まさかの、セルフ期ベスト~『SEIKO STORY90's-00's HITS COLLECTION』

40周年で開き直ると、こういう企画もできるのね!まあ、Sony Music Directからのリリースなので、聖子たん本人はあまり関わっていないだろうから、ご本人の記憶からはとっくの昔に消し去られた「黒歴史」の中に埋もれた作品群も、Sonyサイドからすれば固定ファンが必ず動く"打ち出の小槌"に違いないだろうし、「エイ、出しちゃえ!」となったのかしらね。

そう、いよいよ出ました、という感じのセルフ期限定ベスト・アルバム。とはいえ、Sony在籍時代限定なので、90~95年(リョー・オグラとの蜜月期)と、03~08年(真二・ハラダ、ユージ・鳥山、そしてあの頃はまだステキな母娘関係にあった"上原純"ことSAYAKA嬢と、それなりに色々な作家とのコラボ時代)の、足掛け12年分。30年に亘るセルフ期(長い!)の半分にも満たないわけで(苦笑)。セルフ期としては充実していたマーキュリー時代の96~02年はごっそりと抜けているし(1996年の自身の最大ヒット作「Missing You~あなたに逢いたくて」でさえ、シングルバージョンは未収録)、ユニバーサルミュージック移籍後の、まりや、ユーミンYOSHIKIらとのコラボも対象外だったりする。

でもそれはそれなりに意味もあるようで、5年前にユニバーサルから出た35周年記念ベスト『We Love SEIKO』とはほとんど曲カブリがなくって、長年のファンとしてはやっぱりこれ、「買い」でした。ホント、Sonyの思うツボね(苦笑)。

このアルバムが「買い」なのは、ナニゲにアルバム未収録のシングルカップリング曲(「最後の"さよなら"」「二人ならば」)が入っていたりするのもあるけれど、何より「セイコ黒歴史」のアイコン的な作品、MATSUYAKKO名義「かこわれて、愛jing」がきちんと収録されていることね。

その問題の「かこわれて、愛jing」。発売は1993年。Sony第2期の代表的ヒットのひとつ「大切なあなた」をブリブリお花畑の衣装で歌っていた頃の作品で、ムード歌謡の曲調を扇情的なしゃくり上げ全開で歌う聖子たんの「歌謡曲歌手」としての資質を改めて感じさせてくれる作品。作詞は栗尾直樹・リョー小倉の共作、作編曲はオグラたん。まあ恐らく、まだセルフ黎明期で、内輪であれこれ好きなことをやっていた頃だったのかな、なんて思えるのだけど、もともとテレビ番組で「津軽海峡冬景色」なんかを得意げに披露していた聖子たんだけあって、ど真ん中の歌謡曲をノリノリで歌っている感じが痛快なのよね。これ、ヒットしなかったから聖子たんは"無かったコト"にしてしまったけれど、もしヒットしていたら、近年のJAZZみたいにMATSUYAKKOもシリーズ化されていたかも?なんて想像すると、ちょっと楽しかったりする。

そしてもう1曲、PawPaw名義の「WE ARE.」。CSアニメの主題歌だったので、ヒットチャートには登場しなかった作品ながら、これは隠れた傑作。作詞作曲は「上原純」。そう、SAYAKAドーターね。「bless you」も改めて素晴らしい作品だと思ったのだけど、沙也加本人の歌声と同様に、彼女が紡ぐ言葉もメロディーもとても瑞々しくて、透明感がある。この2曲だけでも、曲作りのセンスは明らかに母を凌駕しているような気が・・・(苦笑)。近年の沙也加ちゃんを見ていて思うのだけど、まだ若い今のうちにこの才能がもっともっと業界のオモテに出て来ないものかな~、とね。本人の意向もあるのだろうけど、メディアへの露出が少ないのがとても残念な気がするのは、ワタシだけ?

さて、そんなわけで、80年代のヒット曲を集めた第1弾「SEIKO STORY」

Seiko Story-80's Hits Collection- by Seiko Matsuda (2011-12-07)

から比較すれば1曲1曲の引きの強さでは明らかに負けるものの、通して聴くとどれも一定レベルの王道ポップスが並んでいるように思えるのは確かで、ようやく時代が聖子に追いついた?かのような、感慨に近い思いを抱くワタシがいます(苦笑)。


かこわれて、愛jing (ノーマルVer.歌詞入り)_Matsuyakko