なぜチャートはつまらなくなったのか

オリコンチャート1位ヒットソング集500〈上〉1968~1985
 ヒットチャートに面白味が無くなって久しい。まあ、自分の年齢から考えて今だにチャートを追っていたら、それも変だろうが。ヒットチャートのシステムが崩壊し始めたのは、「おにゃん子」ブームの頃からだと俺は見ている。「夕焼けニャンニャン」を見ていなければ誰も知らないような素人の女の子が次々と初登場1位になることによって、ベストテン1位というステータスがあっという間に失墜してしまった。その頃から、「1位でも、聴いた事のない曲」が急激に増え、ヒット曲は多くの人々が共有するものでは無くなってしまった。
 今、アーティストが長命化している。10年前のチャートを見るとB'z、ミスチル、ドリカム、安室、スピッツなど、今もトップ10常連のアーティストばかりだ。浜崎あゆみ宇多田ヒカルも何年トップに君臨していることだろう。サザンは70年代から第一線だ。それは日本のポピュラーミュージックの成熟と、消費者物価における音楽ソフトの相対的廉価化が進んだことによって、「大衆レベルにおいて一旦スタンダード化したものは、安心を求める心理によってリピーターを生みやすい」ということから来ているではないか?と俺は分析しているが、どうだろうか。つまり一定レベルでリスナーを楽しませる実力があり手ごろな価格であれば、「新譜出たし、とりあえず買っとこうかな」と深く考えずに手を伸ばしやすい、ということだ。
 少し本題から逸れたが、その「アーティスト長命化」も、チャートをつまらなくしている原因だということ。同じような顔ぶれが入れ替わり立ちかわり初登場で上位に食い込み、数週間後には消えていく。トップ10常連は増えるばかりだから、当然圏内での滞在期間は短くなりヒットサイクルは短くなる。消耗されるばかりの音楽たち。
 思えばあの頃のベストテン番組なんて、ハガキリクエストだけで決めていたものもあったんだから、のんびりした時代だったんだね。