今更ながら・・・『bless you』

 カウントダウンライブの日記のページ閲覧がいまだに多くてびっくりしてます。そこで、というわけじゃないんだけど、今回もまた聖子さん関連エントリー
 実は2006年発売のこのアルバム、なぜか最近のお気に入りで、今頃になって愛聴してるんです。

bless you

bless you

 小倉良とのコラボ作品としては最後となったこのアルバム、発売当時、セイコファンからの評判は散々だったし、何を隠そう俺も1〜2回聴いたきりほったらかしにしていたのだけど、シングル「bless you」が急に聴きたくなってアルバムごと聴き直してみたら、結構イイのよね、これが。
 ジャケット写真のハデなコスチューム(“お下品”ギリギリね)に反して、音楽的にはどちらかというと大人しいアルバムなんだけど、特に後半以降の曲がシックでオシャレで、とても心地よいのです、このアルバム。多分、冒頭の3曲「Baby Love」「挑戦して行こう!」「神様からのプレゼント」があまりにもオーソドックスないつものセイコ・ポップスだったものだから、それだけで「またこの路線か。。。」とウンザリしてしまったファンは多かったのかもな、なんて思う。もちろん俺もその一人で・・・ごめんね聖子さん。
 でも4曲目からコロっと雰囲気が変わるの、これが。バロック調の美しいメロディーと聖子さんのダブルコーラスにゾクッとする「明日への祈り」。ロマンチックでシャレたメロディーラインが光るAOR風バラード「Dreaming of you」。続くアップテンポの「I'm gonna say good bye」は爽やかなウェスト・コースト・サウンドが心地いいポップスで、そのあとはこれまたシックな失恋バラード「悲しみのつばさ」へと続く。「Let it free」は大人しめのミディアム・ポップスながら、サビでの聖子さんのファルセットの美しさにウットリさせられ、そして極めつけという感じで傑作バラード「bless you」が9曲目にやっと登場、これがまたニクイ。静謐、という言葉がぴったりな、あのピアノのイントロに、思わず涙ウルウル。そしてラストの「Tears」。バラード畳みかけではあるけど、これもね、エンディングの「トゥルル・トゥルル・・・」のコーラスが俺的にはツボでね。いままで、小倉良の悪口ばかり言っていた俺だけど、このアルバム後半の曲たちのメロディーラインの品の良さ、そしてピアノのアコースティックな手触りを生かしたアレンジは、はっきり言って、彼の才能を見直すに十分な出来だと思うのだ・・・ごめんね小倉さん。(あ、そうそう、「bless you」だけ作詞・作曲が上原純というヒトなのね。このヒト、たしかサヤカの彼氏とかいう噂もあったかしら。)
 ちなみにこのアルバム終盤にはボーナス・トラックとして同時期のシングル「I'll fall in love」と「しあわせな気持ち」の2曲が収録されているのだけど、アルバムのトータルな仕上がりとしてはこの2曲の「とってつけた」感がかえって邪魔をしてるのかな〜なんて思う。むしろ、冒頭の3曲の代わりにボーナス・トラックの2曲をアルバムの中でうまい具合に配置すれば、全体的な作品としてのグレードは上がっていたかもしれない。そこが残念。
 この作品での聖子さんの声は歳相応に少し枯れていて、もちろん全盛期の輝きはないけれど、こういう大人し目のアルバムでは、文字通りオトナの落ち着きを感じさせてくれて、とっても合うのよね。それでいてファルセットはしっとりと美しくて、ほんのワンフレーズ出てくるだけでも「ハッ」と思わず息を呑む訴求力がある。
 年初のカウントダウンライブでは、恒例のリクエストコーナーで87年の『Strawberry Time』収録の「シェルブールは霧雨」がリクエストされて、歌詞を書いた横断幕まで用意されていたものだから、聖子さん、思わずそれを見ながら歌いだしたのは良かったのだけど、すぐにメロディーを思い出せずにやっとのことで歌い終えた挙句「そういえばこれ、私がメロディーを作ったのよね、たしか」なんて。。。
 前にも書いたのだけど、やっぱり聖子さん自身が、90年代以降に自分の生み出した作品をあまりにも粗末にし過ぎるのかな?と思う。昨年、ようやくセルフプロデュース時代の作品をピックアップした夏ライブを敢行して、それはそれでかなり好評だったようだし、いざ掘りおこせば『bless you』のような隠れた佳作もあるのだから(笑)、もう少し自分の積み重ねてきたキャリアをセイコさん自身、そろそろしっかり棚卸ししてみるべきかも・・・なんて余計なことを考えているこのごろ。