太田裕美を愁う

 10月6日のNHK深夜番組「音楽・夢くらぶ」で久々に太田裕美さんを見た。この番組、最近では数少ない大人向けの音楽番組だと思う。
http://www.nhk.or.jp/yumeclub/backnum/index.html
 共演は伊勢正三氏。太田裕美さんが歌ったのは定番の「木綿のハンカチーフ」とアレンジを変えて披露された「九月の雨」の2曲。そしてデュエットで「なごり雪」も聴かせてくれた。
 注目の裕美さんは、・・・ライトの加減か、すこしくたびれて見えて、あらまあ〜。そして肝心の歌の方は・・・ファルセットも良く出ていて声の好調ぶりが伺えたけど・・・正直、なんか良くないな〜物足りないな〜、という感じで。ネットでの評価は、彼女のことをを70年代のヒット歌手の一人としてしか見ていない大部分の視聴者にとっては、とても懐かしいね〜、声も容姿も変わらないね〜、みたいな好評価だったようだけど、長年裕美さんのファンをしている俺には「木綿−」も「九月の雨」も、残念ながら、それほど心に響かなくて。これらのヒット曲はすでに単なる太田裕美という歌手を表す「記号」でしかなくなってしまったのかも、と思えてしまった。もしかすると、裕美さん本人の中では、既にこれらの歌には何も発見がなくなっているのではないだろうか、とさえ思う。幸せな母親としての日常を送っている太田裕美さんには、「木綿−」の世界も、「九月の雨」の世界も、あまりに遠くなりすぎてしまって。また同時に、長く歌い過ぎたゆえに、これらの歌に慣れ過ぎてしまってね。
 でも、歌手は、それじゃいけないと思う。本来は、そんなギャップをものともせず、歌に封じ込められた世界を、歌うたびごとに鮮やかに甦らせることができる歌手、あるいは、歌うたびごとに別の解釈を加えて新しい表現ができる歌手、それこそが真の歌手の実力、なのかもしれないな、なんて思う。例えばひばりさんのようにね...。残念ながら今の裕美さんはそうでは無くなってしまっいて、旬を過ぎた普通のナツメロ歌手になりつつあるのかな、と思えてしまった夜なのであった。
 それではファンとしてあまりに悲しいので、裕美さんの「今」に相応しい新曲をそろそろ出して頂きたいと、強く願うこのごろ。ライバルであり盟友でもあるもうひとりのヒロミ、岩崎宏美さんの最近の充実ぶりを思うと、余計にそう感じてしまうのだ。魂のピリオドただ・愛のためにだけ
(岩崎さんも9月に「音楽・夢くらぶ」に出演、堂々のパフォーマンスを繰り広げていたので・・・。)