必殺歌謡ロック〜  Char「闘牛士」

hiroc-fontana2010-01-23

 1978年3月25日発売。作詞:阿久悠、作曲:Char、編曲:佐藤準
 俺が中学生の頃、修学旅行でバスガイドさんが僕らのために、当時のいろんなヒット曲を自分でカセットテープに録音して、バスの中で流してくれたのね。当時の中学生といえば、今と違って自分でレコードを買うなんてほとんど無かった(出来なかった)し、「学校」という空間の中でヒット曲を聴ける機会もほとんど無かったから、何だかとっても嬉しかったのを覚えている。そしてそのテープの中にこの「闘牛士」が入っていたのね。
 クラスメートたちはこの曲が始まったとたんにザワザワしだして、そしてすぐに静かになった。そう、みんなが曲に引き込まれたのだ。そして、曲が終わると“もう1回かけて〜!”とアンコール。終わるとまたアンコール・・・。
 この曲の魅力は、何といってもイントロのギター・カッティングのかっこよさだと思う。アンコールでイントロのカッティングが始まるたび、カッコイイ〜、とバスの中にどよめきが起こる、そんな感じだった。
 同じ流行歌を聴いて育ち、「闘牛士」のカッコよさを分かち合った当時のクラスメートたちも今はみんな40代半ばの立派な中年。ほとんど会うこともないけれど、みんなどんな大人になっているんだろうか。

 1977年末にセカンドシングル「気絶するほど悩ましい」がヒット。長い手足、スリムなスタイル、長い髪、色白の甘いマスクで、ルックスの良さから当時、世良公則原田真二とともに「ロック御三家」とか呼ばれていたのよね。時代はニューミュージック隆盛期で、従来型のアイドルが冷遇されていた時代だ。新しいジャンルから輩出された美男・美女が結果として旧来のアイドル的枠組にはめられるのも、仕方がなかったのかもね。でもCharの場合、ブルースシンガーのようなウエットで生っぽい歌声は女の子向けには渋すぎたし、何といっても超絶テクニックのギターの方が次第に脚光を浴びるようになって、当初のアイドル的扱いはあまり長く続かなかった。
 そんなCharさんの僅かな“アイドル”時代の最後を飾ったのが、この4thシングル「闘牛士」だ。作詞・阿久悠!というのがそれを如実に物語っている。「♪薔薇を投げるなら 明日にしてくれ」という冒頭の歌詞からして劇画調なのね。そして佐藤準のアレンジも今聴くと、オケ・ブラス中心のまさしくギンギラな歌謡曲のそれであって、ギター中心のバンドサウンドからは程遠い印象なのだ。
 そう、つまりこの曲はギターの天才・Charが手がけた「歌謡ロック」として聴くのが正解。
 思えば、この系譜がその後、歌詞に井上陽水を迎えた安全地帯や、90年代以降のビジュアル系ロックバンドたち(見た目はトンガってても曲はあくまでも純正歌謡曲)につながっていくのかもしれない。そう思うとCharさんがJ-popに与えた影響は小さくないのかもね。そのあたりはじっくり検証が必要なのかもしれないけど。
 さて、デビュー当初は女性的な甘いマスク(ちょっと飯星景子さんに似てた・・・)で女性たちを魅了したCharさんももう壮年期に入って、最近はCMなどでも渋い大人の魅力を振りまいてますね(見た目ちょっと高田純次っぽくなってきたけど 笑)。幅広いジャンルで精力的に活動中のようです。
 こちら↓は再録版の「闘牛士」を収録。

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