セイコ・アルバム探訪2018〜『Merry-go-round』

goo辞書によると、merry-go-roundとはこんな意味。

1 回転木馬,メリーゴーランド(carousel,carrousel)
2 (社会生活・事業・出来事などの)急旋回,急転回
3 転車台(turntable) (米鉄道俗)
4 目が回るほど忙しい仕事[場所など](米俗)

 今回のCD付属のDVDで聖子たんのお言葉によると、merry-go-roundとは、こんな感じ。
“Merry”は〜、しあわせだとかぁ、楽しいだとかぁ、そういう意味。“Go”は〜、前にぃ、進んでいくぅ〜?という意味で。“Round”ていうのは〜、回りを見ながらぁ〜、楽しみながら進んで行く、とゆうような。そういう意味を込めて〜、このアルバムを〜、つくりました・・。
 おいおい聖子たん、本来の意味の2番目(急転回)とか4番目(目が回る忙しい仕事)の方が、あなたらしくて面白いでしょうよ!(ググったばかりの付け焼刃の知識で「実は“急旋回”という意味も込めたタイトルなんです」なんてドヤ顔で宣言しても良かったはずなのに!)なんてツッコミたくなるのだけど、裸の女王様・聖子たんはそんな風に、ガラにもなくトンガッたアーティストスタイルを装うことなど端から眼中になく、今回も、メルヘンチックで夢に溢れ、お花が咲き乱れている、いつもの“聖子ワールド”を頑なに貫かれております。やれやれ。
 とはいえ、今回のアルバム、キャッチコピーにある「独創的なサウンドアレンジでSEIKOワールド全開のオリジナルアルバム!」とある通り、サウンド的にはかなり力を入れて作られた印象で、悪くないです。アレンジャーの二人(野崎洋一氏・松本良喜氏)はここ数年のレギュラーながら、今回は確かにアレンジで各曲、様々なチャレンジを見せてくれていて、アルバム全体が変化に富んでいて良い流れが出来ている感じ。
 いわゆる「キャリア●十年の大御所」の新作アルバムと言えば、みゆきさんにしても、ユーミンさんにしても、聴いた当初は「ああ、やっぱりこの世界よね・・・」という、変化のない“いつものサウンド”であることへの多少のガッカリ感と、一方では圧倒的な安心感で、何となく聞き流してしまったりすることが多くなっているワタシ。でも同じように聞き流していているうちに、突然ある一曲だけが、ガーンと胸に響いてくる瞬間があったりして、そこが大御所ならではの楽しみだったりする。
 同じ大御所でも、セイコさんの場合は最初から「ガッカリ」が前提であって、“果たして今回は10曲中何曲、あるいは何分(笑)、新しい聖子(またはかつての輝く聖子)が登場するのか?”という聴き方になってしまったりするわけで。だから実は、同じガッカリではあっても毎回、最初の1回目の試聴ではワクワクさせられてしまうのが聖子さんなのだよな〜、なんて。今回の『Merry-go-round』は、そんな意味では、オープニング曲のイントロから少し毛色が変わっていたこともあって、聴きながら本当に久々の“ワクワク”が蘇って嬉しかったのは確かで。
 まあ聖子たん本人はと言えば、頑張ってはいるものの、詞とメロディーのマンネリ感はどうしようもなくて、つくづく「音楽の決め手って、アレンジだよな〜」と思わされた作品だったりもする。
 久々にアマ●ンの評価も上々、オリコンデイリーチャートも好調な推移で、聖子たん、ますますセルフに自信つけちゃいそうですわ。

Merry-go-round(初回限定盤A)(DVD付)

Merry-go-round(初回限定盤A)(DVD付)

(※以下、カッコ内クレジットの作詞・作曲は全曲:松田聖子

  • I am dreaming,dreaming of you(編曲:野崎洋一)

 まずは突然の聖子たんの多重コーラスでスタート。やるわね、野崎くん。ノックアウトだわ。おまけにエイトビートを細かく刻むベースがカッコいいじゃない!セイコさんもウィスパー気味のボーカルからサビは得意のイングリッシュ畳みかけで、いつになくノッてる感じ。間奏のスキャット・コーラスもなかなか。このアルバムはこの1曲目の成功がすべてかも。

  • Merry-go-round(編曲:野崎)

 続いてもアップテンポの、タイトル曲。あら、またイントロで聖子たんの多重コーラス・・・。でもこちらはブラス入りの煌びやかなサウンドで、まさにメリーゴーランドの世界。歌詞は意味不明な(笑)英語の中に所々、日本語が入る構成で、今の聖子さんにはこんな構成の曲の方が合うみたい(日本語の語彙の貧困さからしてもね・・苦笑)。「♪まるでMerry、そうよgo-round、心 Up Down 揺れているのよ」。そうよ、セイコさん。本当はこのアルバム、Up Downの人生に例えたかったのよね、きっと・・・。(と、ファンならではの温かい解釈。)

  • 両手広げ空を仰ぎ(編:野崎)

 なんだかマイラバみたいなアレンジ。この3曲目まで、アップテンポのポップスが続くのだけど、アレンジの変化で聴いてしまう。ほとんど8分音符で構成されたメロディとタイトルまんまの詞世界は陳腐で既視感たっぷりだけどね。

 こちらはどこを切ってもいつもの聖子バラード。詞もアレンジも全体のコード進行まですべてが、いつもの聖子バラード。嗚呼、いつもの聖子バラード。えい!スキップ!と言いたいところ、冒頭で「♪そんな優しい瞳で見ないで」「♪あなたを愛しているわ」と声を掛けたりでアツアツな「あなた」に、2コーラス目では唐突に「♪きっともう一度逢える」と言ってのける主人公の“急転回(Merry-go-round)”っぷりに、ついつい謎解き気分で最後まで聴かされてしまうワタシ。とほほです(笑)。

  • 永遠の愛で 変わらない愛で(編:松本)

 PVでは風に吹かれながら公園サイクリングの聖子たん。まさにそんな印象のカントリー・テイストのフォークソング。聖子たんには珍しいタイプの曲で、なかなかの出来。サビのキメフレーズが「♪あなたは 空」から「あなたは風」→「〜夢」→「〜希望」とコーラスごとに変わっていく構成も、聖子たんにしてはよく考えたな〜、と(ホントはこうした詞の作り方が、フツーなんだけどね。苦笑)。不要に長いタイトル以外は(苦笑)良質のポップスに仕上がってます。

 聖子たん、アルバムを作りながら夏コンのステージ構成も考えているそうで。このワルツ曲はずばり、お城のセットでイケメンダンサーとバレエダンス、で決まりよね。ここ最近の聖子たん(&野崎くん)お得意の、ディズニー風メルヘン・ソング。「♪ルルル・・・ディンドンドン・ドン」は、さすがに50超えたおっさんゲイが口ずさむには(いいえ、ヘッドホンで聴いているだけでも・・)恥ずかしいのです、セイコ女王さま。もう勘弁してくださいませ。

  • 新しい明日(編:野崎)

 ドラマ主題歌で、昨年の紅白でも歌われた曲。途中にさりげなく入るイングリッシュのフレーズが洒落ているのは確かだけど、アルバムのリード曲に仕立てるには、いかんせん地味すぎでしょう。決して悪くない曲なので、もしかするといつか聴いているうち、ガーン!と来たりして(汗)。

  • あの風の中で(編:松本)

 またまた、どこを切ってもいつもの聖子バラード。詞もアレンジも全体のコード進行まですべてが・・・。「♪風が運ぶ君のぬくもり/立ち止まって瞳をとじたなら/君を腕に抱いたそんな気がしたよ」。このモヤモヤ感が残る“時空を超えた世界観”もやっぱり、聖子バラード。

  • もう泣かない(編:野崎)

 ミディアムのポップス。ワタシこの曲、好き!フックの効いたメロディーラインもさわやかなアレンジも聖子さんの美声を良く生かしていてGOODです。ようやく聖子たん、フツーに聴けるポップスが書けるようになったのよね、万歳!

  • 風に吹かれてフワリ(編:野崎)

 エンディングは、タイトルの印象を裏切ってのマイナー・メロディー。近年のアキナ作品でも話題になった沖仁さんのフラメンコ・ギターをフィーチャーしたアレンジが印象的な、聖子版「薔薇のように咲いて〜」といった感じ。終始、丁寧な作りで、このアルバムの「一味違う感」をより一層印象付ける佳曲。
 
 というわけで、久々にリピートで聴けるアルバムでした。
 それにしてもね、シリーズ化(?まさかね。)の疑惑が出るくらい代わり映えのしないアルバムジャケット、何とかならなかったのかしらね〜。
Merry-go-round(初回限定盤A)(DVD付)Very VeryCherishDream & Fantasy (初回限定盤B)(DVD付)