キャンディーズ・タイムカプセル

hiroc-fontana2008-09-15

 迷っていたんですけど結局購入してしまいました。キャンディーズの紙ジャケ・アルバムBOX、35,000円也。俺の場合、完全にリアル・キャンディーズ世代だしシングル曲レベルでは大好きな曲が沢山あるのだけど、太田裕美さんほどには入れ込んで聴いていなかったこともあって、買うのは凄く迷った。(今年はすでに太田裕美さんのアルバムBOX(39,800円)というデカイ買い物をしちゃったことだし余計にね。。。)
 でも、届いたダンボール箱を開けて、意外にコンパクトな化粧箱に収められた精巧な仕上がりのミニサイズの紙ジャケットを見た途端、やっぱり買って良かったかも、と思った。今回のBOX、実はフォーマットが太田裕美さんの紙ジャケBOX「オール・ソングス・コレクション」と全く同じなのだ。BOXのサイズもCDの収納方法も解説書の大きさもね。その裕美さんのBOXがとても良い内容だったから、今回のキャンディーズBOXもきっと丁寧なつくりになっていることは間違いないな、と思ったのね。(ソニーさんとしては、フォーマットを同じにすることでコストダウンかしらね。どうでもいいことだけど。)
 さて、俺はキャンディーズのオリジナルアルバムはほとんど今回のBOXで初めて聴くことになったのだけれど、予想以上に楽しめました。それはやっぱりラン、スー、ミキ、3人の個性的なメンバーがそれぞれ、そこそこに歌唱力があって、かつハイレベルなハーモニーが組み立てられるという、そのボーカルのバリエーションの多様さに尽きるような気がするのね。ソロ曲ではそれぞれの個性的な声が楽しめるし、ピッタリ合ったユニゾンでは3人の声が溶け合うさまにゾクゾクするし、ハーモニーも2声があったり3声になったり主旋律を3人の誰が歌うかといったバリエーションで楽しませてくれる。
 もっとも、人気の割りに曲のクオリティがイマイチ、というのはキャンディーズ評論で少なからず見受けられる意見で、確かにアルバムを通して聴いても印象に残る曲は少ない気もするけれど、それを補って余りある「コーラス・グループとしての魅力」、それがキャンディーズだと思う。何の変哲もない歌謡曲も、彼女たちがコーラスを駆使して歌うと、立派なポピュラー・ソングになる、と言ったらオーバーかしらね・・。
 今回のCD・BOX、何年か前に出たBOXとほとんど曲がカブっていて、コアなファンには評判がよろしくないようだけど、俺としてはとても興味深い内容の素晴らしい企画だと思うのよね。ざっと挙げるだけでこんな感じ。

  • 未発表曲「霧のわかれ」・・・ これはね、ほとんど「哀愁のシンフォニー」なんだけど、別バージョンというやつで、メロディーや歌詞のところどころがツギハギのように違うものになっていて、なんだか聴いていてとても新鮮だった。曲って、こんな風に作られていくのね、みたいな感じ。
  • 4chステレオ用ベスト「ヒット全曲集」のハイブリッドCD復刻・・・ これは明らかに音が違う!3人の声がクリアに聞こえる感じ。ベスト盤なのに全部歌いなおしの再録音ってのがまたいいのね。そしてこれにボーナス・トラックとして収められた「危い土曜日」「年下の男の子」の新リミックスがとても新鮮でした。同じ曲なのに別な曲みたいに聴こえるのだ。
  • コーラス入りカラオケ・・・ 一部の曲では、リードボーカルの裏ハーモニーだけが収録されたカラオケが収録されている。「アン・ドゥ・トロワ」のサビなんて、ボーカル入りバージョンでは影に隠れていた、うっとりするくらいに美しいハーモニーが聴けるのだ。コーラス好きの俺としては大満足のカラオケ。
  • バージョン違い・・・ 太田裕美さんのBOXでも目玉の一つだったバージョン違い。今回の目玉は「やさしい悪魔」の木魚バージョン。これは知る人ぞ知るという感じのモノで、初期プレスのサビで聴こえる「ポク、ポク」というパーカッションの音が再プレス盤ではカットされてその後はどのアルバムでも聴けなくなってしまい、その初期プレスのバージョンが初めて収録されたというもの。俺は木魚バージョンの方が好きだったので、感動でした。。。

 それにしてもキャンディーズ、こんなグループは二度と出てこないのだろうね。自作自演が主流になったいま、女の子3人が集まって、コーラス・グループとしてデビュー、なんてまず考えられないだろう。センターに誰が来るか、だけで話はまとまりそうにないもの(笑)。いまはパフュームなんてグループが人気だけど、彼女たちはどちらかというとキャラクター先行でコーラスを決めるなんて感じでもないし、モー娘に近い感じがするのね。素質ある女の子たちをプロダクションがじっくり育てて、プロモーションにも力を入れて、ライブを重ねる中で本人達は実力をつけて、それにつれて音楽性もどんどん高まっていく・・・。そんな、二度と帰ってこない夢の時代の夢の産物。だからこそ、いまだに憧れをもって受け入れられているのね、たぶん。
 もし彼女達が現役を続けていて、今もオトナのコーラスグループとしてさらにハイグレードな音楽を聴かせていてくれていたらどんなだろう、なんて想像をしてみるのも楽しいかもね。