セイコ・アルバム探訪2016冬編〜その1『金色のリボン』

 これから2回連続で、Stereo Saund誌監修によるSACD(スーパー・オーディオCD)盤で再発されたクリスマス・アルバム2枚を取り上げます。
 今回は、1982年冬に発売された『金色のリボン』。
 ユーミン三部作(赤スイ、渚バル、小麦色)の連続大ヒットで、タダのトップアイドルから、時代を切り拓くアーティストのひとりに変貌した感のあった、1982年の聖子たん。ユーミンブランドをまとって以来、ナニゲに高値感を醸し出し始めて、アルバムも『Pineapple』『Candy』の2作がニューミュージック系の大御所作品を凌ぐ大傑作&大ヒットになって、もう絶好調だったこの年の年末に、さらにこんな素敵なクリスマス・アルバムも出してしまうという、まさに当時の聖子スタッフ、離れ業よね。
 そんな作品がSACDとして、アルバムとしては例の10万円BOX以来となる再リリース。収録曲的には1984年の編集盤『Seiko Avenue』Seiko・Avenue、2009年の『Christmas SongsSeiko Matsuda Christmas Songsでほとんどリイシュー済みとはいえ、やはりオリジナルのパッケージで且つイイ音での再発というのは、価値があるというもの(とはいえ、ワタシの場合、まだSACDプレーヤーは持っていないのだけど・・・涙)。
 さて、聴いてみましょう(ハイレゾウォークマンちゃん、オネガイ!(笑))。まずは「クリスマス・メドレー」。赤鼻のトナカイ、ジングルベル、サンタクロースがやってくる・・・。ワオ!スタンダードなクリスマスソングの数々を、丁寧に歌いあげる20歳の聖子ちゃんが確かにマイクの前にいる!シンセのバックがちょっと安っぽいのがイタダケナイものの、このテの企画にありがちな、肌が泡立つような恥ずかしさもなく、しっかりと聖子節でチャーミングに童謡を歌いあげる聖子さんの天才ぶりに改めて感動。続くはユーミンのカバー「恋人がサンタクロース」。最後にはサンタに遠い街に連れて行かれてしまう“隣のオシャレなお姉さん”こそがユーミンで、このウタの主人公は聖子ちゃんしかいないわ、というくらいにピッタリ自分の歌にしている。音程甘くくぐもりがちな低音も、なんと瑞々しいボーカルが再現。
 続くはオリジナル3曲。「Blue Christmas」は財津和夫さん作曲のバラード。“♪青い〜っ キャンド〜ル〜 火をと〜っ もして〜」。しっとりと透明感のある声を絶妙にしゃくり上げながら切なく歌いあげる聖子たん。くっきりとした音で聴くと、声の閉じ方に独特の情感がこもっていて、本当にうまいな〜、と思わされる。続いてはセイコ・ソングスでも取り上げた「ジングルベルも聞こえない」。“♪イヤ!来ない〜でよ”。この、リアルなニュアンス。恋人同士の痴話ゲンカが、ホント、愛くるしく思えてくる。さて、発売当時は2枚組LPで、45回転アルバムの企画盤で「Blue Christmas」と題された1枚目の最後を飾るのは、大村雅朗さん作曲のワルツのバラード「星のファンタジー」。SACD的には、静かな低音の歌い出しで微妙にファルセットを絡めた優しさ溢れるボーカルが、聴きどころ。この曲、もう1枚のクリ・アル『SNOW GARDEN』では「雪のファンタジー」として詞を変えて再録されるのだけど、個人的にはこの若くて新鮮な情感にあふれる82年バージョンの方が好きかな。
 さて、2枚組LPの2枚目は題して「Seiko ensemble」。シングル「小麦色のマーメイド」をオープニングに、聖子たんのラジオ番組主題歌「HAPPY SUNDAY」、シングル「風立ちぬ」のカップリング「Romance」、映画のサントラから「野の花にそよ風〜サブテーマ」」、「野ばらのエチュード」のLPテイクという、アルバム未収録の5曲に、「赤スイ」「チェリブラ」など、季節的に違和感の無い人気曲を寄せ集めた(苦笑)10曲。
 この中ではやはり1曲だけ「夏!」な(苦笑)、「小麦色のマーメイド」のアンニュイなボーカルが鮮やかに再現されていて、やっぱり素晴らしいな〜、と。打ち寄せる波をイメージさせるイントロのギター・リフレインの艶やかな音色もさることながら、「♪プールに飛び込む あ〜なた〜」の「た〜」のところが吐息声になりながら「た〜」としっかり甘えて終わるところなんかが今回のリマスタで見事に再現されていて、もう、たまりませんわ。
 LPテイクの「野ばらのエチュード」は、テンポがシングルバージョンよりゆったりしていて、なるほど収録アルバム『Candy』のシックなイメージに近いとはいえ、歌い方がずいぶんとブリッコな印象で、ああこれじゃ、あのアルバムでは浮いてしまったかもね。でも今聴くと、ある意味、新鮮で、貴重だわ。
 
 さて、次回は1987年冬発売の『Snow Garden』の予定です。いつになるか、わからないけど・・・。