Jorgen Elofsson、Par Westerlund、編:小倉&栗尾)
エンディング曲は海外アーティストの作品。当初は日本語詞も考えていたが、英語詞の内容が素晴らしく言葉も美しいことから英語詞のまま歌うことにした、とのこと。「タイタニック」主題歌「My Heart Will Go On」を思わせる、壮大なバラードで、この曲を英語で歌ったことは大正解(ちょっと発音は危ういけどね)。やっぱり今の聖子さんは、ネチネチ日本語でお花畑世界を歌うより、英語で洋楽曲を歌った方が断然、ボーカルに訴求力が出てくる。ご本人の集中力が違うからなのかな?この曲1曲だけ、何度もリピートしちゃってる私。(“何度もリピートできる”って、そういう意味だったのよ・・・苦笑。)