My Little Lover『そらのしるし』

そらのしるし
 マイラバがひっそりと新譜を発表してたのね。シングル「音のない世界/時のベル」「blue sky」収録、と言ってもそれがどれほどの「引き」になるのかしら、なんてことを思いつつ、ファンの私もひっそりと購入(笑)。
 そこには変わらずのマイラバワールドがあって。Akkoソロ・プロジェクトになってから『akko』『IDENTITY』そして本作ですでに3作目になるのだけど、ギターの藤井くんはとっくの昔に抜け、元ダンナの小林武史くんもほとんどタッチしていないにも関わらず、ソロになってからの作品はより初期のマイラバに回帰しようとしている感じがして、そこが面白い。 特にAkko本人のプロデュースとなった本作は、「Hello Again」ばりの哀愁ギターが印象的な「ほしつきよる」や、初期マイラバの特徴でもあったブラス・セクションがフィーチャーされた「時のベル」をはじめ、ポップでオシャレで可愛くて純な、あのころのマイラバをもう一度、というような強い意思が感じられるのよね。Akkoさんって、予想以上に頑固かも(笑)。
 そもそも俺がマイラバのファンになったのは、やっぱり小林武史のプロジェクトであったところが大きかったのね。単調に刻むベースやドラムの心地良さとか、凝ったコード進行&メロディーとか、ブラスやギターの“生”なカンジとかが、個人的に大好きでね。2000年代に入って小林さんが「Bank Band」なんかに加わる中で、マイラバもどんどんアコースティックで優しい路線に変わっていっても、それはそれでまた味わい深くて。ところがいつの間に小林・Akko夫妻は離婚してマイラバソロ・プロジェクトになっていて・・・でも俺はまだマイラバを聴いてる、ってなんだかおかしいよね(笑)。
 初期のマイラバはどこかピチカート・ファイヴの亜流みたいな印象もあって、モデルっぽいカワイイ女の子をフィーチャーした、ちょっとエッチな(笑)プロデューサーのおアソビ、みたいなイメージだったのよね、俺には。ま、ピチカートがおフランスなカンジならマイラバはブリティッシュ、みたいなね。それで、Akkoが音大を出ていてそのボーカルがいくらキュートであったとしても、あくまでも勝負はサウンド、と言うカンジで聴いていた。
 でも今回、この新作を聴いてアッと気がついたのは、やっぱりマイラバサウンドAkkoのボーカルあってこそなんだ、ということ。彼女のボーカル自体、やたらアイドルチックだった初期の頃から、近年は優しくしなやかなものに変わっているのだけど、そのか細いようでフワッとこちらを包むような、そよ風のような声を聴いただけで「やっぱりマイラバだ」とホッとしている自分に改めて気付いたのよね。そう、やっぱりAkkoこそ、マイラバだったんだって。
 ファンって、フシギだよね。例えば自分が応援しているアーティストが、時とともに変貌を遂げても、その人が好きだからこそ、応援し続ける。そのアーティストの今と昔を比べれば、すでに別物になってしまったとしても、やっぱりその人なりの“エッセンス”のようなものをその中に見出して、その人にいつまでも自分の夢を投影し続けるのよね。(こう書きながらhiroc-fontanaはそんなアーティストの一人として、松田聖子という人のことを思い浮かべているのです。笑)俺にとってマイラバも、そんな存在なのかもしれないし、Akkoはそれがわかっているから、今もガンコにマイラバを続けているのかしら・・・なんてね。
 最後に、どうでも良いことだけど、このメルヘンチックなジャケット、ちょっとビリー・ジョエルの『River of Dreams』River of Dreamsに似てると思った。
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