キャンディーズ「夏が来た!」

 コアなファン以外で、この曲を覚えている人、ましてや名曲だ!なんて言う人がどれほどいるのかしら・・・なんて思いながら、hiroc-fontanaは今日のブログを書き始めています(笑)。キャンディーズはリアルタイムで良く聴いたよ!なんて言う同年代の友人からでさえ、「夏が来た!」の話をすると「なんだかシングルB面みたいな曲だったよね」なんて言われちゃう始末。
 この曲は1976年5月31日発売。大ヒットした「春一番」(最高位3位、売上げ36万枚)の後を受けてのリリース。前曲同様、作詞・作曲から編曲まで手がけたのは、キャンディーズの“生みの親”穂口雄右氏。ソリッドなスピード感がウリだった「春一番」から一転して、「夏が来た!」はメジャー調のフォーク・ロックで、牧歌的でほのぼのとした雰囲気に仕上がっている。パワーソングである「春一番」と比べてしまえば確かに地味な印象ではあるのだけど、季節としては真夏というより風の爽やかさと眩しい太陽とが共存した「新緑の季節」が相応しいような実に清々しい曲で、俺はこの曲、昔から大好きだったのよね。
 でも、あまりに芸の無い二番煎じタイトル(「春一番」の次が「夏が来た!」なんて、あったりまえ過ぎるわよね!!怒)が災いしてか、チャートでの成績は最高位5位まで上昇しながらもセールス的には17万枚と、「春一番」の半分に終わってしまう。穂口雄右さんって、アグネス(「ポケットいっぱいの秘密」)とかヒロミ・ゴー(「林檎殺人事件」)とか宏美さん(「二十才前」)とか、キャンディーズ以外でも華々しい実績があるにも関わらず、職業作家としてどこか評価の低い感じが否めないような気がするのよね。その理由を考えると、やっぱりキャンディーズにおける功罪、とくに「年下の男の子」以降彼女達の数多くの曲を手がけながら、結局「春一番」以上の曲を残せなかったという、そこに尽きる気がするのね(「わな」は名曲なんですけどね、ちょっと「微笑がえし」の影に隠れちゃった感じで残念・・・)。彼女達をスターにしたのはたしかに穂口氏だけれども、今となっては貴重な活動期間であった5年半の間、ホンネを言えばもっともっとキャンディーズは他流試合でクオリティの高い曲を残してもらいたかったというファンのわがまま・・・その反動として穂口氏のソングライティングにギモンが投げかけられちゃうと言う構図、たぶんそれはあるように思う。「春一番」→「夏が来た!」というあまりに安直なタイトルづけ、このあたりにも穂口氏の功罪の「罪」の部分が見え隠れしているような気がする。
 なんて、ハナシはちょっと脇道にそれちゃったけど、穂口氏の名誉のためにも(笑)この曲は本当にいまの季節にぴったりな(特に晴れている日はね)隠れた名曲だ、と断言します!サビの部分「♪砂の上に紙を広げて〜」のあたりの哀愁味のあるメロディー展開は、拓郎節を髣髴とさせて、この曲で見せたフォークソングとの相性の良さがキャンディーズの翌年の大ヒット「やさしい悪魔」(吉田拓郎作品)につながったのではないか、なんて思うのだ。
 それと、あるコラムで指摘されていた内容の紹介になるのだけど、この曲の詞は独特の構成になっていて、ワンコーラスの中のセンテンスがとても長いのよね。たとえば2コーラス目はこんな感じ。

 季節が僕の背中にやきついて 
 白いサンダルが似合うようになったら
 今日はそうだよ 少しだけ大人のふりしてみようなんて考えて
 君に電話かけるよ
 波の上にからだうかべて おもいきり背伸びして
 こんな不思議な出来事があっていいものかと思うくらい
 爽やかな雲が空におどるよ      (詞:穂口雄右)    

 ダーっと書いた日記みたいでしょ(笑)でもこれを読むと、穂口さんって、ロマンチックな少年よね。「こんな不思議な出来事があっていいものかと思うくらい」って言えちゃう感性が、素晴らしいと思う。
 さて、なんやかんや言ってhiroc-fontanaが中学生のころから大好きだったこの曲、動画もありましたので貼っておきます。キャンディーズの振り付けも、「ウ〜・ララ」コーラスもスッテキ!ぜひ聴いてみてね。