梅雨鬱~つゆうつ~

昨日も雨、今日も雨、毎日、雨。

久々に梅雨らしい梅雨、と言えば確かにそうですけれど、やはり日照時間が足りないとどうしても気分も落ち込みがちで、なかなか晴れやかな気持ちにはなれない気がします。

このブログも今年こそは月3回ぐらいは更新しよう、と年初は意気込んでいたのですが、ここにきて、とうとう息切れ。というか、全く書く気が起こらなくて。3週間もご無沙汰してしまいました。

もちろん、忙しさもあったのですが、やはりこの天候の影響も、少なからず・・・。

 

太陽が眩しかったから。

これ、カミュの小説「異邦人」で、殺人で死刑宣告された主人公・ムルソーが述べた、その殺人動機。

 異邦人 (新潮文庫)

梅雨が鬱陶しかったから。

これは、私がブログを更新しなかった動機(笑)。どうでもいいか。

 

梅雨でイライラしているのはワタシだけではないはずで、それはワタシも良く分かっていまして。

でも、今朝遭遇したことは、あまりにもムカついたので、ここにぶちまけさせていただいて(苦笑)、ワタシひとり、梅雨鬱の憂さ晴らしをさせて頂こうかと。

 

ワタシ、最寄り駅から職場まで25分くらい歩かなくてはいけなくて、雨の時期は毎年、ユウウツなんですね。今日も大雨というほどではなかったけれど、傘をさしていても霧状に舞う雨がじっとりとズボン裾を万遍なく湿らしていくような、なんとも厭らしい雨で、朝から得も言われぬ不快感を抱えながら、職場への道を急いでいたのです。

そうしたらいきなり、さしている傘にガーン!と誰かの傘がぶつかって、その勢いで転びそうになったのです、ワタシ。一体、なに???と思って前を見たら、傘をさしたまま、すごい勢いで自転車を漕いでいく若い女の後ろ姿が・・・。

ごめんなさい、の一言もなければ、お詫びの目礼さえもなし。

そのときのワタシの心の中は、怒りで雷鳴が轟いていたのですが、

「朝っぱらからあんな非常識なバカ女に怒るだけ、損だ。」

そう思い直して、敢えて何も考えずに勤務先に向かおうと歩き始めたのです。そして職場に近い舗道に差し掛かった時、後ろからまた自転車が近づいてきたのがわかったのです。車道とはガードで隔てられたその歩道は狭く、人ひとりが通るのがやっと。とはいえこちらは車道からすると右側、歩行者優先なので、ちょっと先まで歩いて道が広くなったら後ろの自転車に道を譲ろうと、そのまま歩き続けていたんですね。

そして、歩道の道幅が少し広くなったところで脇によけて自転車に道を譲ったのです。

そこまで、わずか約15秒~20秒くらい。

そうしたら、ワタシを自転車で追い越した中年女がなんと、自転車を止めて振り向きざま、憎々しげな目でジロリ、とワタシを睨んだのです!

うわ!なんだこいつ!

ワタシ、思わず「なんだよ!」とその中年女を怒鳴りつけてしまいました。

そうしたらその女、また自転車を漕いでスーッと去って行ってしまって。

いくら急いでいたって、たったの十数秒がどれほどに影響するのか(ましてや自ら自転車を止めて、他人を睨む時間があるくらいなのに)。

イライラしたからと言って、睨んだ相手が懐にナイフを忍ばせた凶暴な人間だったら、中年女はいったいどうするのか。

冷静に考えれば、とても馬鹿げた行為をしているにも関わらず、そんなことさえ露(つゆ)にも考えさせることなく、彼女を怒りに任せた愚かな行為に走らせたもの、それもやはり「梅雨鬱」だったのかもしれない、なんて今は思っています。。。

リンゴの輪郭~椎名林檎『三毒史』~

三毒史(初回限定生産盤)

三毒史(初回限定生産盤)

 

  何故、椎名林檎のアルバムはここまで中毒性があるのだろう。

  聴き込むほどに新しい鉱脈の発見があって、そこからまた、深く掘り進んでいきたくなる。今回の作品も、そう。発売から約ひと月、そうしてワタシが掘り当てた「鉱脈」のいくつかを独りよがりにつらつら書き連ねようと思います。

 

 「ワタシは、自分の音楽を聴いてくれる方々を選んでいるのかもしれない。

 才能ある者の高飛車な発言のように捉えられかねない彼女の言葉の裏側には、今回のアルバム収録曲「急がば回れ」に答えがあるような気がする。

 色気才能カリスマ性 そんなふぁっとした物じゃ誰一人救えないわいな

 プロフェッショナルとは何 仕事内容だけで能弁に述べよ 

 愛だろう云うなれば (「急がば回れ椎名林檎

 プロフェッショナルな存在として、彼女の音楽を好んで聴く者に対して、その期待に存分に応えること、それこそが「愛」である、と。

 先に出演したNHKの音楽番組「SONGS」で、彼女はこんなことも言っていた。

愛は知性にしか宿らない。

 アルバム『三毒』のテーマは、人の善心を害する三種の煩悩とされる、“貪瞋癡(とんじんち)”。それをオープニング曲のタイトル「鶏と蛇と豚」(貪(むさぼり=豚)、瞋(怒り=蛇)、癡(迷妄=鶏))で表している。

 そのうち「癡」こそ現代社会の病理であるとして、林檎さんは先の「愛は知性にしか~」という言葉を繰り出して、昨今のSNSなどで、深く考えることもせず瞬時に指先が叩き出す単語ひとつで人をこの世から抹殺できてしまうこの時代に警鐘を鳴らしている。「急がば回れ」は、“持っていない物をさも持っているかのように言う「プライド迷子」)”に対して、「洒落気に品性・知性 欲しけりゃ 相手を最優先に生きるしかない」と喝破。これこそが「愛」だということなのだろう。しかし一方で恐らく、裏返せばこれがまさしく自らの「愚痴(=癡)」であることも自覚してのことなのだ。何とも、用意周到。

 さて、デビュー後の初期林檎三部作(『無罪』『勝訴』『カルキ』)から“事変”を経ての三部作(『三文ゴシップ』『日出処』そして『三毒』)を並べてみたとき、本作は特に初期三部作にあった"刹那性"が影を潜め、40歳(近年の彼女のキイワード「不惑」)を迎え、時を経て誰もが向かう"死"を見据えた内容、つまり人生を「点」ではなく「線」として捉えたような世界観に大きく変化してきているように思える。

 無けなしの命がひとつ だうせなら使い果たさうぜ 「獣ゆく細道」

 大丈夫、ちゃんと時は過ぎていくから。「マ・シェリ

 高が知れた未来。短く切上げて消え去りたい。「TOKYO」

 人生なんて飽く気ないね まして若さはあつちう間 「長く短い祭」

 ああいのちの使い道は すれ違いざま笑って返すほんの一瞬

                      「目抜き通り」 

 これらの文節から滲み出てくるのは、しごく、真っ当ないきざま。溢れ出る才気で一世風靡し時代を生き抜いた一人の人物が、人生の折り返し地点を迎えようとしているこのとき、次々と閃く人生観のあれこれが、短い言葉並べの中で実に的確に語られているような気がする。

 驚くべきは、こうしたフレーズが、一聴したところでは難解な言葉の羅列とノイジーな音壁の中から、聴くほどに靄の中から姿を現しては鮮烈に心へと刺さってくること。恐らくは椎名林檎の音楽の中において、歌詞はその言葉の持つ本来のイントネーションを最大限に生かしてメロディーの中に紡がれているのだろう。だから、タイムラグを経てポン!と耳栓が外れたようにその言葉・詞世界がズンズンと響いてくるブレイクポイントが、必ずや彼女の音楽には、あるのだ。

 メロディーについても同様。クセのある歌い回しやシカケだらけのアレンジに耳慣れたころに必ずや気づく、メジャーセブンスコードで上下に展開するサビのメロディーの美しさ、カタルシス。今回それを強く感じたのは「ジユーダム」。いわゆる"ガッテン"のテーマ曲として一見コミカルな、チャールストンのリズムとラグタイム風アレンジで彩られたこの作品、しかしサビの「人生まあ生きていりゃ いろいろあるけれど~」という部分での芳醇なメロディー展開、その解放感・カタルシスにいつの間にやらノックアウト。

 今回はほとんどのアレンジも林檎さん本人が手掛けていて、オープニングの読経をはじめ、名うてミュージシャンの手に汗握る「21世紀のジャズ・セッション」の熱量がそのまま記録されたような「TOKYO」(なんと5拍子、ベスト・テイク!)をはじめ、穏やかに削ぎ落とされた音の裏に蠢く16ビートの妖しさに酔わされる「長く短い祭」、どの曲もシカケたっぷりで本当に飽きさせない。

 既発曲が多く収録されていることを批判する向きも多い本作、でもhiroc-fontana的にはそれが却ってアルバムではアクセントにもなっているように思えたし、5年間に発表れた曲がこの並びでしっかりアルバムコンセプトの一翼を担っていること、そこもまた"用意周到な林檎ちゃん"が垣間見えて、やっぱりこの人はスゴイ、と思わされたりするのだ。たとえば2曲目で宮本浩次に「誰も通れぬ程狭き道をゆけ」と歌わせれば、トータス松本にはエンディング前の曲で「飛び出しておいで目抜き通りへ!」と歌わせる。2曲とも既出の曲なのに、きちんとアルバムの中で最重要の位置を占めている。

 いつもながら曲の並びはシンメトリーで、今回は英題で並べたとき初めてそれがハッキリしたりするあたりも"中二病・林檎ちゃん"らしいシカケ。そしてその英題こそが、曲の本質を表していたりするから、そこも見逃してはいけないのだ。(「EGO-ism(マ・シェリ)」「Off-Line(TOKYO)」「Victims急がば回れ)」といった具合。)

 そんなわけで、今回も熱に浮かされたように聴きまくっているこの作品。中にはデビュー作『無罪モラトリアム』に原点回帰したようなシンプルな骨太ビート・ロック(「どん底まで」「至上の人生」)もあって、密かに恐れているのは、旧三部作&新三部作で一周したものとして、ここのところ林檎さんがあちこちで発言しているように「裏方に回る」宣言したらどうしようかしら・・・と。

 いや、まだまだやり終えるには早いですわよね、次回も期待しますよ!林檎さん。(願いを込めて。)

Pre 40th Anniversary Seiko Matsuda Concert Tour 2019 ~聖子愛にめざめて~

 JAZZコンサートに続いて聖子さんに会うのは今年2回目。6月8日、さいたまスーパーアリーナでの"Seiko's Singles Collection" コンサートツアー初日に行って来ました。
 高崎線に乗り、さいたま新都心駅に到着すると、ホームは見るからに半世紀以上の生を重ねているであろう貫禄を見せる、妙齢の女性たちで溢れ返っていました。みな一様に、笑顔を輝かせて…。
 歌手生活プレ40周年ですものね。聖子さんがデビューした年に生まれた人でさえ、今年で満39歳になるわけで、ファンの高齢化は仕方のないことですわね。そんななか、中年ゲイのワタシ、一人きりでも何の違和感もなく集団に溶け込んでしまって、何とも言えない安堵を覚えていることに気づいたりもしまして。それが現実だし、それで良いのよね、もう。
 今回、会場に向かう群衆に紛れながら、同じくファンの高齢化著しい太田裕美さんのコンサートとは雰囲気が随分違うな、なんてことも感じたのです。その違いは、方や男性ファン中心、方や女性ファン中心であるということはもちろんだけれど、それぞれのコンサートでそれぞれのファンが期待しているものがそもそも違うこと、それが大きいのだな、なんて思ったのです。
 太田裕美さんのコンサートでは、各自の思いを引っさげて、さて今回はどんな曲を用意して我々をあっと言わせてくれるのかと、ファンは太田さんの挑戦を受けて立つというような、気合いのようなものを感じることが多くてね。まあよく言えば秘めた熱量が高いのだろうし、悪く言ってしまうと、いささかマニアックが過ぎる印象なのですね。
 一方、聖子さんのコンサートに向かうファンは一様に肩の力が抜けていて、まるで花火大会の会場に集まる善男善女のようで。華やかなものを見て一瞬でも晴れやかな気分になって帰れれば御の字。そんな感じでね、まさにお祭り気分という印象なのです。ハッピを着ている人さえチラホラ見かけたりして。
 それでね。
 ワタシも開演を前に、意識を切り替えることにしたのです。今日は、いや今日こそは、難しく考えたりせずにとことん、この雰囲気に飲まれてしまおうとね。だって、なんたって、プレ40周年、シングルコレクションのコンサートなんですもの!
 実はワタシ、今回のコンサートに出向く直前に、椎名林檎ちゃんの2018年のライブのブルーレイを鑑賞しましてね。選曲から振付け、ステージ構成、衣装やライティングに至るまで、考え抜かれて凝りに凝ったそのクオリティに圧倒されてしまい…。さてこの林檎ショックのあとで、良くも悪くも前世紀から引き継いだ様式を頑なに守り続けている(この表現、奥歯にモノが挟まってますよね…)聖子たんのコンサートを、果たしてフツーに楽しめるものか、不安を抱いての参戦だったのですよ。

Seiko Matsuda Concert Tour 2018 Merry-go-round(初回限定盤) [Blu-ray]

 しかしそんな不安をよそに、いざコンサートがスタートすれば、呆れるほどに変わらない聖子さんは今回もとてもお元気に登場されて、1ミリのブレもなく王道の聖子ワールドをこれでもかと繰り広げてくれるわけで。ブリブリのアイドルソング永遠の少女宣言したあとは、しっとりとバラード(ときに演歌?)を歌ってオトナアピール。もちろん歌の合間にはいつもながらリラックスした会場との掛け合いが楽しい“ガハハトーク”が挟まれるわけで、その何の迷いもない安定感を前にワタシの不安など一瞬で遥か遠くに吹き飛ばされてしまってね。その上、途中にはシングルしばりだからこそのレア曲披露のサプライズもありで、まあ結局は、ワタシ自身の意識改革の結果も半分くらいあるかも知れないけれど(笑)、フタを開ければ終始、このひとときを心から楽しんでいるワタシがいた、というわけね。

  強いて言うなら選曲の方は、せっかくなら35周年記念リリースの好編集盤『we love Seiko』

We Love SEIKO Deluxe Edition-35th Anniversary 松田聖子 究極オールタイムベスト 50+2 Songs-

くらい各時代バランスの取れたものだったら言うことなしだったのだけど、それでも往年のナンバーワンソングはほとんど歌ってくれたわけだし、要は花火見物だと思えば、この構成で文句の付けようはないのよね、やっぱり。

 何より今回も、聖子さん自身が歌うことをとても楽しんでいるのが伝わって来て(ナマ歌とフルコーラス歌唱が例年より多かった気がするのだけど、どうだったのでしょうか?)それだけでも「いいもの見たな」という思いにさせてもらったのはたしかでして。最後には、こうした形でのコンサートが、ファンに対する聖子さんの精一杯の愛であるなら、あれこれ文句つける前にこっちも精一杯、愛をもって聖子さんに答えるのがきっと正解なのだ、なんてことを今さらながら確信して、さいアリを後にしたワタシなのです。今までにないくらいの、「聖子愛♡」を噛み締めながら。

(追記)

「どの公演にご来場されるお客様にも楽しんでいただけますように、セットリスト/演出内容等をネット上(ブログ/TwitterFacebook等その他SNSを含む)へ書き込む等の行為は、禁止とさせていただきます。」(by松田聖子オフィシャルサイト)

 言いたいことはわかります・・・けどね・・・ということで、今回は何だかボヤケた内容になってしまいまして、ゴメンナサイ。

太田裕美コンサート2019~コア層向けの45周年~

【メーカー特典あり】ステキのキセキ/桜月夜(アナログ盤)(オリジナル・ロゴ・ステッカー付) [Analog]

 令和元年5月12日(日)、太田さんのホームグラウンドとも言える渋谷、さくらホールで開催された「太田裕美コンサート2019」に、ラッキーにも参戦することができました。

 年々“プラチナ化”しているソロコンのチケットですが、それでも今回も700席規模の会場(京都は1000人規模ですが)でのコンサートに頑ななまでにこだわっている(?)太田さん、「ステキのキセキ」の歌詞にある「しあわせ未満、足るを知る」ということなのも知れませんけどね・・・。太田さんらしいと言えば「らしい」感じ。

 「11月に東京フォーラムで45周年記念コンサート開催!」というビッグニュース発表があったわけですが、そのときも、「体力が持つかしら・・・」とちょっと不安を漏らされてましたっけ。

 そう、裕美さんはいままでずっと、最大の武器であり、同時に弱点でもあるご自分の「ノド」をいかに上手に手なずけて付き合うか、闘ってきたのだと思う。だから、近年では声が絶好調とも思われる今だからこそ、この好調を少しでもキープしながら長く歌い続けていきたい・・・。会場選びにもそんな太田さんの思いもヒシヒシと伝わってきて、だから毎回、こんなにも客席と一体となった感動的なステージになるのだと、今回のコンサートを観て聴いて、改めて思ったのです。そして、そんなコンサートを体験できることは、ファンとして本当にシアワセであると。

 

 さて今回のレポは、1か月少しあとに京都公演も控えておりますので、セットリストは非公表とさせて頂くことといたしまして、“雰囲気レポ”と言う難しい手法(苦笑)に挑戦でございます。

 冒頭、スタンドマイクで登場した太田さんは、淡くブラウンに染めたショートヘア、ピンク基調の春めいたブラウスとスカートという出で立ち。バックは昨年から加わった楠均さんのドラムスに、EG&B&Perの岩井眞一さん、AGの西海孝さんという気ごころの知れたメンバーで、リズム取りの難しいオープニング曲(hiroc-fontana、大好きなレア曲でした!)から息の合った演奏で固めて、冒頭から「キタ~!」という感じでした。

 しかし客席の方はいつもながらお行儀良く「歌に集中する」姿勢のファンが多くて、前半は、ノリがもうひとつ。途中、太田さんが「(久しぶりに演奏した)この曲なら、絶対、手拍子が来ると思ったのに・・・。」と呟く場面があって、それは私も少し残念でした。ジョイントコンサートではおそらく気軽に手拍子するオバちゃんたちで一杯なのに、ソロコンでのコアなファンの「反応の薄さ」に少し残念な思いもあったようで、もちろんその後は客席も奮起して俄然、ステージと客席の一体感は高まったような気がするのですが、どちらかと言えば「手拍子したい派」のhiroc-fontana、次回からは最初から一生懸命、客席から太田さんを応援したい、と思った次第・・・。

 さて、太田さんはTwitterでも今回のコンサートは「コアな内容になる!」と宣言されていたそうですが、夏発売のアルバム曲を中心に披露された20曲弱の演奏曲の中で、シングル系の作品は7曲のみ(もちろんそこには5月発売の新曲2曲も含まれているわけですが)というコアぶり(?笑)で、まあ、ソロコンはいつもそんな感じとは言え、毎回「どんな曲をやってくれるのか?」と、こんなにもワクワクさせてくれるのは、自らの作品を愛して大事に歌ってくれる太田さんが、決して我々の期待を裏切らない選曲をしてくれるからなのでしょうね。そしてそれがファンにとっては決して「楽しませてあげる」というような押しつけがましいものではなく、太田さんご自身が楽しんで選曲していることがわかるからなのでしょう。「本当はこの曲は嫌いだけど、受けがイイから仕方なく歌うわ・・」なんていうのは、太田裕美さんには絶対に無い。ステージで楽しそうに歌い演奏する太田さんから、それを確信できるのです。

 今回も、全曲原曲キイのまま素晴らしい声を会場に響かせていた太田さん、トークでは銀色夏生(山本みき子)さんと久しぶりに連絡を取ったこと、下田逸郎さんと再会して「変わらなさ(ブレなさ)」に敬服した話、桑田くん(太田さんは佳祐さんをそう呼びます)と歌番組で共演したときにあの隠れた名曲を褒められた一部では有名な逸話など、色々なハナシが飛び出して、これもやはり太田さんのソロコンならではの楽しみであることを改めて実感。メンバー紹介ではドラムスの楠さんの下の名前をド忘れして、「クスノキクスオでいいわよね?」と笑わせてくれたり。安室ちゃんをはじめ、曲間ではほとんど喋らないアーティストも少なくない中、ごく自然なトークでありながら、曲間でも毎回楽しませてくれる太田裕美という人は、つくづくスゴイ人ですわ。。。(さださんと双璧?苦笑)

 新曲はもちろん歌ってくれて、「45周年なので45回転のアナログシングル・・・」という話が出て私も思わず「そうだったのか!」と膝を叩いたのですが、「でもレコード会社に聞いたらあっさり否定された」と(笑)。そしてその新曲紹介では、「ステキのキセキ」は太田さん自身が元気になれる曲、「桜月夜」はマジメに頑張って来た皆さんに元気を贈る曲です、というコメントがあって、ワタシはその言葉を聞いてしまったせいか、その歌声を聴きながら、込み上げてくるものを抑えるのに必死でした。

 それからもうひとつ、新曲紹介のときに太田さん「45周年企画の“第一弾”です」という発言をたしかにしておられて、フォーラムで45の周年コンサートの前に、何かまたリリースされるのかも、という仄かな期待も・・・。

 そんなわけで、今回も神々しいまでに輝くお姿に絶好調な歌声、そしてレア曲満載で楽しませてくれたソロコンサート、11月の久々に大きなステージでのコンサートも楽しみではありますが、負荷の少ない範囲で、変わらぬ部分と挑戦する部分をこれからも絶妙な采配でブレンドしながら、歌い続けていって頂きたい。それが、45年のファンのひとりとしての願いであります。

映画館で観た『ROMA』

『ROMA/ローマ』オリジナル・サウンドトラック

 『ROMA』。大型連休の終りに、鑑賞できました。

 こちら、動画配信サイト“Netflix”のオリジナル作品ということで、時代にすっかり乗り遅れたワタクシメ、観たいとは思っていたものの当面は鑑賞を諦めていたのですが、銀座の単館系映画館で上映されていることを知り、出掛けて参りました。

 先のアカデミー賞で作品賞こそ逃したものの、監督賞、外国語映画賞、撮影賞に輝いたこの作品、都内でも3館のみ、それも最終回のみの上映ということで、座席は満席。(思いのほか年配者が多かったのは、やはり「時代遅れ」世代だから?苦笑)

 ストーリーも、音楽も、出演者の演技にしても、実に淡々とした印象の映画ではありますが、監督のアルフォンソ・キュアロン氏に近い年代のワタシにとって、監督の実体験に基づいたストーリーと言われるこの作品、何だかとても“沁み”ました。

 モノクロで、BGMもごく控えめに長回しを多用した映像は、そのまま自分がまるで1970年のメキシコに舞い戻ったように感じさせてくれるのです(勿論、私がメキシコにいたことはありませんが・・・(笑))。決して説明的ではなく、カメラの目線で観た、そのままのエピソードを切り取ったようなシーンが続くのです。

 しかし、それらシーンがすべて、実は計算され尽した美しい構図ばかりで成り立っていて、だからこそいつの間に、ワタシたちの脳ミソが無意識に脚色しまくってきた、あの頃の「美しい」思い出たちと見事に重なり合っていることに気付き、モノクロであるのは、観客それぞれがそれぞれの色を付けて(つまりは脚色して)あの頃を思い出すには必要不可欠な演出でもあるということがわかってくるのです。

 淡々としてはいるものの、かつての日本映画やイタリア映画のような、少しとぼけたような不思議な笑いも所々散りばめられていて、そのあたりもノスタルジアを呼び起こす要素なのかも知れません。

 この作品の主題は、一言で言えば主人公である家政婦が見た、雇い主の「家族の崩壊と再生の物語」ということになるのでしょうか。家政婦はその家族の「崩壊」に巻き込まれ、しかし「再生」の場面ではより違った形でそれに加わっていくのです。そしてそこに描かれているのは、人種や身分を超えた「一緒に暮らす者たちの絆」であり、これは面白いことにアカデミー賞外国語映画賞を争った「万引き家族」と共通していたりもします。

万引き家族

 ワタシ、前にも書いたことがあるのですが、実家が床屋をしておりまして、子供の頃はまだ、福島から集団就職で上京して我が家に住み込みで働いていたお姉さんたち3人が一緒に暮らしていまして、それこそこの映画にあるように、今日はどのお姉ちゃんと一緒に寝ようか、などと毎日楽しみにするくらいに彼女たちが大好きで懐いていたんですね。(その後、彼女らのうち二人はお嫁に行ってしまい、いまはどこにいるのかわかりません。一人はその後も長く家族として一緒に過ごしたのですが、突然帰らぬ人に。その時ワタシは人目もはばからず大泣きしました・・・。)

 ですから、この作品の中で雇い主の子供たちが主人公のメキシコ原住民系の家政婦を姉のように慕っていることや、家族全員がテレビを見ている輪に主人公が自然に加わる姿などは、ごくありふれた懐かしいエピソードとして観ることが出来たのです。もちろん、一緒に住んでいた叔母(床屋の主人でした)や両親が、従業員である彼女たちに小言を言ったり、(子供から見ても)理不尽に当たり散らす場面もありましたが、やはりこの映画のシーンのように、皆で囲む毎日の食卓には、いつも笑顔がいっぱいあったように記憶しています。 

 少しメランコリックになり過ぎましたね・・・話を「ROMA」に戻します(汗)。

 メキシコ人の家政婦が主人公であるこの映画がアカデミー賞で「ウケた」ことが、アカデミー特有の、マイノリティへの過剰な配慮だとして捉えてしまうと、少々視野を狭めてしまうような気もします。やはり、こうした「同じ屋根の下」「人間同士の心のつながり」をごくさりげなく映している一方で、たとえ夫婦や同郷の者でも簡単に繋がることが出来ないエピソード(この映画でそれは「男女関係」なのですが)、それこそが本来の家族の崩壊の引き金になるわけで、そのあたりをきちんと描いているところも評価すべきと思います。

 そして何より、繰り返しにはなりますが、この映画のカメラワークの美しさは、出色です。

 冒頭は、主人公の家政婦がせっせとブラシで洗う「床」に写る、壁に囲まれた中庭の空。目線は「下」です。床に写った空は、バケツで流した水が押し寄せるたび、濁った泡に覆われ、形が歪むのです。そしてしばらくすると水は穏やかに落ち着いて、また四角く切り取られた空の形が、戻る。そこを飛行機の影が横切る。

 エンディングでは、主人公が洗濯物を干すために屋上に上がるシーンで終わります。主人公が登って行った鉄の階段をカメラが見上げると、冒頭で床に写っていた中庭の空が、美しく晴れ渡っている。ここでの目線は「上」。そして、ゆっくり、清々と横切る飛行機の姿が。

 こんなに美しく印象的なプロローグとエピローグ、最近の映画では観たことがありません。

 ちなみにタイトルの『ROMA』は、舞台となるメキシコシティにある、コロニア・ローマという街の名前であるとともに、逆さに読むと『AMOR』になるということ。スペイン語で「愛」という意味のようですね。

 自信をもってオススメしたい作品です。

 

(そうそう、この作品、劇場公開ではR-15指定なのですが、ネタバレさせてしまうと途中、青年の見事なオールヌードシーン(それもフロントショット!です)が出てきまして、そこではやっぱりワタシ、ドキドキしてしまいまして・・・思えばそのあたりも何だか、ウブだったあの頃を思い出して、どこか「懐かしい」感覚でございました。(笑))  

平成の終りに刻む、カミングアウト

 皆様、10日間の“大GW”、いかがお過ごしでしょうか。

 ワタシはGWスタートから連日、普段はなかなか会えない仲間たちから様々なお誘いを頂きまして、まるで人生の総決算か(?汗)とも言うべき充実した日々を過ごさせて頂いております。ありがたいことですね。

 その中でも今日、奇しくも平成の終りの日に会った友達は、ワタシが最初に勤めた会社の同期であり、入社当初から意気投合して、その後足掛け30年に亘る付き合いの旧友でして、会うたびに喧々諤々と人生論を交わすことのできる、個人的には「竹馬の友」とも言うべき存在。

 それで馴染みの場所で飲みながら話をしているうちに、彼がいま不倫しているというハナシを嬉々としてし始めて(奥様には内緒で、おミズの女の子(大陸の人)と個人的に連絡し合っているとかいう、よくあるハナシ・・まだ肉体関係には至っていないのだけが「救い」だが、双方ともに不倫であることを意識したうえで、なお店の外で逢瀬を重ねている状態)、そのうちにワタシ、いつの間にやらそのおミズの子の方の側に立って彼女の気持ちを代弁し、彼の行動をなんとか止めようと、話していたのです。

 たとえ彼女が今のままで楽しいとかシアワセだとか言っているとしても、いざ深い関係になれば、彼女の気持ちもきっと変わってくるから、その時には責任を取らなけらばならないよ。そのリスクがあることを考えているのかい?なんて。(いかにもノンケ風にね(苦笑)。)

 でもね。こうしてワタシの放った言葉、この信憑性を担保するにはね、どうしてもワタシの「経験談」で補足することが必要になってしまってね。

 それで、やっぱりこれは「カミングアウトせざるを得ない・・・」、そういう状況になってしまったのです。

 それで・・・。

 じ、実は俺、付き合う相手は男、なんだよね。

 で、妻子持ちやらなんやら、今までいろんな相手と付き合ってきて、今の俺がいるのだよ。だから、彼女の気持ちもわかるんだよ。

 とね。

 そうしたら、その友達。「ああ、わかるよ、前から、そんな気がしていた。」と。「だってさ、恋愛とかの話になるといつも適当に誤魔化して、自分の事はほとんど話さなかったもんな。」と。(・・・その通り。汗)

 そんなわけで、ガチガチのノンケで過去にはホモフォビアとも取れる発言もしていた彼へのカミングアウトは、なんとも呆気なく終了したのでした・・・(冷汗)。

 しかし。彼にとっては想像を超える「ゲイ」という人種に関して、興味が尽きないらしく・・・。

 その後の彼からの「質問攻め」にワタシは辟易し、誤解を解くために彼に「コーチングする」過程では、被差別者がしがちな「無意識なる差別者への“反撃”」(「それこそが、差別なんだよ、なぜわからない?」)を出し勝ちになるのを抑えるのに必死となる状態でして、カミングアウトそのものよりも、難しいのはカミングアウトの「その後」であることを痛感した次第。勉強になりました。

 とはいえ、そのガチガチノンケの友達も話題のドラマ「きのう何食べた?

www.tv-tokyo.co.jp

は、楽しみに観ているんだ、なんて言っていて、セックスばかりではないゲイの日常があることは何となく想像できていたらしい。そうした意味でもこの日本でも、ゲイへの理解は少しずつ進んでいるのだな、と、そして最近の関連ドラマの影響も、少なくないのだな、と。少しだけホッとした。

 そんな、どこか象徴的な、hiroc-fontanaの平成の終りでした。  

 

ココロだけ・マーメイド

 新年度が始まって以来、ホント忙しくて、息つく暇もなくGWを迎えようとしています。季節は進んで柔らかく穏やかな空気に包まれているのに、身体の方はガチガチに凝り固まっている状態でして、ぎゅうぎゅう詰めの通勤電車から窓の外の春の景色を眺めながら、こんなことを考えていました。

 ああ、風に舞っている、あの薄桃色の花びらになれたらいいのに。

 シャガールの絵のように、この緩んだ空気の中を泳げたらいいのに。

 まるで、人魚のように。。。

 

f:id:hiroc-fontana:20190424001549j:plain

 そうね。こんな風に・・・って、違うわよ! これは人・面・魚!

 

 

f:id:hiroc-fontana:20190424001714j:plain

 そうよ。ロマンチックな映画だったわね、これ・・・って! 半・魚・人!よ!

 

 ワタシがその時、思っていたのは、これよ!


松田聖子 小麦色のマーメイド

大好きな聖子ソング。「小麦色のマーメイド」でした。

 

ということで、長い前フリ、失礼しました(笑)。今回が人魚にまつわる曲を集めてみました。


安室奈美恵 / 「人魚」Music Video

「人魚」といえば、これですね。作曲はなんと、筒美京平センセ。本家はNOKKOさんですが、安室ちゃんのほか、ワタシの敬愛する太田裕美さんもカバーしています。

 

 


十月の人魚 岡田有希子

 このアルバムは地味ながら名盤でした。このタイトル曲もしっとりとしたイメージの名曲で、松任谷正隆さんの作・編曲。

 

 

 夫婦つながりで、ユーミンのこの曲。こちらもどこか荘厳な雰囲気を漂わす名曲。『SURF & SNOW』(1980)より。


松任谷 由実 人魚になりたい

 ユーミンをもう一曲。こちらもミステリアスな名曲です。『そしてもう一度夢見るだろう』(2009)より。


人魚姫の夢☆Dream of Little Mermaid~Yumi Matsutouya

 

 続いては、こちら。


人魚姫 ~mermaid~ 中山美穂  MIHO NAKAYAMA

 一転して、バブリーな感じ(笑)。でも、この曲個人的に大好きでした。バックのボディコン3人姐とのダンスコラボもなかなかステキでしたね。

  

 続いては本家(?)ディズニーの曲も入れておきましょうか。


Jodi Benson - Part of Your World (From "The Little Mermaid")

 美しい歌声で、心が洗われますね。

 

 本当は、この曲を大フィーチャーしたかったのですけど、あいにく動画がなくて。

Fantôme

 宇多田ヒカルの「人魚」でした。

 

 こうしてみると、なんともロマンティックな曲の多いこと!

 心だけでも、浮遊体験できたような気がしませんか?

 では、素敵なGWをお過ごしくださいね。