セイコ・ソングス11〜「ジングルベルも聞こえない」

hiroc-fontana2007-12-22

 さりげな〜く再開のセイコ・ソングス。
 シーズン2突入!てか(笑)。
 クリスマスも近いってことで、今回は82年のクリ・アル(こんな略し方アリ?)『金色のリボン』収録の「ジングルベルも聞こえない」。俺は日本でイチバン、クリスマスが似合う歌手ってやっぱり、セイコさんじゃないかな?と思うのだけど、皆さんいかがですか?最新曲「クリスマスの夜」なんかを聴いても、(セイコさんがいくらおばさんになっても)ああやっぱりこの聖なる声こそこの季節にピッタリだよね、なんて思えてしまって、ちょっと感動したりして。
 そんな聖子さんの数多いクリ・ソン(こんな略し方アリ?)のレパートリーの中からhiroc-fontanaが選ぶ1曲というと、断然この曲なのよね。ちなみに『金色のリボン』に収められたオリジナル曲3曲(「Blue Christmas」「星のファンタジー」そしてこの「ジングルベルも〜」)は捨てがたい佳曲ばかりで、このアルバムの発売が、上質のポップスの詰め合わせ的名作アルバム『Candy』発表のわずか1ヵ月後だったことを思うと、「赤いスイートピー」から「小麦色のマーメイド」を経て『金色のリボン』まで、1982年の聖子スタッフの充実しきった仕事ぶりに驚くばかりだ。
 「ジングルベルも聞こえない」の主役はスキー場でクリスマスを迎えたカップル。ちょっとユーみンの「ロッジで待つクリスマス」とシチュエーションが似ているけど、こちらのカップルの方が1世代若い感じ(笑)。他の女の子に馴れ馴れしくスキーを教えた彼に焼きもちを焼いて夜のロッジを飛び出してきた彼女。早回しのような可愛らしいイントロに続いて、唐突に聖子さんの歌が始まる。

悪い子なの ちょっと拗ねて
リフトさえも止まったゲレンデ
ゆるいスロープ 歩いて登り
遠い街のともしび 見ていたの

 夜のゲレンデに座って手をこすりながら白い息を吐く女の子。ピンクのウェアに白いファーのついたフードと手袋。雪の彼方にゆれる街の灯り。いつもながら、シチュエーションを鮮やかに切り取って映像化させる松本隆さんの詞だ。そして「金色のリボンをかけた」箱に入った彼へのクリスマス・プレゼントを雪の中に埋めてしまうわ、いいでしょ?と歌う、聖子さんのコケティッシュなボーカルが歌の中の女の子に命を吹き込む。
 俺が好きなのは2コーラス目。彼女がいないのに気付いて彼がゲレンデを登ってくる。

イヤ 大嫌い もう 来ないでよ
あなたの胸に雪玉 ぶつけて
ジングルベルも聞こえない

 この、彼が迎えに来てくれた(やっぱり!の)嬉しさと、まだ彼の浮気心を許しきれない気持ちと、すねていた自分に対する後ろめたさが入り混じった、主人公の女の子の複雑な感情。それを当時20才の聖子さんが、みずみずしく表現してみせる。「小麦色のマーメイド」では「好きよ 嫌いよ」と揺れる乙女心を言葉にしていた聖子さん。この曲では「イヤ 大嫌い(大好き)もう 来ないでよ(来てくれてありがとう)」と、言葉にならない気持ちを滲ませる。このニュアンスたっぷりのボーカルが最高だ。最初はふくれっ面でも、雪玉を彼に投げながら、最後はじゃれあってハッピーエンド。聴くたびにそんな映像が甦る、とてもハッピーなクリスマス・ソングなのだ。
 でも、こんなカップルって、もう80年代の「遺物」だよねやっぱり。。。それは否めない(笑)