コンサート「SEIKO JAZZ 2017」

SEIKO JAZZ(初回限定盤B) 11月2日、オーチャードホールで開催されたコンサート「SEIKO JAZZ 2017」。私、ファンクラブ会員の友達のおかげで、参加することが出来ました。
 文字通り「ワンナイトオンリー」というべきこの貴重なコンサート(その後、リクエストが多かったためか、名古屋、大阪公演も決定したとのこと)をラッキーにも観賞できたことへの感謝を込めてのレポでございます。(ただし、まだ2都市公演が控えているのでネタバレはなるべく少なく…ここが辛いわ。)
 平日夜、開演18時30分と、ヒラサラリーマンには少々厳しいセッティングにもかかわらず(なんちゃってオヤジリーマンのワタシ、もちろん仕事を早引けしました…汗)、開演時間5分前にはほぼ満席状態。ドームコンサートであればお決まりのセイコ・コールが掛かる時間だけど、ここは体育館ではなく、ふだんはクラシックを聴く会場、オーチャードホールということで、多くのセイコファンはどこか居心地悪そうに大人しく幕が開くのを待っている。
 そして10分ほど遅れて幕が開き、左からピアノ、サックス、ベース、ドラムのフォー・メン(全員白人ミュージシャン)と、そのバックに8人のストリングス(日本人男女混合チーム)の編成で生演奏が一曲。雰囲気が出てきたところで聖子さん登場。アルバム『SEIKO JAZZSeiko Jazzを丁寧に再現するコンサートは、こうして幕を開けたのでした。
 最初は聖子さん本人はおろかオーディエンスにも緊張が感じられたものの、良い意味でジャズという音楽のリラックス効果もあって、次第にアルバムの真骨頂でもある、エレガントなアレンジとそれに乗る聖子さんのスモーキーな声の恍惚感に会場全体が包まれていく。
 そしてラテンの曲では、ノリノリで会場にマイクを向けて「オパ!」のレスポンスを求める聖子さん。続くトークでは「ワタシ今日ね、踊りながら、あら腰が動いてるわ!と気づいたの。ガハハ。」と、例の腰を痛めた事件をからめての自虐ネタを披露。この辺からジャズ仕様のソフィスティケーテッド聖子から、いつもの天然聖子が抑えきれずに溢れ出てきて、会場も一層リラックスムードに。きょとんとするバックミュージシャンに流暢な英語で逐一爆笑トークの内容を説明するセイコたん。そこまでするか??(苦笑)
 そんな調子で途中休憩を挟み、すべての曲をフルコーラスのナマ歌でじっくり聴かせてくれた今回のコンサート、ドーム会場ではなくコンサート専用会場だけあって音響も素晴らしくて、生楽器をバックに聖子さんの美声が存分に堪能できました。まあ欲を言えばもう少し曲を歌って欲しかった気持ちはあるけれど、聖子さんも言っていたとおり、デビューして35年以上経って新しい形(元アイドルの彼女がジャズだけを歌うコンサートを開催したわけですからね!)のステージを見せてもらえたことだけでも、価値があったのかもしれない。うん、確かに。
 当の聖子さん、トーク中に「ジャズを歌うのは初めてで、今は勉強中です。」と何度も言っていたのが少し気になったのだけど(プロがそんなこと言っていいのか⁈とお叱りが来そうでね)、一方ではオーディエンスもほとんどは恐らくコアな聖子ファンと思われるから、やはりジャズ初心者が多いはずで、結局はそんな関係性だからこそ成り立つコンサートでもあったのかな?なんてことも感じたのね。でも私は、あくまでも謙虚な聖子さんに好感を持てたし、だからこそ、これからジャズ分野のプロデューサーやディレクターの指導を真摯に受け止めながら、さらにジャズ・フィーリングを磨いて、ぜひ新たなボーカルの地平を切り拓いていって欲しいな、なんてことを考えながら聴いていたのだ。
 今回のコンサート、CDの再現としてはかなりのクオリティだったものの、まだまだ聖子さんが持っている無尽蔵のボーカル・テクニックが使い切れていないな、と感じた箇所もいっぱいあったように思う。丁寧に歌い過ぎるばかりに、意表を突くようなフレージングや歌い方が、ライブにもかかわらずほとんど無くて。エラソーに言わせてもらえば本来ならそれがあってこそのジャズだと思うので、そんな意味で、聖子さんなりに精一杯よくぞやってくれた、でも、次回にこそ期待!?というような、“条件つきプレミア・コンサート”だったと言えるのかも、と。
 「SEIKO JAZZ」が、単なる「SEIKOなりのJAZZ」ではなく、「SEIKOならではのJAZZ」となる日を期待して、ということで。聖子さんも「シリーズ化」宣言したからには、お願いね。