中森明菜『ムード歌謡〜歌姫昭和名曲集』
- アーティスト: 中森明菜
- 出版社/メーカー: ユニバーサル・シグマ
- 発売日: 2009/06/24
- メディア: CD
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その意味では、hiroc-fontanaはこれまでずっとアキナさんを苦手にしてきて、ここ1年でようやく彼女の魅力に目覚めてきた程度の、いわば「アキナ初級者」だから、この新作『ムード歌謡〜歌姫昭和名曲集』を聴いてまず思ったのは、「これ、アキナの聴き方を知らないリスナーにとっては、キツイよな〜。」ということだったのね。
アキナがビッグバンドをバックに昭和のムード歌謡を歌う。このコンセプト自体は悪くないと思う。「TATOO」とか「TOKYO ROSE」といった退廃的なムードが漂うヒット曲の系譜に連なる路線として、「戦後のキャバレーの歌姫」をアルバムコンセプトにしたことは、ある意味自然なことと思う。いやいや、断っておきますけど俺自身はね、もともとビッグ・バンドジャズが大好きだし、アレンジの村田陽一さんに関しても、彼が率いるホーン・バンド“SOLID BRASS”のCDを持っているくらいだし、なによりこの1年でアキナの聴き方をマスターしたし(笑)で、個人的にはこのCD、楽しめたのだ。でも・・・。でも・・・なのだ。
今回のアキナさん、はっきり言ってこのCDのコンセプトを理解してたのかしら。そんな感じ。1曲目のスカパラばりのアレンジで始まる「経験」にはオオッとさせられるものの、その後はだんだんオケとボーカルのちぐはぐさが気になってきて「アキナがビッグバンドのオケに合わせて、いつものように歌っている、それだけ。」みたいな印象になってしまう。何だかもったいなくて仕方ないのだ。これだけ凝ったアレンジで、バラエティに富んだ曲が並んでいるのだから、アキナさん、もっとホンキになってキャバレー歌手してよ!あんたならできるでしょ、みたいなね(笑)
もともとhiroc-fontanaがアキナさんを苦手としていたのは、ボーカルの閉じ方が彼女の場合、乱暴な感じがするからなのだ。それは「セカンド・ラブ」を例に挙げれば、歌い出しの部分を当時、「♪恋も二度目ならっ! すこしは上手にっ! 甘いメーセージッ! 伝えたいいいいいい〜〜〜〜」みたいに歌っていたでしょ?ファンはそれが彼女なりの「感情移入」ということで評価していたのかもしれないけれど、俺の考え方としては、歌というのは、感情表現だけではなくて、リズム感や正確な音程はもちろん、伸ばした声そのものの美しさやその余韻(閉じ方)までをも聞かせなくちゃいけないものだ、と思っているのね。だから、それを大事にしない(ように思えた)、かつてのアキナさんは聴いていて辛かったの。そんな彼女も歳を重ねるごとに声にも歌い方にも幅が出てきて、どんどんよくなって来たのよね。
しかし!この新作でのアキナさん、高い音は喉を絞めちゃって声が辛そうだし、ここぞという所での必殺ビブラートこそ聴けるものの、それ以外はほとんど音の終わりを「セカンド・ラブ」ばりにブチブチ切っちゃってるしで、聴いてて欲求不満になっちゃいそう。とにかく、今回のアキナさんのボーカル、トルク重すぎ〜!低い声とファルセットはいいけれど、その間の声があまりに出てな〜い!これじゃ、たとえば場末のバーの有線で流れてきても、気持ちよく酔うどころか酔いが醒めちゃうぞ〜!なんてね。期待していただけに、今回はちょっと辛口です。
ただ1曲、ラストの「伊勢佐木町ブルース」は、妖艶な低音ボーカルが終始ハマった1曲で、キメの「シュドゥビドゥビドゥビドゥビドゥヴァ〜〜」で鳥肌が立つくらい素晴らし仕上がりで、これでやっと救われる感じ。
最初からこの路線で行けば良かったのにぃ〜!みたいな。よし、次はアキナさん「ブルース」に挑戦だ!(笑)