おフランスなENKA〜五輪真弓

 最近、中年ゲイのhiroc-fontanaが感覚的になんだかしっくりくるな〜と思う音楽。それが、五輪真弓さんなのよね。GOLDEN☆BEST deluxe 五輪真弓 コンプリート・シングルコレクション
 五輪さんと言えば、おフランス。というのが我々40代のイメージじゃないかな?と思うのだけど、どうかしら?Wikiにも“1977年、アダモの紹介によりフランスでも人気を博し現地にてアルバムも発表”としっかり紹介されているし、やっぱり1978年の出世作さよならだけは言わないで」、そして1980年発表の代表曲「恋人よ」に顕著な、しっとりとしたロマンチックなサウンド・イメージの印象が強いからでしょうね、きっと。 ジャン、ジャッジャ〜ン、とやたら大袈裟な(失礼、ドラマティ〜ックな)ピアノイントロだとか、タリラタラリラ〜と流暢に流れるバンドネオンの音だとか、使われる楽器たちもしっかり“おフランス”してるカンジだったしね。
 ただ、当時まだ中高生だった俺にとって、そんな五輪さんの曲は重くて重くて、そして何だかツマラナイ印象だった。初めて聴く曲でも次のメロディー展開が予想できちゃう、みたいなね。実際、当時凝っていたギターで弾いてみてもコード進行もすっごくオーソドックスだったしね。
 つまり、エンカっぽいな〜と(笑)。どこがおフランス?って感じだったのね、当時の印象としては。「運命さだめ)」だとか「合鍵」だとか、漢字のタイトル曲が多いってのも、その印象に拍車をかけていたかも。「問わず煙草」なんて、え?梓みちよ?みたいなね(笑)。
 それがね、中年ゲイとして成長した(笑)今の俺には、なんだかとってもしっくりくる音楽に変化したのよね。奇を衒(てら)わない、音楽理論に則った王道のマイナー・メロディーに、俳句のように“行間”に余韻を残す独特の散文詩ユーミンだったかみゆきだったかが驚愕したという「マラソン人(びと)」「駐車場(ちゅうしゃば)」といった、古風なようでいて新しい言葉選びも、なんだかズンズン心に響いて。。。そのうえ、歌唱力も表現力も申し分ない。というか、生半可じゃない巧さ。そう、そんな五輪真弓さんは、我々新人類世代にとっての“ENKA”なのかもしれないな、と。いま、そんな風に思っているのだ。日常を忘れて、安心してその歌の世界だけに、どっぷり浸れる・・・そんなタイプの音楽。
 でも実はそんな真弓さんのルーツは、アメリカンなカントリー・フォーク&ロックであって、いきなりのロス録音!で衝撃デビューを飾った72年当時は、“和製キャロル・キング”なんて呼ばれていたらしい。スマッシュ・ヒットしたデビュー曲「少女」は確かにそんな感じの乾いたサウンドで、俺、おフランスな曲たちの狭間で時折垣間見られる五輪さんのこのテのタイプの曲もけっこう好きなのよね。(アジアで大ヒットした「心の友」とかがそうね。)「恋人よ」がヒットしていた頃に、ザ・ベストテンやら何やらの歌番組で垣間見せた彼女のトークの意外な面白さ、その“フツーのねえちゃん”風なキャラからして、五輪さんの本質は本当はこちらの方にあったのかもしれないのだけど。(そういえば妖怪人間ベラだとか、久米さんとかからルックスについても色々言われてたよね、当時・・・涙)
 80年代までは、女性シンガー・ソング・ライターとしてはユーミン、みゆきに続く“第三の女王”の位置に確かにいた五輪さん。それがいつの間にその座を“カリスマ主婦&ドラマ主題歌の女王”まりやたんにあっけなく奪われてしまい・・・。
 とはいえ今年はデビュー40周年、必ずや彼女の再評価の動きが出てくることを願って、今回のエントリーを閉じます。

  • この曲が一番好き!「残り火」(1978年)

  • 淡谷さんも愛した定番曲「恋人よ」(1980年)

  • 名曲。デビュー曲「少女」(1972年)