去りゆく夏に〜「Carry on」松任谷由実

 八月ももう、終わり。今年の夏は広島の土砂災害をはじめ、「想定外」の出来事、特に"Badなニュース"が多かったような気がする。そして東京ではここ一週間ほど、八月らしからぬ肌寒くグズついた天候が続いていて、夏らしいまぶしい太陽はほとんどお目にかかれない毎日で、なんだかこの夏の終りを象徴しているようにも思えたりして。
 子供のころ、夏休みの終りのこの時期はとにかく憂鬱で、結局は無為に過ごしてしまった1か月あまりを後悔しつつ、先送りしてきた宿題を片付けるのにただただ必死だったように記憶しているけれど、立派な(?)中年男に成長したいまも、やはり夏の終りのこの時期はどこか憂鬱で、感傷的な気持ちになってしまうのが不思議な感じがする。それは少年時代に何度となく繰り返してきた憂鬱な気持ちがトラウマとして残っているのかもしれないし、気温の変化からホルモンバランスが微妙に崩れたりする影響なのかしら?なんてことも思ったりしてね。
 そんな憂鬱な2014年の八月の終り、私はこの曲を聴いて自分を勇気づけているのだ。
 「Carry on」。1992年の発表の名盤『Tears and Reasons』より。
 昨年も、夏の終りの時期に同じアルバムから「冬の終り」を取り上げたのだけど、今年もなぜか、22年前の冬に出されたこのアルバムの1曲が、夏の終りの私の頭の中にリピートし続けているのです。

ティアーズ・アンド・リーズンズ/松任谷由実
終りのない長い道を
あなたはひとり走っている
渇ききったその喘ぎが
私にだけはきこえてくる
Carry on・・・・・Carry on・・・・・
決して孤独は代われないから
 (詞:松任谷由実

 異常気象がいつの間に「異常」でも何でもなくなってしまって、何気ない日常を過ごしていた人々が、自然災害であっけなく命を落としてしまうこの時代。この超過密にして巨大地震の危険にさらされている大都市・東京に住んでいる私たちも、対岸の火事とは言えない。
 この夏、出会った大切な人たち。一緒に過ごした、大切な人たち。かけがえのないその笑顔を思い出すたび、彼らといつまでこうして会えるのだろう、なぜかそんなことを考えてしまう俺がいる。たぶん少し、心が弱くなっているのだと思う。季節のせいかもしれないけれど。
 そして、この曲がそんな自分を救ってくれるのだ。

Carry on・・・・・Carry on・・・・・
私が会えた素晴らしい人
あなたを見つめていたい
あなたに教えて欲しい
あなたと分かち合いたい
今を Carry on
〜中略〜
終りのない長い道に
傾いてゆく夏の光
あなたはただ走っている
金の炎が燃える場所へ Carry on
(詞:松任谷由実

 そう、一緒に走り続けていきましょう、生きている今を。それぞれに。
 大切な皆に、そう声を掛けたくて。

 ★ Carry on=「くじけずに、続ける」の意