BOX企画の愉しみ

hiroc-fontana2008-06-07

 太田裕美さんの「オール・ソングス・コレクション」は4万円という大変高額な商品にもかかわらず、そこそこ売れたのに味を占めたのか、またまたソニーさんが仕掛けてきたのよね。キャンディーズの全アルバム、リマスター・紙ジャケ復刻、BOXセットで3万5千円也。未発表曲がナベプロの倉庫から出てきた、とかいう話題づくりも欠かせない商売上手さん。う〜、欲しい。オリジナル・カラオケも収録で、おまけにそのカラオケにはコーラス付きバージョンまで用意されるとなっては、まるでhiroc-fontanaが食いつくツボをお見通しみたいな感じです(笑)。でもこれじゃあ、お金が続かないわ、とてもじゃないけど!
 やっぱりBOX企画ってのは、どれだけマニアックに、レアなオプションをつけるか、にかかっているような気がするのね。その点、太田裕美さんの場合、25周年BOX「太田裕美の奇跡」は未発表曲や別バージョン、その他レアな掘り出し物のオンパレードで、それはそれは素晴らしい企画だった(おまけに11,000と価格もお手頃だった)し、このたびの「オール・ソングス〜」も未発表曲こそ少なかったけれど、貴重な写真やデータ満載のブックレットやCMソングを多数収録したボーナスCDやオリジナル・カラオケが付いたりして、紙ジャケの忠実な復刻以外の部分でも、大いに楽しませてくれた。
 さて、今回はおもいっきりマニアックに「オール・ソングス・コレクション」で見つけた、ひとつのトピックを書こうと思う。コアな太田裕美ファン向けです(笑)。こんなことができるのも、BOX購入者ならではの愉しみなのね。どうぞお付き合いください。

  • 「恋愛遊戯シングル・バージョン」のナゾ

 以前書いた「太田裕美アルバム探訪」の『こけてぃっしゅ』の回で、俺はこのアルバムに収められた「恋愛遊戯」は、シングルバージョンとボーカルが異なる音源である、と書いた。アルバム『こけてぃっしゅ』に収められた方のボーカルはファルセットが良く伸びて強い声なのが最大の特徴で、終わりの部分「たわむれながら過ぎる季節を/呼び止めて〜」の最高音でのファルセットを聞き比べるとわかりやすい。また、譜面に忠実に歌っているのも『こけてぃっしゅ』バージョンの特徴で、例えば2コーラス目「熱帯樹 揺れる白壁」の「ゆれる」の部分をシングル・バージョンでは「ゆ〜れ〜る」とスラーをかけて音符をつなげているが、アルバムバージョンでは「ゆ・れ・る」と切って歌っているので、ここを聴き比べると違いがよくわかる。
 ところで、この「シングル・バージョン」なるもの、一説によると本当はシングルバージョンでは無い、という話がある。俺は当時シングルを買っていないので今では確かめようがないのだが、たまたま持っていた1978年発売のベストアルバムを聴き直してみると、そこに収録されていた「恋愛遊戯」は紛れも無いアルバム『こけてぃっしゅ』バージョンだった。1986年発売のミュージックテープを引っ張り出して聴き直してみたら、やっぱりこっちもそう、『こけてぃっしゅ』バージョン。
 思い起こしてみれば、いっとき裕美さんの音楽から離れたあと、久々のリリースとなった96年発売の編集版CD『ゴールデン・Jポップ ザ・ベスト太田裕美』で久しぶりに「恋愛遊戯」を聞いたとき、俺はどこか「違和感」を感じたのだった。そう、確かに、そのとき聴いた「恋愛遊戯」は俺が一度も聞いたことのない「恋愛遊戯」のような気がしたのだ。その音源がのちに「シングル・バージョン」とされるものだったのである。
 その後、太田裕美さんがネットを通じて復活を果たし、オフィシャルサイトの掲示板でも「恋愛遊戯」にバージョン違いがある、というハナシが何度となく話題に上り、当の裕美さんは記憶にないというような結論だったのだが、結局は今回のBOX企画の中で晴れてアルバムバージョンとは違う「シングル・バージョン」として収録されることになったわけだ。しかしそれでもブックレットには詳細の記載はなく、真実は証明されておらず、どこか釈然としない。
 そこで俺としては、こう考える。アルバム『こけてぃっしゅ』発表後に裕美さんは喉をつぶしてしまうが、裕美さんの声の調子が明らかに『こけてぃっしゅ』バージョンの方が良いことから考えれば、いわゆる「シングル・バージョン」とされているものは先行発売(77.5.31発売)されたシングルの録音ではなく、後発のアルバム『こけてぃっしゅ』(77.7.1発売)用に再録されたものではないか?と推測するのだ。つまり本当はシングル・バージョンではなく、アルバム・バージョン。ただ、先にシングル用に録音したものの方がデキが良かったので、結局アルバムでもそれが使われ、再録されたアルバム・バージョンは最後まで使われることはなかったのではないか、と。だとするとその(アルバム用の)録音は長いことお蔵入りになっていたはずだが、長いブランクのあとにCDを編集する際の音源を探す中でたまたま見つかり、いつの間にか入れ違えてしまった、ということ。その可能性は大いにあるような気がするのだが。
 まあ、何やかや言って以上は全部hiroc-fontanaの想像に過ぎず、ドーナツ盤を持っている裕美ファンの方に聴き比べてもらって、どうか真実を教えてもらいたい、と思うのだ(笑)。