「さよなら」に向かう

 姉に、乳がんが見つかりました。今年の正月に久しぶりに会ったとき、本当にさりげなく、そのことを姉から告げられ、私もさりげなく、それを受け止めた風を装いました。。。
 ショックでした。
 幸いステージは低く、簡単な手術で済むだろう、という話ではありましたが、まだ精密な検査は終わっておらず、その結果を待っているところなのだ、と。

 お互いが歳を重ねながら、幾度となく会う中でいつしか、魂の交流も深くなって、ある人が自分にとってかけがえの無い存在になっている。
 当たり前のことでありながら、五十路を越えた私には、ふと見回せば、身内に限らずそんな人が周りに大勢いてくれて。でも、そのような大切な存在であっても、この関係は決して永遠には続かないのです。

 そう思うと、今、こうして、大切な人と会えるということが、どれだけ貴重なことなのか。
 姉の癌によって、初めてそのことが本当にリアルに、感じられた私です。

 幸い、姉の乳がんはごく初期で、手術も軽く、あっという間に元気に退院してきました。
 元気な姉の姿にホッとした反面、それ以来、姉に会うたびに、私たちはだれもが常に「別れ」に向かって進んでいる関係である、ということを思い知らされるのです。
 そしていま、私は、大切な人たちとかけがえの無い時を共有するということが、愛おしく、楽しく、そして切なくて仕方がないのです。

 震災から6年。
 明日も普通にその笑顔に会える、と思っていた大切な人を、突然に失ってしまった多くの遺族の方々の悲しみを想像するに、私のこんな思いなど、恐らくは取って足らぬことには違いないのでしょう・・・。
 
震災で亡くなられた方々のご冥福をお祈り申し上げます。