小林武史の残像〜My Little Lover『akko』

 う〜ん、この秋は10月に出たElton Johnの2年ぶり新作から始まって、太田裕美さんは22年ぶりにニューアルバム出しちゃうし、Billy Joelは来日しちゃうしで、個人的に嬉しい出来事の連続だった。そして唐突にマイラバの新作!も〜どうしようかしら、みたいな。嬉しい悲鳴ね。
 でもちょっと待て、このマイラバのニューアルバム。エイ●ックスから出てるじゃん?タイトル『akko』って?悪い冗談?(昔、とんねルずがアルバム出すときにタイトルを「サザンオールスターズ」にしちゃおう、みたいなジョークを言ってたのを思い出した。)
 入手してみてさらに驚いたのは、AKKOが「ひみつのアッコちゃん」に扮したコスプレ写真はもはや「論外」として(笑)、この作品には小林武史はほとんど絡んでないってこと・・・。これまで思いっきり彼を持ち上げてきた俺としては「がっかりだよ!」と思わず叫びたくなった。 
 しかし入手してからではもう遅いわけで、半ば諦めの気持ちを抱えて聴き始めたこの『akko』。ところが。ここからが予想外の展開だった。フタを開ければ、これはマイラバサウンドそのものだったのである。それもファーストアルバム『evergreen』に近いイメージで、とても快活でビビッド。ここのところ続いていたヒーリング系サウンドも味わい深くて良かったけれど、今回AKKOが中心となってエイ●ックス系のアーティストを起用して作られたというサウンドは、紛れも無い原初のマイラバサウンドだったというわけ。その証拠にこのアルバム、ベストアルバムとの2枚組みなんだけど、1枚目と2枚目でほとんど違和感が無いのね。
 「Hello Again〜昔からある場所」を彷彿とさせるどこか懐かしい胸キュン・ギター炸裂の曲(「予感」「り・ぼん」「パケット」など)を中心に、名曲「Delicacy」や「YES〜free flower〜」系統のクールなアレンジの曲(「ショータイム」「迷い猫」)を散りばめ、あとはキャンディ・ポップとも言えるような軟弱だけどカラフルなポップスが盛り沢山。そう、これが出てきた頃のマイラバだったんだよね。
 作家陣は俺の知らない人ばかりだけど、AKKOを中心として、彼らには「これぞマイラバ」というイメージがしっかりあったようだ。それはつまり小林武史の残像でもあるわけで、なんだか、黒澤明ぬきで無理やり作った骨抜きクロサワ映画「雨あがる」に近いものを感じちゃったりもするんだけど、このアルバム『akko』は、ボーカルの当人AKKOに、前と変わらずしっかり当事者としてマイラバを守ろうという強い意志がある分、十分に聞くに値するクオリティが保てたんじゃないかな、という気がする。