セイコ・ソングス13〜「Sailing」

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 ちょっと先日のモモエさんの回で精魂尽きた状態の俺でして、今回は軽めに書きますね。
 今回のこの曲は、結構ファンの間では「人気曲」なのかもしれないね。1981年のサード・アルバム『Silhouette』よりピックアップしました。
 この曲、設定は「夏」なんだけど、俺には何だかとっても爽やかな「春」を感じさせてくれる曲、という印象があるのね。フェンダー・ピアノ(でいいのかな?)の音色が軽やかなイントロからして、もうブリブリのアイドル歌謡曲とは一線を画しているという感じなんだけど、同時期のシングル「夏の扉」を作曲した財津和夫氏が、この曲では作曲のみならず作詞も担当している。この財津さんの詞というのがミソで、職業作家の松本隆氏や三浦徳子氏にはない、クロートとシロートのこれまたビミョーなバランスの上に成り立った世界観が、初々しい聖子さんの歌声と相俟って、とてもキュートなのだ。つまり、財津さんの詞にどことなく漂う「稚拙さ」(失礼!)が、逆にこの時期の聖子さんにはとても似合っていて、それがこの曲に爽やかな春めいた印象をもたらしているのかもしれない。・・・なんて言ったらちょっと屁理屈っぽいけど。
 ちなみにこの「Sailing」、イントロのリズム・パターンや曲のテンポ、構成など、シングル「白いパラソル」のプロトタイプとも言えるほど似通っていて、姉妹曲として位置づけられると思う。どちらも曲としての出来はいいのだけどね。
 さて、この曲の魅力は何と言っても聖子さんの声!『Silhouette』の発売は81年の5月21日なんだけど、この頃から聖子さんは少し喉を痛めてハスキーになりかけている。7月のシングル「白いパラソル」あたりでそれははっきり出てくるのだけれど、「Sailing」の歌い出しも、既にかなりハスキー。出だしの「ヨットパーカー」は、ハスキーに「ヨ・オ・ト パーカー」と音節を切る独特の歌い方で、もう全盛期の聖子節が出来上がっている。それがサビで「もう何もいらない 私の過去もあなたの過去も」から次第に上昇旋律で盛り上がって「さよ〜なら〜私の悲しみ〜」でトップに上り詰めた時、この「〜私の悲しみ〜」の部分で聴かれる、ピーンと張った、しかしとても質感があり、独特の湿度(切なさ)を帯びた声、これこそが、当時我々の耳と心を鷲掴みにして離さなかった、80年代のスーパーアイドル・セイコだったのだよなあ、と今更ながら思うのだ。ホント、魅力的な声。
 さて、初々しいセイコさんが歌うこの曲は、こんな初々しい歌詞で、エンディングを迎えるのです。

 あなたは私をじっとみる 私はちょっとうつむくのよ
 まるでそこからインヴィテイション
 あなたのやさしい心のなかへ
 私を御招待  (詞:財津和夫

 ぐふ、ザイツたん、たら。「私を御招待」なんて、おちゃめ。
 そういえば、昨年末のカウントダウンライブでセイコさん、この曲、歌ったみたいね。何だか最近のカウントダウンライブは往年のファンには嬉しい選曲が多くて、その意味では「セイコさん、わかってんじゃん!」て感じよね。それだけ選ぶべき曲が多いってのもスゴイことだしね。「内輪ウケ」っていう悪口もあるみたいだけど、ライブなんて多かれ少なかれ内輪ウケなわけだから、ちっとも間違ってないと思う。どんどんマニアックに進んでほしいな(笑)