セイコ・ソングス19〜「all to you」

 2002年の全米リリース・アルバム『area62』より。area 62曲(words,music)のクレジットは、Seiko、J.Colin、R.Nevilとのこと。1996年の『Was It the Future』に引き続いてロビー・ネヴィルが加わっているけれど、彼が加わっているのはこの曲を含めてアルバムでは数曲に過ぎず、ネヴィル君のナスガママ状態だった前作と比べて『area62』では、英語の発音のイイカゲンさも含めて(笑)、「素のseiko」のまま、伸び伸びと自分の好きなことをやってる感じのセイコさんがイイ!その代表格がこのオープニング曲「all to you」。
 まず、イントロに被さる日本語のナレーションにビックリ。情事あとのベッドで囁くような、セイコさんの声の、なんとも色っぽいこと。加えて、とっても発音がきれい。かつてドラマで見せた「女優セイコ」の、学芸会のようなセリフ回しはここにはございません(笑)。このセイコさんのナレーションを聞いたら、異国の青い目の人々は必ずや日本語の響きの美しさにハッとするでしょう。そう、しょっぱなからグッジョブ・セイコたん!な感じのこの曲なのだ。
 そして曲は、どこか懐かしさ漂う打ち込み系の(80年代風)ダンス・サウンドを展開。テイストとしては、初期のマドンナかしら。キャッチーなマイナー系のメロディーと覚え易いリフで勝負、みたいなね。ところどころで入る、琴や三味線風のオブリガートが「西洋人から見た、ちょっと誤解の入った東洋」的なチープさを醸し出していて、却ってそこがスパイスとなって、この曲そしてアルバム全体にまで独特の魅力を与えているような気がする。
 いろんな場所で「目指すはマドンナ」を公言していたセイコさん。1990年の全米デビュー・アルバム『Seiko』では本家ジェリービーンのペンによる「Who's that boy」(←いっときますけど佳曲よ!)なんて曲を歌っちゃってみたり、その後の国内での一連のセルフプロデュースのアルバムでもマドンナチックなダンス・チューンを必ずアルバムに収録したりと、ずっとマドンナの背中を追いかけながら歩んできたような感じかも。(もう、マドンナの背中は遥か遠くに、見えなくなっちゃったけどね。。。涙。)
 でもね、21世紀になって、全米発売盤で80年代のマドンナ風ダンス・ミュージック「all to you」を彼女「Seiko」がやった、というのはいろんな意味で成功だったと思うのね。噂によると「all to you」はゲイ・クラブで結構流れたとか。「Seiko」なんていう腕時計みたいな名前のヘンなオリエンタル・ガール・シンガーが歌う、ちょっとレトロでエキゾチックでナイスなダンス・ミュージック(笑)、みたいなね。ゲイ・クラブで受けたのだとしたら、その辺りを考えると頷けなくもないように思う。
 逆に言うとそれだけこの曲には、オリジナリティがあるってこと。
 でもね、コレをもし日本でシングルカットしていたとしても、まず売れなかったでしょう。。。だって、今更、聖子がマドンナ?て感じだものね、日本では。この「all to you」は、あの時のセイコさんが、全米向けに作ったからこそ出来た、仇花的・キセキ的名作、と言えるのかも。そう、ちょっと前の日記にも書いたけれど、これは全米リリース三度目の正直で「やりたいことやっちゃおう」と開き直ったからこその奇跡的逆転でもあるわけで、これに手応えを得た結果、セイコたん全米進出作戦はとりあえず一段落となったわけで。
 さて、アルバム『area62』は今ではちょっと入手困難みたいだけど、動画があったので貼っておきます(つくづく、便利な時代ね)。着物はだけちゃったり、ジャケットだけのセミヌードだったり、こちらも何だか気合が入ってるみたいなセイコさんで。。。