ブルー・ブルー・マンデイ Sep.2016

 2016年の9月、ワタシの住むここ東京では台風の直撃こそなかったものの、天候不順が続き、澄み渡る秋空などにはほとんどお目にかかれないままに、一か月を終えようとしています。
 一時期は朝晩急に涼しくなって、ひと夏の疲れもあってか、いくら寝ても寝足りないというような気怠い毎日でしたが、ここに来て夏の残滓としか思えないような不快な蒸し暑さがまたぶり返して来たりで、私、実はここしばらく、体調的に「絶不調」でした。
 まあ、夏の疲れ、イコール、暴飲暴食、つまりは自業自得!ということでもあるんですけどね(苦笑)。
9月26日、月曜日。5:45。
 その熱帯夜の寝苦しい一夜が明けたとき、夜ごと繰り返し見させられた悪夢からようやく開放された安堵感とともに、心身にベットリまとわりつく厭らしいまでの疲労感で、月曜としてはこれ以上ない程の“バッド・コンディション”の中に目覚めた私がいました。
 とにかく新鮮な空気が吸いたくて、ベッドサイドのカーテンと窓を一気に開けたのです。
 眼前に広がったのは、どんよりと垂れ込めて隣の建物さえ霞むほどの、深く濃い、朝靄(もや)。グレー一色の景色はまるでその時の私の心持ち、そのものでした。そして開け放した窓からは、昨晩より少しだけ涼しくなった風と一緒に、起き抜けの身体にまとわりつくような湿気が一気に流れ込んできたのです。ジットリと。
( 掲載の写真は、あくまでもイメージです。)

 ぼんやりと眠気まなこで外を見ていた、そのとき。
 なんて綺麗な景色なのだろうか…。
 ふいに、そんなことを心の中で微かにつぶやいている私に気付きました。 えっ?
 暗い月曜の朝の、やる瀬無い感情の渦の中、一瞬だけ心を横切ったその純粋な気持ち。これをいま、絶対に逃してはいけない!私は本能的にそう感じて、その一瞬の気持ちを手繰り寄せながら、開け放した窓の前に立ち続けていたのです。でも結局、私はその朝、二度とその気持ちを自分のものとして再現することは出来ませんでした。
6:15。
 あとは、うんざりしながら顔を洗い、うんざりしながらヒゲを剃り、うんざりしながらあり合わせの食べ物を胃に押し込んで。窮屈な仕事着に着替えて。
7:00。いつものように仏頂面で満員電車に乗り込んだのです。ブルー・マンデイ、ブルー、ブルー・マンデイ。そう唱えながら。
7:30。
 満員電車の中、目の前に思いがけず空いた席に倒れ込むように座った私は、今朝の寝ざめの悪さから、いつの間にかまたうつらうつらとしていたようです。不意に正面の車窓から差し込む光の眩しさで目を覚ましました。遠いビル群に朝日がキラキラと反射していたのです。
 そう、寝起きに部屋から見た濃い朝靄は、やがて訪れるつかの間の好天の前触れだったのですね。
 それでもシートの狭間で固まった身体は、相変わらず気だるさを抱えたまま。コーヒーで無理やり流し込んだ食べ物のせいで、胃のもたれもピークに達していました。そのとき。
「これからもこうしてもやもやを抱えながら毎日を重ねていくしか
ないのだ。それが今、生きている自分そのもの、なのだ。」
なぜかそんな思いが強く胸に迫ってきたのです。唐突に、明快に。
7:45。
 やれやれ。。。ため息つきながら、よっこらしょと、条件反射のように腰を浮かせる、私がいました。
 もうすぐ最寄り駅に到着。これから25分歩いて、あの仕事場に向かうのです。