木之内みどり『横浜いれぶん』〜新旧アイドル論

 動画サイトをダラダラと眺めていたら、こんな動画を見つけて。うわーこの人、こんなに魅力的だったのね!と今更ながら感動したのね。
 木之内みどりさん。1974年にフォトジェニック系アイドル専門レーベル「NAV(Nippin Audio Video)」からデビュー。一般的には木之内さんと言えば「刑事犬カール」とか、後藤次利との逃避行事件や現・竹中直人夫人であることなど、歌手以外の部分での印象が強いと思うのだけど、デビュー以来歌手としてもコンスタントに活動していて、高田みづえのデビューヒット「硝子坂」が元はこの人の持ち歌だったことは多くの歌謡曲ファンに知られている話。「横浜いれぶん」(作詞:東海林良、作曲:大野克夫、編曲:船山基紀)はそんな彼女の唯一とも言える1978年のヒット曲で、トップテンにこそ届かないものの30位内に長く留まるロングヒットになった名曲。清純派だった木之内さんが「あんた」とかいう言葉使いで蓮っ葉に歌うところが子供ごころにちょっとドキドキしたのを覚えてる。ジュリーの数々の名曲を生んだ大野克夫さんの作曲というのも時代と言えば時代ね。
 こうして聴くと、彼女のボーカルは囁き系でありながら吐息だけでなくて、ニュアンスたっぷりの生身の声(肉声、とでも言えばいいのかしら)がしっかり歌として響いてくる感じがして、なかなかイイのよね。とてもなめらかな(なまめかしい)お声。それに、さすが「NAV」だけあってルックス的にも文句なし。ほんと、美形ね〜。
 思えば、こういった「美形」アイドルってのは今、いないよね。たまにいたと思ったら、韓流アイドルばかり。今の日本のアイドルはエーケービーに代表される、カワイイ系・アニメ系・シロート系が主流で、隣に住んでそうな(手の届きそうな)ちょっとカワイイ子か、一方では萌え系アニメに出てきそうなデフォルメされまくったキャラクター少女ばかり。総じて幼児体型のロリータっぽさが売り、という感じ。(だってエーケービーでモデル系はマリコさんと板野さんくらいでしょ? ←覚えたての知識です、これ。 笑)
 木之内さんのように、シロートっぽさはあるんだけどやっぱり手の届きそうにない、天性の美貌とその存在感だけで輝くようなタイプのアイドルって、もしかすると古き良き時代の遺物なのかもね。今のアイドルたちはとにかくマーケット戦略のためにプロダクションから与えられた無理やりなキャラクターづくりばかりが鼻について、その人間の内側から溢れ出す“輝き”みたいなものが感じられない。
 これって、単に俺が歳をとっただけのことなのかしら・・・まあそれはそれとして(苦笑)。木之内さんのこの魅力は、のちに逃避行で世間を騒がすほどの彼女の女性としての情念の強さの迸り(ほとばしり)かも知れないし、またもう一方ではアイドルを「お仕事」として割り切っていない生身の人間としての“儚さ”が醸し出す美しさなのかも知れないな〜なんて思ったのだ。そう、だから現代の“アイドル業”に就いていらっしゃる方々には決して出せない輝きなのよね、きっと。
 ちなみに私は木之内さんの動画ではこちらの方が好きだったりします。「無鉄砲」。