古今東西〜「太田裕美コンサート2018」レポ〜

心が風邪をひいた日 今回は、「太田裕美コンサート2018」と冠され、東京から京都、2週連続で開催された太田さんのソロコンサートをまとめてレポです。そう、ワタシ、贅沢にも両日参加出来ました。感謝カンゲキでございます。
 近年はコラボ形式のライブ中心の太田さん。その分マニアックな選曲が魅力のソロコンサートの貴重さは年々高まって、チケットは今回も早々と完売。某チケット流通サイトでは倍額以上で取引されたりしていてビックラこいたのだけど、実際、会場は両日とも妙齢の(?)男性ファンを中心に(女性ファンも年々増加中!)ぎゅうぎゅうの満席で、熱気(と加齢臭?・・・人のことは言えませんが(苦笑))に溢れていたし、まさに「プラチナチケット化」していることが肌で感じられたのだ。
 今年は、7/22の東京公演が恵比寿ザ・ガーデンホール、7/28の京都公演は京都劇場と、2回とも太田さんとしては初めての会場で、特に京都劇場の方は久々の1000人規模の会場ということで、結婚休業以降一貫して小さめの会場で手作り感満載のコンサートを続けてきた太田さんとしては、今年は明らかに何か一つ「突き抜けた感」があったように思えた。

 その「一段突き抜けた」という感覚、ホールの大きさや音響はもちろん、今回久しぶりにバックにドラムス(楠均さん)が加わってサウンドが確実にグレードアップしたことがまず、ひとつ。しかし何よりも大きかったのが、またもや太田さんのボーカルが奇跡のように進化を遂げたこと、それに尽きる気がするのね。
 進化した太田さんの声。大きめのホールの隅々までファルセットが響きまくり、時おりの微妙なウィスパー表現も、マイクにニュアンスがしっかり乗ってファンの耳に届くようになった。本当の意味で、その声一つで1000人近いオーディエンスを魅了する、オンリーワンのシンガー・太田裕美がそこにいて。時に歌詞を間違えたり、音程がフラットになったり、そこは相変わらずナンチャッテな太田さんも勿論健在ではあるけれど(そんな自然体こそが太田裕美の魅力でもあるわけだけれど)、そこに本来の声の魅力が120%加わった感のある今の太田さんは、まさに奇跡(経歴ウン十年にして・・だからこそ余計に)、そう思えたのだ。
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 さて、今回の2公演。セットリストはほぼ同一で、途中のトーク内容も題材的には同じだった訳だけど、2週連続での参戦はさすがにダレるかもと、私自身、当初は危惧していたものの、いざ2回目の京都では、却って太田さんの素晴らしい歌そのものに集中できたりして、両日ともにそれぞれの楽しみ方で楽しめた、そんな感じ。
 ではいつもの通り、両日のセットリストと恒例の太田さんの楽しいトークを振り返ってみます。(なお今回、特に片方の公演だけで見られたトーク内容や曲に限っては一応、「(T)=東京公演」、「(K)=京都公演」と分けて記しています。)

☆オープニング BGM〜銀河急行に乗って(リプライズ)〜
(中央スタンドマイクに太田さん登場。白いブラウスに水色のミモレのスカート。すごく似合っていて可愛い。スカートから覗く足がとてもキレイなのにもビックリ。)
1.タイムマシーン(2014・AL『tutumikko』)
(♪タイムマシンに乗って〜のフレーズで腕をグルグルと回す振り付けがチャーミングでした。)
2.銀河急行に乗って(1975・AL『心が風邪をひいた日』)
〜(K)タイムマシーンと銀河急行に乗ってスタートして、1975年まで戻っちゃいました(笑)。
〜今回は真夏のコンサートということで、夏の曲をたくさん歌わせて頂きます。今日は、色々な私が出てきますよ。裕美ちゃん、裕美さん、裕美くん、裕美さま、と(笑)。
〜先日、Rolly寺西さんのコンサートにゲストで呼ばれて、Rollyさんが作詞してくださった、この曲を歌わせてもらいました。私のコンサートでは初めて歌います。
3.瞳のウフフ(1999・AL『Candy』)
(イントロで小さな鉄琴を叩く太田さん。)
4.南風(1980・17thSG)
5.心象風景(1977・AL『こけてぃっしゅ』)
(余りにもすばらしい歌声に、思わず白昼夢に引きずり込まれてしまったワタシ。)
〜ピアノ弾き語り〜
6.夏風通信(1977・AL『こけてぃっしゅ』)
〜当時のレコーディングは結構なハイペースで忙しかったのですけど、制作前のリサーチのような形で、筒美先生や松本さんが時間を割いて色々と話を聞いて下さったりして、楽しかったのを覚えています。その中で「今どんな曲を聴いているの?」と筒美先生から訊かれたとき、当時大好きだったオリビア・ニュートン・ジョンの「ヒム」(←太田さん、正確には「SAM」ですよ・・。)という曲のことを話したら、筒美先生が同じイメージのとても素敵な3拍子の曲を作って下さいました。それが「夏風通信」で、今も大好きな曲です。
7.袋小路(1975・AL『心が風邪を引いた日』)
☆メンバー紹介
 おそらくパシフィック・ビーナス号の船上ライブ関連の話。メンバーで利尻島に行ったときのエピソードで、唯一利尻に行ったことがある岩井さんがガイドとして大活躍した話や、西海さんは船内でもずっとビールを飲み続けていたので、プリンマン(?)として紹介(会場、(笑))。一方ドラム・楠さんは1983 年以来のセッションとのことで、その時代(テクノ時代)を太田裕美の「黒歴史」として自ら紹介し、会場はまたも爆笑。((K)でもその後ツイッターでファンから「自分はあの時代の曲に救われたので、「黒歴史」なんて言わないで欲しい」と呟かれたエピソードも紹介。)話の流れで次の曲は楠さんがメンバーでもある「くじら」の作品を演奏。
〜ギターを手に〜
8.ランドリー1984・AL『TAMATEBAKO』)
9.満月の夜君んちに行ったよ(1983・20thSG&AL『I Do,You Do』)
〜(K)このアルバムでは大人の童謡のようなコンセプトで曲を書きまして、私の息子たちもこの曲、好きと言ってくれて一緒に歌ってくれたりしましたね。子供に向けて、みたいな気持ちもあったのかしら?いやいや。(・・と独りごちる太田さん。)以上、ここでは「裕美くん」を出しました(笑)が、次は「裕美さん」的な大人っぽい曲をお送りします(微笑)。
10.Summer End Samba(1978年・AL『エレガンス』)
(ピアニカ演奏。イントロでのピアニカから息つぐ間もなく歌い出す太田さんがナニゲにスゴかったです。)
11.nenne(1978年・AL『海が泣いている』)
〜(K)『海が泣いている』は、「ロスアンジェルスで録音すると音が乾いた感じになって、ジメジメした日本でレコーディングしたのとは全然違う音になるんですってよ」(笑)とかテキトーなことをレコード会社に言って、結局はご褒美みたいな形でロスでのレコーディングが実現したんです。約15日間の録音期間(←こんなに短かったとは、初耳!)で、もちろん頑張ってオケ録りもしましたけど、ディズニーランドとかもちゃっかり遊びに行きました(笑)。
(ここで、初めて太田裕美のコンサートにいらっしゃった方は?と会場に質問を投げかける太田さん。(T)では「42人くらいかしら?」。(K)では「やっぱり会場が大きいから、初めての方も多いみたいですね。87人くらい?」。)
〜ここまで、色々な太田裕美を知って頂けたとは思いますが、初めての方はあまり知らない曲ばっかりだったかも知れませんね、次からは皆さんの知っている曲を歌います。
〜ピアノ〜
12.赤いハイヒール(1976年・6thSG&AL『手作りの画集』)
〜スタンドマイク〜
13.※日替わりメニュー(1)
T)僕は君の涙
(1998年・AL『魂のピリオド』)
K)九月の雨
(1977年・9thSG&AL『こけてぃっしゅ』)
14.木綿のハンカチーフ(1975年・4thSG&AL『心が風邪を引いた日』)
〜次は、新しい曲を歌います。去年の7月に録音して、8月と9月の朝ドラの劇中歌として流れた曲です。ドラマが昭和を舞台にしているのでディレクターが「昭和のラブソングを歌うとしたら太田裕美だ」と言うことで声を掛けて頂いたようです。デビューして長い年月を経て、いまだに新しい曲、それもラブソングを歌わせて頂けるというのは、本当に嬉しい、歌手として幸せなことですね。〜(K)でも平成ではなく昭和だから、ワタシって・・・(←自虐?)もうすぐ平成も終わっちゃうし、まあそれでもいいか(会場、笑)。
〜ピアノ〜
15.恋のうた(2017年・ALサントラ『ひよっこ』)
16.恋愛遊戯(1977・8thSG&AL『こけてぃっしゅ』
17.ひぐらし(1975・AL『心が風邪を引いた日』)
(いつになく説得力あるニュアンスボーカルを披露しながら、最後はスタンディングでピアノを連打する、ノリノリの太田さん。ちなみに♪京都に着くわ〜 の後の叫び声は、(T)「次は京都!」、(K)「ここは京都!」。)
☆アンコール。メンバー全員、オリジナルTシャツで登場。
〜ピアノ〜
18.※日替わりメニュー(2)
T)魂のピリオド
(1998年・AL『魂のピリオド』)

K)七つの願いごと
(1975・AL『心が風邪を引いた日』)
〜(K)(7/28京都は関西に台風が接近する中の開催。)今日は、白川さん、そして天国にいる大瀧さんの誕生日なので、どうしてもコンサートがしたかったんです。「ハッピーバースデー!!」(と叫んでラス曲へ。)
〜中央スタンドマイク〜
19.さらばシベリア鉄道(1980年・19thSG&AL『12月の旅人』)
(☆京都会場では、会場全体がスタンディングで太田さんに応える。よかったですわ。)
(EG&B&Per:岩井眞一、AG:西海孝、Drums:楠均)

 さて、今回の怒涛の連チャンコンサートでのhiroc-fontana、本文にも書いたような「太田裕美の新たな1ページ」を感じながらも一方ではやはり、例えば東京のアンコールで「魂のピリオド」のイントロが流れたときや、京都で「夏風通信」の歌声に浸っていたとき、まさに自分の中の様々な思い出の場所にタイムマシーンに乗って訪れている自分がいて、いつの間にやら涙が頬を伝い、指でそれを幾度となく拭わざるを得なかったのでした。
 太田さんはいつも、「今もこうして歌い続けられることに、感謝している」と言われるけれど、ワタシこそ、あなたが今も変わらず素敵な声で歌い続けていてくれることに感謝せずにはおれないのです。そんなオンリーワンな歌手のファンの一人として生きて来られたワタシこそ、幸せだな〜と、しみじみ思わされた2週間でしたわ。