セイコ・アルバム探訪8〜『1992 Nouvelle Vague』

1992 Nouvelle Vague 今年も残すところ今日を合わせてあと2日。早いものです。
 デビューして3ディケイズを重ねた聖子さん、新しい10年はどうなるの?なんてことをちょっと前に記事にしたばかりだと思っていたのに、あっという間にその最初の1年目にあたる2011年も終わりです。
 今年の聖子さん、前半はほとんど動きなく、変わり映えしないセルフ・プロデュース・アルバム『Cherish』発売と同タイトルを冠した夏のツアー以外は目立った活動もなくて、ほとんど諦め状態だったところへ、いきなりの竹内まりやとのコラボ・シングル発表&紅白・大河ドラマ出演と、ファンにとっては年末にかけてビッグ・ニュースが立て続けに届いて、これからの10年にいくばくかの期待を持たせて1年を締めくくってくれたのよね。それだけでも上出来(苦笑)。
 さて、このブログでも聖子さんの新しい10年を機に今年、聖子さんの過去のアルバムレビュー企画を始めたのだけど、それもいつの間に頓挫してしまって。お待たせしました、久しぶりに企画復活です(って、誰も待ってないか・・汗)。
 『1992 Nouvelle Vague』。1992年3月発売の20thアルバム。もうすぐ発売後満20年・・・。セルフ・プロデュース作品としては『We Are Love』『Eternal』に続いて3作目にあたるのだけど、全曲の作詞・作曲に聖子さんが絡んだのはこの『1992 Nouvelle Vague』が初めてで、その意味では“暗黒のセルフ時代”の幕開けとなる記念すべきアルバムと言えるのかも(笑)。そう、ジョン・小倉(良)・リーブスと初めてタッグを組んだのもこの作品が初めてなのね。ちなみにアレンジは全曲、鳥山雄司さん。こちらもおなじみね。
 ジャケ写も篠山さんの手を離れて、いよいよ聖子の90年代に新しい波“Nouvelle Vague”が到来よ!!という宣言。今となればトホホ・・・な印象しかないのだけど、91年のアメリカ進出ではそこそこの成果を残しながらも、国内ではバッシングの嵐だった当時のことを思えば、聖子自身は短いながらも現地のショウビズ界に実際に身を置いて自分に対する評価・手応えを確かに感じていたであろうし、それを何とか自分自身で作り出す音楽に昇華することで、日本に認知させたかったのだろう。そんな意気込みが感じられる作品ではある。(ちょっと空回りしちゃったけどね・・・笑)
 そんな俺も、リリースされた当時はよく聴いたアルバムなのよね、これ。聖子、やるじゃん、って思ってた。実際に今聴いても、決して悪くないと思うのだ。おそらく、聖子さんも小倉ちゃんもまだ、この当時は新鮮な気持ちで曲づくりをしていたのは確実で、びっくりするようなパクリは満載ながら(笑)、ことメロディーに関しては斬新なものも少なくなくて、純粋にイイ曲が多いように思う。これが、90年代後半まで二人でダラダラとあーでもない・こーでもないをしているうちに、煮詰まってしまったのね、きっと。その意味で、アルバムチャート最高位8位・売上げ18万枚(『Eternal』より好成績だった)という、まずまずの成績をこのアルバムで残してしまったことが、その後の聖子たんの勘違いを招いてしまった原因には違いなく、聖子ファンとしては思わず「これさえ無ければ…」と言いたくなるアルバム、かも。
 そうそう、久しぶりに聴いて、このアルバムでの聖子さんの声の絶好調さに改めて感動したのね。キャリア30年以上のなかで、デビュー10年経過したこのころが、シンガーとしては恐らく一番油が乗っていたのね。この時期にせめてセルフ・カバーでもしていてくれたら、と悔やまれるわ。。。そんなわけでこのアルバム、聖子絶好調期のボーカルが聴けるだけでも“買い”よ。もう廃盤ですけどね(笑)。
 曲紹介です。全作詞:Seiko Matsuda、全作曲:Seiko Matsuda & Ryo Ogura、全編曲:Yuji Toriyama。

 冒頭、フランス語のセリフ入り。歌い出しの、澄んだ美声にゾクゾクする。冒頭「♪ 重く深い 霧がはれるわ/ 何かが今 変わる瞬間」から始まって「♪ 中傷など 耳をかさずに/ ただ 自分の道を信じて」とセイコさん、言いたいことを吐き出して。「♪ 始まるのよ 新しい私」。一生懸命自分を鼓舞してる感じが何だか健気でね。サウンドはマドンナ「Like A Prayer」を拝借。  

  • Believe In Love

 落ち着いた印象のミディアムテンポの曲。聖子さんのダビング・コーラスをはじめアイデア満載の曲で、当時結構好きだったんだけどね。。。その後マルティカの「LOVE...THY WILL BE DONE」を聴いて、あら、これが原曲だったのね・・・と。ダマされたわ。そのまんまじゃん!

  • 永遠の島

 王道の哀愁バラード。とはいえサビの「「♪ 今この星のきらめきで」のあたりの意表を衝いた転調をはじめ、メロディー展開に独特のヒネリがあって耳に残る作品。

  • I want you so bad

 まんま、ジャネット。おまけにマドンナ「Open Your Heart」風アレンジまで登場。この当時の聖子たんは、カバーでさえなければオリジナルよ!と思っていたフシが。声が綺麗なこの時期にR&Bテイストの曲はまだサマになってない。

  • Shinin' Shinin'

 続いては「Keep It Together」風ダンス・ミュージック。俺、基本的にこのテのサウンドが大好きなのね。メロディーはちょっと平凡だけど、ギターのチョーキングによるイントロ、間奏のトロンボーンなど、アレンジの良さで全体にクールに仕上がっている。

  • きっと、また逢える・・

 92年2月発売の30枚目のシングル。最高位4位、32万枚の売上。聖子さん主演のドラマ「おとなの選択」主題歌としてヒット。ピアノイントロから聖子バラードの真骨頂という感じで、今聴くともったりとした歌いグセの萌芽が見えるものの、美声期でもあり、ボーカルの爽やかさが勝っていて、それが心地良い。佳曲。

  • Baby,Baby

 シャッフル・ビートのオールディーズ風キャンディ・ポップ。とくればこれはマドンナ「トゥルー・ブルー」もしくは「チェリッシュ」(きゃあ!)を意識してるのね。でもこのタイプの曲は、聖子たんが歌うとそんな意図に反してフツーのセイコ・ポップスになってしまうというだけの話なのにね(笑)。

  • あなたのすべてになりたい

 本アルバム中の王道バラード3曲目は、のちにシングルカットされてチャート31位を記録した名曲。A-B-A-B-C-Cという変則的な曲構成かつ、この曲においてもメロディー展開が独特で、聖子&小倉の出会いが良い面で発揮されているように思う。ただ、詞の方は余りにラブ濃厚!と言う感じで、ゲンナリ(笑)

  • You wanna know my name?

 粘っこいリズムの90年代クラブ・ミュージック風サウンド。歌詞の方は「もっと○○ちょうだい」的な内容で、これもちょっとねえ。それを歌う聖子さんのリズムのノリも声もちょっと軽薄すぎて、全体にチグハグな印象。凡作。

  • Fight and Believe

 壮大な印象のエンディング曲。「♪ Fight and believe/ あなたにめぐり逢い 気付いた/ まだこの世には 信じあうものがあること」。オープニング曲では「自分だけを信じて」みたいに、あれだけ突っ張っていたのにもう?みたいなね。でも切なげに歌い上げる聖子さんのボーカルが素敵だから認めてあげちゃおっと(笑)。ベタだけど、エンディングとしてなかなかイイ曲です。こういう曲をもっと聖子さんは大事にライブで歌うべき。
 
 結局は半分以上、貶(けな)して終わっちゃったかしら?ごめんなさいね。
 とにかく、2012年こそは、セイコさんに本当の意味での“Nouvelle Vague”が訪れますように!!今回も長文におつきあい、ありがとうございました。