セイコ・アルバム探訪1〜『Pineapple』

Pineapple(DVD付) 30万ビュー、ありがとうございました。20万ビューまで5年半かかったのに、30万ビューまでの10万件は1年で達成しました。何がきっかけかわかりませんが、とりあえず読んでくださる方が増えている手応えを感る一方、多少のプレッシャーも感じ始めているこのごろ・・・。
 さて、30万ページビューを記念して、聖子さんの過去のアルバムレビューを不定期で始めようと思い立ちました。もうひとりのマイフェイバリットアーティストである太田裕美さんはず〜っと前に「太田裕美アルバム探訪」というシリーズをエントリーしてまして、聖子さんもいつかは…なんて思っていたんですが、何せアルバム数が膨大ですし、ちょっと荷が重いかな〜と敬遠しておりました。ですけども30万ビューのおそらく3割くらいは聖子ファンの方と思われますし、私も継続的に書くネタがそろそろ必要かな〜ということもあって、今回いよいよ取り掛かることに致します。なんて、大袈裟ですねちょっと(苦笑)。断っときますけど私、以前人気を博した聖子関連サイト「MR&O」さん(でしたっけ?)のように詳細なレコーディングデータやマニアックなエピソードは持ち合わせてませんので、シロートの個人的感想だけで書きます。あしからずご承知おきくださいね。
************************
 ということで、最初に取り上げるのは夏の名盤『Pineapple』(1982年5月21日発売)。もう説明の必要はないかもね。ユーミン作品で聖子さんが一気に女性ファンにまで人気を拡大するきっかけにもなった代表作「赤いスイートピー」「渚のバルコニー」収録ということもあって、LPで35万枚・カセットで24万本を売上げ、当時、セイコのアルバムとしてはデビュー以来最高の売上げを記録。数あるセイコの名作の中でもいまだにファンの中で1、2を争う人気を誇る作品ね。hiroc-fontanaとしてはこの作品、当時のワイドショーか何かの街角アンケートで「ウォークマンでいま何を聴いてるの?」という質問の回答で、ユーミンオフコースのアルバムを押しのけて1位がこの『Pineapple』だったことがとても印象深く思い出されるのよね。
 つまり、アイドルのアルバムでありながら、マニア向けのキャラクター・グッズ的な扱い(今のAKBみたいにね!)ではなく、音にこだわるウォークマンのターゲット層から「ちゃんと聴かれている」作品なのだ、ということに新鮮な驚きを感じたのだ。
 ジャケットでわかる通り、このアルバムのイメージ・カラーは黄色。“pinapple side”と題されたA面には「パイナップル・アイランド」「ひまわりの丘」など、曲にも黄色をイメージした曲が多い。一方“orange side”と題されたB面にも「赤いスイートピー」「ピンクのスクーター」「水色の朝」「SUNSET BEACH」と、こちらも色彩感覚溢れるタイトルが並んでおり、はじける聖子さんの笑顔とともに、このアルバム全体が非常に明るく鮮やかな印象を醸し出している。
 聖子さんの歌声は前作『風立ちぬ』で身に付けた、ハスキーさを逆手にとったニュアンス唱法全開で、特にこのアルバムでは低音でウィスパー気味に歌う部分に歌の説得力がぐんと増しており、バラードの曲調に初挑戦した「赤いスイートピー」が大ヒットしたことによる自信が窺える。何より、まるでカルピスのような爽やかでコクのあるこの時期の聖子さんの歌声は、何万回のリピートにも耐えられるほどに魅力的だ。
 アルバム帯コピーは「シュロの香り、南風 いま、ココナツ色の気分・・・聖子」。夏っぽいね。では、収録曲の紹介です。もちろん作詞は全曲、松本隆

 チキチキチキと刻むハイハット。そこにエイトビートのベースが単音で加わる。更になめらかなキイボードの煌びやかなメロディー。イントロから期待感たっぷり。そしていよいよ聖子さんの声が。♪ 微熱があるよお〜に〜 の歌いだし。ファルセットと地声の中間の軽く抜いたその声の素晴らしさ。歌いだしのこのフレーズだけで、このアルバムのクオリティを決定していると言っても過言じゃないだろう。

  • パイナップル・アイランド(曲:原田真二、編:大村)

 アルバム『風立ちぬ』収録の「いちご畑でつかまえて」で展開したブリッコ・ソング、その完成形。最初のコーラス(「ねえシュロの葉陰で〜」)は一音一音区切って可愛らしく攻め、Bメロ(「揺〜れるふ〜ねでた〜だようの」)では切なく伸ばした声をしゃくりあげ、ウブなオトコごころを鷲掴みね、きっと。

 ちょっと北欧風の、79年に日本でもヒットしたアバ「チキチータ」を彷彿とさせるサウンド。ゆったりとしたテンポに乗って聖子さん、伸びやかに気持ち良さそうに歌ってます。2コーラス目で聴ける「♪ あなたの背中に抱きついては 困らせたわね」の部分、シャクリ&音節切り&割れ声、の合わせ技。そのテクの凄さに完敗です。

 本格バラード。ずっと愛してる〜忘れなさいと言われても、愛してる、この2回出てくる「愛してる」の歌い分けが聴きどころ。「♪ 他には何もいらないの〜」と切なく絶叫し(しゃくり上げ)最後の最高音「♪ My love〜」で美しいファルセットが飛び出す。ノックアウトです。

 本アルバムの1ヶ月前に発売された9thシングル。売上51万枚、1位1週、トップテン圏内に9週。レコードバージョンはキイが低くて歌いにくそう。テレビバージョンではキイを上げて歌っていた。

  • ピンクのスクーター(曲:原田、編:大村)

 キイボード担当の山田秀俊によるコーラス(hello goodday sunnshine〜)と電話の呼び出し音のSEが印象的な曲。聖子がファンであった原田真二は、それに応えるべくこの時期の聖子さんに合った可愛らしいメロディーを提供している。22年後、この名盤『Pineapple』をもう一度と鼻息荒くアルバム『Sunshine』で再びコンビを組むものの、時の流れは残酷・・・という結果になったのはご存知の通り(笑)。

 「渚のバルコニーカップリングの人気曲。私も大好きな、名曲です。過去ログご参照。

 8thシングル。売上げ50万枚、1位3週、トップテン圏内に10週。いわずと知れた聖子さんの代表曲。全体的に「淡い」イメージで体裁を整えながら、実は詞も曲も実によく練られ、研ぎ澄まされた「侘びサビの世界」が広がっている。幾度もの反芻に堪えうる、味わい深いエバーグリーン・ソング。(←過去ログからの転用文です。。。汗)

  • 水色の朝(曲:財津、編:大村)

 こちらもイントロは山田氏のコーラス。ホント、聖子さんには男性コーラスが合う。曲調はちょっとシックなボサノバ。間奏のアコギの音色がオシャレで、この辺りが只のアイドル・ソングとは確実に一線を画している。サビの「♪ Love for youe love」のメジャー・セブンスの響きも新鮮な印象。

  • SUNSET BEACH(曲:来生、編:大村)

 前半のバラードから一転、後半はテンポアップしてマイナー・キイのカンツォーネ風のメロディーに展開し、得意の哀愁声で切なく歌い上げるドラマチックな曲。聖子の歌唱力を堪能できる作品ながら、ちょっとこのアルバムには重たいかな。
 さて、この名盤は30周年のブルー・スペック盤で再発されて、シリーズ最高のオリコン49位を記録したのも記憶に新しいところ。
 今日も長文にお付き合いいただいてありがとうございました。