裏ベスト〜Self Collection〜なんてね。

 太田裕美さんのアルバム紙ジャケボックス『オール・ソングス・コレクション』も無事に企画実現と相成って、あとは手元に届くのを待つだけ、というところ(同時に4万円の請求書も届いちゃうわけだけど・・・)。
 ま、CDは最終的に2枚追加になって全部で25枚になって、1枚あたり1,592円となるわけで、リマスターされる音質を考えれば割安かな?とも思ったりもするけどね。ただこの価格、廉価盤のCD選書シリーズや百恵BOXの1枚あたり価格とホトンド同じ価格設定だったりもするから、2枚追加、というのも最初から予定されていたんじゃないの?とか思ったりして。そもそもソニーさんが企画した今回の「オーダーメイド・ファクトリー」での“予約が規定数に達したら製品化”というのも、最初から製品化が決まってた上での巧妙な販売戦略だったんじゃないの?とか疑い出せばキリがないのだけれども(締切り間近になっての予約数の爆発的な伸びは、カナリ胡散臭かったしね)。かの「太田裕美オフィシャルサイト」の掲示板でもその辺が騒がれていて、結構カゲキなことも書いてあるのよね。でもまあ、俺としてはかなり満足な今回のBOX内容ではあるし、DVDが付かないのは残念ではあるけれど、それは裕美さんの意向を反映したもののようでもあるし(だって、いくらファンサービスだって言ったって、本人がイヤなことを無理強いするのはファンとしてどうかと思うし・・)。やっぱり無事製品化されることを素直に喜びたい、と思うのだ。うれちい。
 前置きが長くなりましたが、今回はアルバムBOX企画実現を記念して架空の「太田裕美裏ベスト〜Self Collection」を作って遊んじゃう企画。hiroc-fontanaプロデュースによる、太田裕美オリジナル曲からの隠れた名曲を集めた企画盤を作ってみました。(いい歳してこんなこと・・・なんて言わないでね!)

太田裕美〜Self Collection』
1.水鏡(78年『海が泣いている』より)
 まずはLA録音でのクリアで透き通ったサウンドと絵画的な松本隆氏による格調高い詞世界が構築される、瑞々しいミディアムのこの曲でオープニング。
2.午後のプレリュード(79年『Feelin' Summer』より)
 続いては地味目なアルバム『Feelin' Summer』の中から、裕美さんのファルセットが冴えたオシャレで爽やかなボサノバの名曲をピックアップ。
3.四季絵巻(77年シングル「恋人たちの100の偽り」B面)
 ポップな流れで3曲目はシングルカップリングでアルバム未収録曲。アップテンポでカーペンターズを踏襲した筒美流のおいしいメロディーが溢れ出すイイ感じの曲。松本氏による四季になぞらえた「恋人たちの風景」描写も素晴らしい、これぞ隠れた名曲。
4.セカンド・ラン〜二番館興行(81年『君と歩いた青春』より)
 このあたりでお得意の「青春回顧ソング」を1曲。メジャーとマイナーが混在した裕美さん自作のドラマチックなメロディーに乗せて、キャンパス生活の甘酸っぱい思い出が鮮やかに蘇る佳曲。作詞は小此木七枝子。
5.水彩画の日々(98年『魂のピリオド』より)
 切ない曲の流れでこの曲。イマの裕美さんを代表する1曲でもある。大人の女性特有の、平凡で幸せな生活の中にふとよぎる、たとえようも無い焦燥感・不安感を見事に切り取ってゴールデントリオ復活を印象付けた1曲。
6.煉瓦荘(78年『ELEGANCE』より)
 切ない曲の最高峰。「しあわせ未満」の続編ともいうべきこの曲は、1970年前後の鮮烈な時代の空気を閉じ込めたようなまさに松本氏自身の「私小説」といえる内容を構築していて、太田裕美作品における松本氏の詞世界の総括的作品。
7.一つの朝(76年『12ページの詩集』より)
 重い曲が続いたあとは爽やかな裕美さんのファルセットを。サビのダブルレコーディングによる裕美さんのひとりコーラスの美しさに酔いしれてください。
8.ロンドン街便り(77年『こけてぃっしゅ』より)
 お次は軽くノベルティソングを。帰国子女が少女時代の思い出を語る歌。ラテンのリズムに乗せて「ケ・セラ・セラ 人生は一瞬の夢のようだわ」と。この軽さに救われる。
9.こ・こ・に・い・る・よ(83年『I Do,You Do』より)
 ラテンのあとは変拍子。傑作にして問題作『I Do,You Do』からの1曲。5拍子の繰り返しに乗せて大陸的で大らかなメロディーを歌う裕美さんの歌声。その慈母のような優しさに身を委ねましょうか。
10.とにかく淋しいのです(79年シングル「青空の翳り」B面)
 ピアノバラードの名曲でアルバム前半を締めます。メロディーが美しいぶん、青空のように澄み切った哀しみが胸に迫ってくるような曲。たぶん「青空の翳り」というタイトルはこの歌にこそ相応しかったのでしょう。コンペに負けてB面になったのかな?名曲なわりに安直なタイトルがそれを物語っているような気がする・・・。
11.ピアニシモ・フォルテ(75年『短編集』より)
 初期の裕美さんを代表する名曲。アレンジャー萩田光雄さんが作曲。いかにもアレンジャーらしい、構成のしっかりした上品な曲で、メジャーのゆったりとスイングするメロディーとデビュー間もない可愛らしい裕美さんの声がマッチした絶品。
12.風たち(81年『ごきげんいかが』より)
 ガットギターのカッティングから始まる骨太なフォーク・ソング。フォークと歌謡曲のクロスオーバーを体現してきたシンガー太田裕美が、フォークの神様ディランに捧げたオマージュ(と言ったら大げさだけど)。
13.恋人たちの100の偽り(別バージョン、未発表曲)
 さて佳境に入って、ここでシングル曲を。というところだがこれはシングルバージョンとは同名異曲。メジャーとマイナーが絶妙にブレンドされた筒美メロディー炸裂の幻の名曲で、裕美さんが喉を壊していた時期に録音されたためオクラ入りになってしまったが、25周年BOX『First Quater』でやっと陽の目を見た作品。裏ベストには外せない1曲(笑)。
14.ピッツアハウス22時(78年『ELEGANCE』より)
 名曲にして裕美ソングの定番「男女会話ソング」の最高峰。詳しくはこちらで。実はマイベストソングはこれなのです。
15.青春のしおり(75年『心が風邪をひいた日』より)
 名曲たたみ掛け第2弾。処女作にはその作家の全てが込められているというけれど、松本隆氏の青春回顧ソングの全ての要素が、松本氏初期のこの作品に凝縮されているような気がする。
16.茶色の鞄(76年『手作りの画集』より)
 名曲たたみ掛け三連発でこの裏ベストを締めくくり。「裏ベスト」のエンディングはこの曲で、裕美さんのHA〜という美しいハミングとフルートのアドリブが絡みながら余韻を残して終わるのだ。
 さて、一応曲の流れなども考慮してプロデュースしたつもりなので、我ながらグッドなアルバムに仕上がったかも(笑)。でも裕美さんの曲は本当に名曲揃いなので、1枚物じゃどうしても無理があるわね。。。それより、『オール・ソングス・コレクション』で全曲楽しみましょ、っておまえはソニーミュージックの手先か、って。