「10years」渡辺美里

 先日、音楽好きの親友、Aさんと話していて、渡辺美里の話題になったのね。そして、二人ともボロクソにコキ下ろしたの(苦笑)。
 一体彼女、何をしたかったんだろう?? みたいにね。
 ロックというには中途半端。ポップスというにはリキ入りすぎ。ribbonジャケ写は思いっきりブリッコなのに、実物は「・・・」。あげく最近は何故か徳永ヒデアキまがいのカバー・シンガーになっちゃったりして。My Favorite Songs~うたの木シネマ~
 でもね。そのあと、中古CD屋で彼女のべスト盤『She Loves YouShe loves youが250円で売られているのを見つけたら、思わず「即買い」している俺がいたの(笑)。
 「My Revolution」「虹を見たかい」「サマータイムブルース」「夏が来た!」・・・収録曲のタイトルを見ただけで、彼女の残した“哀愁青春ポップ”の数々が何だかとても懐かしくなって。そう、俺、彼女の曲は嫌いじゃないのよ、というか、「好き」なの実は(Aさん、ごめんなさいね 笑)。
 そして10年ぶりくらいに聴き直して、何となく分かったような気がした。
 渡辺美里渡辺美里」以外になれなかった人なんだ、ってね。そうなりたくて“なった”のではなく、あくまでも消去法でそうなったんだ。。。みたいなね。
 実際、デビューアルバムのタイトル曲「eyes」なんかを聴くと、完全にアイドル・ポップスだったりする。eyes
 それが、小室哲哉をはじめ大江千里岡村靖幸伊秩弘将ら爽爽たるメンバーからいち早く楽曲提供を受けてヒットを飛ばすうちに、アイドルの枠に収まりきれないまま、しかしその後にうようよ出てきた、元気でカワイイ“ガールポップ勢”(永井真理子とか久宝留理子とか松田樹里亜とか)の軽みにはイマイチ溶け込めず、西武ドームをはじめとするアリーナツアー等での“ライブ・シンガー”としての名声だけが先行してしまって、結局は「アーティスト・渡辺美里」としてのアイデンティティは、一般的には確かなものが認知されないまま、ここまで来ちゃったのではないかとね、何となく。
 まあ、それが「渡辺美里」なんだから、それで良いのだけどね。
 
 さて、今回のタイトルにした「10years」(1988年 作詞:渡辺美里、作曲:大江千里)。この曲が俺、大好きでね。美里さんの詞はホント青臭くって、正直聴いていてムズムズしちゃうような感じもあるのだけど、いざ大江くんの哀愁メロディーにのるとこれがまた切なさ全開で。

時の速さについてゆけずに
夢だけが両手からこぼれ落ちたよ
あれから10年も
この先10年も
行きづまり うずくまり かけずりまわり
この街に この朝に この掌に
大切なものは何か 今もみつけられないよ

 なんて、あの一生懸命な声で歌われちゃうとね。
 そう、俺も実は今だに青臭くて。結局はずっと変われない自分がいて。そして10年前の自分・・・20年前の自分・・・30年前の自分、と、ずっと串刺しになってあの頃の自分が蘇ってくるような気がしちゃうのよね。この曲を聴くと今でも。
 うん、美里さんは美里さんでいいんですよ、そのままで。ゴメンナサイ。