聖子のうた力(ぢから)

 「夢がさめて」。
 言葉の使い方は、時の流れの中でどんどん変化していく、うん、それはわかるけれども。。。 やっぱり50近い男(いちおうね)にはこのタイトル、どうしても違和感が残るのよね。「夢からさめて」が正しいんじゃない?とね。
 ま、いいか。「さめて」を「覚めて」と考えてしまうと“?”が消えないけれど、ここは「夢が冷めて(=温度が下がる)」あるいは「夢が褪めて(=色褪せる)」と考えれば、いいわけよね。でもね、サビの最後にはこんなフレーズもあったりして。
 ♪ あなたがいてくれたら 夢を見れる
 でた!「ら」抜き言葉!
 
 というわけで、最初はこのいかにもノーチェックな感じの詞は時代を代表するポエマー・Seiko Matsuda(皮肉よ!)に違いない!と憶測していた俺だったわけだけど、大ハズレでした。ごめんなさい。
 作詞:SHIROSE from WHITE JAM。ちなみに作曲はヒロイズム、SHIROSE from WHITE JAM、NIKKI from WHITE JAMの共作とのこと。
 こいつら、いったい誰よ?と叫ぶのはオールド・聖子ファン。WHITE JAMなる音楽チーム、ウィキによれば「東方○○」や「AAA」とかに曲提供しているクリエーターチームで、すでに20作品以上が国内チャートで1位を獲得しているとか、いないとか。メジャーデビューしたばかりらしいけど、所属はもちろん、ユニバーサル・シグマ。(そういうことね。)
 そしてヒロイズムという方はこんな感じ。こちらはかなりのキャリア。
 というわけで、いきなり貶(けな)して入ってしまった今回ですけど、この「夢がさめて」、かなりイイです。というか、私これ、好きですわ。聖子関連では久しぶりのヘビロテ。

夢がさめて

夢がさめて

 今回の作品はどちらかと言うと、聖子さんの曲というより「ユニバーサル・シグマ」の10周年記念(を宣伝する)CD、というのが正解かもね。で、それが結局は良い方に作用したのだと思う。聖子・オグラ臭が排除されたおかげでね(苦笑)。ユニバのイチオシボーカリスト、クリス君がとにかく主役で、聖子さんはあくまでも名脇役としてそれを支えている感じ。その聖子たんのさりげなくも力の抜けた余裕シャクシャクなボーカルが、たまらなく良いのよね、これが。良く出来た洋楽のデュエット&バラード、と言える完成度。
 そしてもうひとつの成功要因が、二人の声の相性のよさ。両者ともハスキーで声質が似ているうえ、キイもピッタリで、ハーモニーの溶け具合が絶妙なのだ。これはユニバ側としても予想だにしていなかったところかも。予想外と言えば、クリス君のちょっとイングリッシュ系イントネーションの混ざった日本語と、最近の聖子たんの“ネチネチジャパニーズ(例:「私が」→「うわぁたしぃ〜ぐぁ〜」)”が、妙にマッチしていたりもして(笑)。これは意外な発見。そうか、この道があったんだ、みたいなね。(洋楽曲を洋楽っぽく変な日本語で歌うのが、もしかすると残された道かもよ!(笑)。)
 また、カップリングの「もう一度抱きしめたい」、こちらもネットではメイン曲よりも評判が良いくらいで、こちらも聴きもの。作詞:Shihomi、作曲:Hong Jung Su、Han Ji Yeon。作曲はどうやら韓国の人のようね。作詞者も作曲者も詳細は不明。。。ながら、サビに向かって胸を締めつけられるような切ないメロディーが印象的で、聖子さんのソロ曲としてもクリス君のソロ曲としても、おそらく評判の曲になったであろう佳曲。
 
 それにしても聖子さん、「矢島美容室アイドルみたいに歌わせて(DVD付)にしてもボブ・ジェームスにゲストボーカルで呼ばれた「 Put Our Hearts Together」にしても、他人の懐に飛び込んで歌った作品ではボーカリストとしての輝きが違うような気がするのは何故なのでしょう(もちろん良い意味で)。今回も同様。(聖子サイドのディレクターとして小倉良の名前はあるけれども、多勢に無勢という感じ。(笑))
 そう言えば最新アルバム『A Girl In Wonder LandA Girl in the Wonder Landでも、Chara久保田利伸からの提供曲は自作曲とはボーカルの質そのものが違っているように聴こえたりもするわけで、やっぱり聖子さんは作詞・作曲やプロデュースよりも、ボーカリストに集中した方が結果として肩の力が抜けて、彼女本来の“うた力”が出せるのだろうな、なんて思うのだ。
 まあそれはそれとして、今年は久しぶりに沢山の外注作品で様々な顔を見せてくれた聖子たん。来年はさらに「うた力」で本領発揮してほしいわ。