ソニーの商魂に完敗〜『Christmas Songs』

Seiko Matsuda Christmas Songs
 クリスマス・ベスト・アルバム。インスト2曲を含めて全20曲収録。お腹いっぱい。
 それにしても、セイコがユニバーサルミュージックに移籍してからというもの、デビュー30周年は来年だっていうのに、アニバーサリーにかこつけてヤケのようにあれこれ繰り出してくるソニーの商魂逞しさにはホント、呆れるを通り越して尊敬すら覚えてしまう。全盛期(80年代)のオリジナルアルバムをブルースペック版で再発したのを始め、ベストアルバム『BIBLE』シリーズの決定版『Diamond Bible』を5枚組でリリース。そして、それら再発・編集盤から洩れた名曲たちをちゃっかり集めたようなこの『Christmas Songs』が登場。・・・30周年は、来年だっちゅうに!(笑)
 そして、やっぱりファンの俺は購買意欲を刺激されてしまい、ついつい注文してしまうのです。ソニーの思うツボ。
 でもこれ、結構良いアルバムでした。ソニーは前回セイコがユニバーサルに移籍した96〜98年の間に、セイコの冬ウタを集めた『Winter Tales』と、夏ウタを集めた『Seaside 〜Summer Tales〜』、ウェディングソングを集めた『Seiko Celebration』という3枚の編集アルバムを出しているのだけど、そのクリスマス・バージョンが今回のアルバムになるわけね。これらの編集アルバム、オリジナル・アルバムの中では目立たない良曲の再発見が出来たり、各時代の名曲が万遍なくチョイスされているので、セイコの自作曲が80年代の曲の合間で意外に箸休め的な役割を担って光っていたりで、なかなかイイのよね。このさいソニーさん、春ウタ集とか秋ウタ集はもちろん、「失恋ソングス」とか「お花ソングス」とか、「セイコで世界一周」とか(笑)、編集盤、バンバン出してみれば?
 さて、今回のクリスマス・アルバム、たぶん91年にリリースされた『Christmas Tree』が原型になっていて、7曲がカブってます。『Christmas Tree』は名作クリ・アルの『金色のリボン』収録のクリスマス・ソングを中心に、外国曲のカバー2曲(「Christmas Tree」&「Last Christmas」)にクリスマスの定番シングル「Pearl-White Eve」、89年の『Precios Moment』から「二人だけのChristmas」をピックアップした編集盤だったのだけど、現在は残念ながら廃盤。
 そこで今回の『Christmas Songs』では、カブった7曲に加え、それに93年発売のジミ〜なクリ・アルの『A Time for Love』(これも廃盤)から3曲、2007年のシングル「クリスマスの夜」とそのカップリング曲の「Merry Christmas」、あとはこれもジミジミな05年のアルバム『Under the beautiful stars』から「クリスマスの願い」、さらに地味ジミジミな93年のアルバム『sweet memories'93』から少女時代の娘サヤカとのデュエットが聴ける「Twinkle Star,Shining Star」などが収録されているほか、80年代のオリジナルアルバムからもクリスマスにまつわる曲を何曲かピックアップしての全20曲。ほんとに盛りだくさんな1枚。
 20曲通して聴くと、改めて、クリスマス・ソングが一番似合うのはセイコさんだよな〜なんて思えてしまう。ホーリーなる声ね(笑)。ただやっぱり30年間の声の変遷は隠し切れなかったりもして、82年の「Blue Christmas」「ジングルベルも聞こえない」「恋人がサンタクロース」のボーカルのあまりの素晴らしさに、あとの曲はかすんでしまう気がするほど。意外に良いなと思えた近年の「クリスマスの夜」にしても、歌い方に妙なクセがあって(「♪クリスマス・ウ〜のよ・オ〜るに・イ〜♪」みたいなね)、聴きづらくて仕方ない。でもね、『A Time for Love』からの1曲「外は白い雪」(小倉良との凶作・・・もとい、共作!)がとても良い曲で、これが本作の大きな収穫だったかも。